MASHING UPが「世界の枠組み(フレームワーク)を再設計する」ことを目指すラディカル・デザイン・ラボ「Unchained」とのコラボレートによって今年から開催している個人向けラーニング&コミュニティ「Un-LEARN」。
3か月ごとの各シーズンに国内外を代表するオピニオン・リーダーやイノベーター6名を講師(リード)に迎え、オンラインによる講義をはじめ、参加者との対話や共同作業、ディスカッションを通して議論を進めていく学びの場だ。
社会を変えたい、行動を起こしたい、未来をかたる仲間が欲しいという人にとって魅力的なのは、リードだけでなく、大手メーカー勤務や女性起業家など、さまざまな背景を持つ参加者たちとディスカッションし、日常とは離れた刺激が受けられること。
実際にどのように進められているのか、2020年6月に始まった「Un-LEARN」シーズン1の様子を見てみよう。
ジェンダー平等は、サステナブルで賢い経済
シーズン1の第9・10回のテーマは、「SDGsとジェンダーから考える”ニューノーマル”」。MASHING UPのアドバイザリーボードの一人であり、国連勤務を経て、いまは国際協力・ジェンダー専門家として活動しているGender Action Platform 理事の大崎麻子氏が講師を担当した。
第9回では、「古くて新しいジェンダー平等というゴール」と題し、なぜ世界でジェンダー平等が求められるようになり、どのように変遷してきたのか、現在までの経緯を大崎氏がじっくりと講義。
世界でのジェンダー平等への取り組みは、1945年の国連憲章・世界人権宣言で普遍的な人権という枠組みからはじまったが、2000年代には女性の経済的エンパワメントへの投資は、家庭や地域、そして次世代への波及効果があるという認識が広まり、経済合理性の上で重要であると考えられるようになる。
そしてジェンダー平等の必要性が謳われた2015年のSDGs以降は、サステナビリティの観点からも不可欠であると指摘されるようになった。
日本のジェンダーギャップ指数は121位に転落
Gender Action Platform理事 大崎麻子氏
日本でもアベノミクスをはじめさまざまな取り組みが実施されてきたが、世界経済フォーラムが発表しているグローバルジェンダーギャップ指数ランキングでは、日本は2006年に80位だったのに対し、2019年には121位に転落している。
日本の政府や企業の意思決定ポジションに女性が増えない理由として、大崎氏は、男性と女性がフェアに働き、評価される土壌、つまり、ジェンダー平等な 職場環境が整備されていないことを挙げ、その背景には、家事・育児・介護な どの無償ケアワークの女性の過重負担や、職場でのアンコンシャスバイアスなど、強固な性別役割分業意識があると指摘した。
そこで、講義後には参加者とのディスカッションとともに、大崎氏から「家事や育児、介護のような無償ケアワークを、愛の奉仕ではなく価値のある労働として捉え、その責任を再分配するためにはどうしたらいいのか ?」といった、現在におけるジェンダーの課題に関して、各自アイデアをパワーポイント1枚で表現するという課題が提示された。
アイデアがつながり、広がっていくディスカッション
第10回では、前段で第9回のおさらいととともに「そもそもジェンダーとは何か?生物学性差との違い」ついての講義があり、その後、Zoom上でグループディスカッションを実施。ディスカッションの中で前週からの課題を各自が発表し、いくつかのアイデアが全体に共有された。
たとえば、ある参加者は「無償ケアワークの再分配」というテーマに対し、育休を取得すると新しい役職(CLO チーフ・ローカル・オフィサー)がつくというアイデアを発表した。
育休を取得すると、家事や育児を通して、地域とのつながりを持つようになることが多い。企業にとっても、地域の特性を把握することや地域と連携することは、唯一無二の価値となるはずだ。そこで、育休を取得したCLOが、その地域や土地の魅力をリサーチし、新しい価値を見出していく。育休を社会に還元する機会と価値については会社側が担保するというアイデアだ。
これには、リンクするアイデアがいくつも出された。その一つが、育休によって高まる能力をNPO法人が客観的に評価する。それによって、育休経験が”資格”になるという案だ。育休を取得しても家で寝ているだけでは意味がないため、パートナーからのスコアリングも評価につながるようにする。社内で有資格者のコミュニティを作れば、育児と仕事を両立するための情報共有もできるだろう。
育児を業務認定する
男性の育児休暇制度自体がナンセンスで、自治体が支援金を出し、企業が育児を業務認定すればいいのでは、という意見も。そもそも子育ては親や企業だけでなく、地域や国が一緒にするべきものだからだ。
これらの意見には、大崎氏も「ケアワークという、無償の愛による奉仕が当たり前とされてきたことを『評価する』という発想は大事ですね」と共感。大崎氏自身、育児をしながら仕事をしてきた経験から、育児によって危機管理能力やタスク管理能力が高まったことを振り返った。
このほか、育休取得率やバースレートなどを地方自治体と企業が連携してデータ化し、育休取得者の増加が起業の信頼度に貢献するような仕組みを作ってはどうか、というアイデアも出された。
リアルで濃厚な議論の場
エール取締役 篠田真貴子氏
ディスカッションには、モデレーターを務めるエール取締役の篠田真貴子氏や、プログラムリードでいきものCo.代表の菊池紳氏も参加。
「私も含め、ほとんどの人は、男女別の役割分担に関する無意識バイアスを持 っている。その前提から出発すべきと考えています。日本の大手企業はさまざまな社会的プレッシャーがあるためにジェンダー平等の意識が少しずつ浸透してきたものの、ベンチャーはプレッシャーが弱いので、ボーイズクラブ化が起きやすい。サウナで商談をすると関係構築が進んでいいよね! と男性同士が悪気なく話し合っていて、そこ に女性が入れないことに無頓着」(篠田氏)というビジネス界のリアルな意見には、大崎氏も「まだまだジェンダー平等の道のりは長いですね」と驚きを見せた。
しかし、少し前までは政策の世界でのみ議論されていたジェンダー平等が、Un-LEARNのような男女共同参画を仕事としていないコミュニティで、自由な発想で語られるようになったのは、紛れもなく前進であり、「今すぐ取り入れられるべきアイデアも多く、私にとっても非常に勉強になる時間でした」と大崎氏。
参加者からは、「刺激のあるテーマや議論で、コミュニティのメンバーも素晴らしい」「後からムービーを共有してもらえるのがとても助かる」、「メンバー同士で予習して学び合うなど、性別、年齢、バックボーンの違うメンバーとの議論が濃くて面白い」といった感想が寄せられた。
多彩なリード陣を揃えたシーズン2がスタート
9月から始まるシーズン2では、現在、参加者を募集中。シーズン1に引き続き、イノベーション論で知られる経営学者の入山章栄氏、多数のベンチャー企業の立ち上げに携わったリバネス代表の丸幸弘氏、バイオアーティストの福原志保氏ら、魅力的なリード陣が揃う。
ディープテックやレジリエンス、フェムテック、教育など、これからのビジネスに欠かせないさまざまなテーマについて語られる予定なので、自宅から参加できる有意義な学びの機会としてぜひ参加してほしい。
詳細とお申込みフォームはこちらから
※MASHING UP読者限定、メディア限定チケット(10% off)¥148,500 になる割引コード有り! お申し込み時に、チケットタイプ【メディア限定チケット】、割引コード【 unlearn-media-season2 】をご入力ください。
- 開始:2020年9月23日(水)
- 時間:各回19:00〜21:30
- 場所:原則オンライン開催
- 対象者:企業内イノベーター、新規事業担当者、社会課題解決に挑戦したい方
- 価格:16万5,000円(税抜)
- 申込締切:2020年9月20日
- 特別割引、リピート割引あり
- 詳細・お申し込みは、こちら!
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