職場や家庭で、どのように自分がやりたいことを伝え、自己実現していくべきなのか、迷ったことがある人は多いのではないだろうか。
2019年11月開催のビジネスカンファレンスMASHING UP Vo.3では、ニューズピックス コミュニティマネージャーの佐藤裕美氏をモデレーターに、圓窓 代表取締役の澤円氏、LINE 執行役員 / ゲーム事業本部事業本部長の奥井麻矢氏を招いてトークセッションを開催。
日中仕事などをしている方でも参加しやすいNIGHT SESSIONの1本目「自分のトリセツ – キャリア編 自己を必要以上に過小評価していませんか?」に続き、「自分のトリセツ – パートナーシップ編 働き方や生き方をどのように伝えるか?」と題して、ライフラインチャートに沿って職場やパートナーとのコミュニケーションを振り返って分析した。
パワハラにめげず、仕事で評価されたことで幸福度が上昇
圓窓 代表取締役の澤円氏。
ライフラインチャートとは、年齢軸に沿って、その年齢での幸福度を、人生のターニングポイントとなったイベントとともに書き記してチャートにしたもの。圓窓代表で、日本マイクロソフトの業務執行役員でもある澤氏のチャートは、自己肯定感の低い幼少期から始まっている。
「とにかく運動ができなくて、できないことばかりが気になってしまって自信が持てず、さらに同質性というのがすごく苦手な子どもでした。最近、ADHD(注意欠如・多動症)だと診断を受けて分かったのですが、我が家ではそれで祝杯をあげました。その称号を得て、今までのあらゆる失敗をネタにできるようになり、ようやく自己肯定感につながりつつあります」(澤氏)
会社員になってからは、パワハラにあって落ち込んだこともある。しかし、「幸運にもお客様に恵まれ、次第に会社でも評価されるようになりました」と澤氏。次に、マネージャーになったことでマインドが変わり、さらに充実感が得られるようになったという。
絶対に競争しない、フラットなコミュニケーション
マネージャーになってから現在に至るまで、澤氏が部下とのコミュニケーションで心がけているのは「絶対に競争しないことと、常に教わる姿勢でいること」だ。
「僕はお互いを上司、部下ではなく、チームメンバーと呼んでいます。立場上の認識としては、学級委員長。たまたま役割として与えられているけれど、所詮は同じ生徒で、いつでも普通のクラスメートに戻れるという感覚でいます」(澤氏)
澤氏の場合、マインドはプレーヤーに近いが、人をエンパワーするというマネジメントに興味があるという。
「『合唱コンクールで1位を取るぞ』といった感覚で、チームの相互作用によって成果を最大化することができるので、マネージャーというのは非常に好きな役職ですね」(澤氏)
転職や立場の変化がターニングポイントに
LINEの奥井氏のライフチャートは波乱万丈だ。得意なスポーツによって幸福を得た学生時代から、社会人になって急激に落ち込んでいる。
「社会人になって、広告代理店の営業をするのですが、割と成績もポンポンと出て調子に乗る中、態度が悪いために上司からいろいろと叱られて落ち込みました。ただ、その頃からマネジメントに興味があり、その会社はあまりマネジメントに力を入れていなかったので、価値観が合わないと思い、転職したのが今のLINEです」(奥井氏)
LINE 執行役員 / ゲーム事業本部事業本部長の奥井麻矢氏。
転職を機に、奥井氏のライフチャートは一気にピークポイントまで駆け上がる。
「これは本当に運なのですが、たまたまLINEでゲーム事業に携わることになり、大ヒット作に関わることができました。それが楽しくて、敵知らずのような感覚になっていた時期ですね」(奥井氏)
奥井氏の場合、立場や役割が変わるタイミングが、毎回人生のターニングポイントとなっている。
「立場が変わることで、自分の中ではなにも変わっていないと思っても、社内の360度評価で急にマイナス評価ばかりになったこともあります。そのときにわかったのが、立場や役割によってなにを求められているかに気づき、自分を省みて変えていくタイミングに視座が上がるんだな、ということでした」(奥井氏)
成功の解像度を高めて積み重ね、複数の物差しを持つ
澤氏の場合、大きなターニングポイントがあったというより、「一個一個の積み重ねのほうが大きい」という。
「いろいろなものが複雑に絡まり合って今があるのですが、それを解析する作業を僕は『言語化』あるいは、『解像度を高める作業』といっています。いろんなものがクリアになっていくと言語化されて、説明可能な状態になり、再現性が生まれるんです。なんで失敗したのか、なんでうまくいったのかが自分でわかって、同じようにすることで成功できるようになります」(澤氏)
ニューズピックス コミュニティマネージャーの佐藤裕美氏。
解像度を高めるときに、澤氏がよく取り入れるのが時間というパラメーターだ。たとえば、ゲームに関してなにか説明するとなったら「このゲームおもしろいですよ」ではなくて、「このゲームはどの時間帯にやるといい」や「何分くらいプレイする」など、時間のパラメーターを明確にするだけで、解像度が高くなる。仕事でも人とコミュニケーションをするときには、時間をかなり意識していると澤氏はいう。
もうひとつ大事なのが、外の物差しをもっていること。たとえばこの日のセッションのように、同質の人が集まりやすい社内だけでなく、外の人と語り合うことが、視野を広げることにつながっている。
一緒にいて自分がいい状態になれるパートナーを選ぶ
それでも落ち込んだときに澤氏を救ってくれるのが、パートナーの存在だ。
「妻とはあまりにもいろいろずれているので、これは絶対に退屈しないな、と思って結婚しました。結婚生活では、すごくほめてくれるんですよ。そんなことまでほめるんだ、っていうくらいほめてくれて、だんだんいい気になってきてね。あとで聞いたら、徹底的に人をほめたらどうなるのかという彼女の実験だったらしいですが、実際にいろいろと上り調子になっていきました」(澤氏)
自分たちが快適なことを徹底して、お互いができない部分はフォーカスしない。たとえば、パートナーは料理が苦手だから、家で食べるときは澤氏が料理を担い、ほかは外食を楽しむ。苦手なことにはアウトソーシングを徹底して、嫌な時間や無駄な時間をなるべく作らないのが秘訣だ。
奥井氏は、仕事が順調に進む中で結婚。「パートナーには、自分が相手に対してやさしくなれるとか、一緒にいて自分がいい状態になれる人であることが重要だと思っています」という。
家事はリーダー制で、奥井氏が料理と洗面所洗い、パートナーが食器洗いとトイレ掃除など、それぞれにリーダーを決め、洗う周期などもリーダーに任せる。「お互いを批判しないような関係で、家事も楽しくやっていこうという感覚です」と話す。
「自分の当たり前や、相手の当たり前に合わせようとすると、そこで自分ではなくなってしまうから、自分のことが好きではなくなってしまいます。それなら、自分のことを素直に表現できる相手に会うまで、頑張って出会いを探し続けることをおすすめします」(奥井氏)
上司に意見を通すために必要なのは「愛嬌」
参加者からの「上司に意見を通すにはどうしたらいいか?」という質問には、「グレることです」と澤氏。
「まずなにかをやらなくなるんです。たとえば自分が発言しない会議には出ない。そして、その時間を使って逆になにか提案書を作ってプレゼンする。さらに、上司には『あんな会議、出たくないでしょ? 一緒にサボりませんか?』と誘うのです。松下幸之助さんも言っていたそうですが、リーダーにとって最も大事なものは『愛嬌』です。愛嬌があれば上からも下からも『しょうがねえなあ』と言ってもらいやすくなって、許容されやすくなります」(澤氏)
奥井氏は、「自分がいることでチームに価値が出るように頑張って、上司には『この人を大事にしなきゃ』と思ってもらえるように接することです。これも愛嬌のひとつですね」と回答した。
過去を振り返り、成功を再現できる人生に
ライフチャートを作成してみて、「自分の中で満足度の低い時期を、どうやって満足度の高い状態にもっていくか。これには経験値が重要で、経験するたびに回復のスピードも速くなるということを、改めて確認できました」と奥井氏。
過去の自分を振り返り、なぜ失敗したのか、周りの人とのどのような関わり合いによって巻き返したのかを知ることは、澤氏のいうようにその後の人生における成功の再現につながる。ふたりの事例を参考に、ぜひ自身のライフチャートを作成して、自分の人生の浮き沈みのパターンを探ってほしい。
MASHING UP vol.3
「人生右肩上がり」になるための、同僚やパートナーとのコミュニケーション
撮影/TAWARA(magNese)
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