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私にしか書けないことを「共感」につなげて/コラムニスト 伊是名夏子

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家族との写真

『ママは身長100cm(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』を著作に持つ、伊是名夏子さん。生まれつき骨形成不全症という骨の弱い障害を持ち、車いすで生活している 。

自宅にZoomをつないだ取材では、明るく快活に話す伊是名さんのサービス精神に、取材スタッフがたくさん笑わせてもらった。コラムニストとして活動をスタートさせてから今に至るまで、さまざまな経験と仕事に対する思いを聞いた。

伊是名 夏子(いぜな なつこ)
コラムニスト、1982年生。沖縄生まれ、沖縄育ち、神奈川県在住。東京新聞・中日新聞「障害者は四つ葉のクローバー」を連載中。 骨の弱い障害「骨形成不全症」で電動車いすを使用。身長100cm、体重20kgとコンパクト。右耳が聞こえない。5歳と7歳の子育てを、総勢15人のヘルパーやボランティアに支えられながらこなす。 早稲田大学卒業、香川大学大学院修了。アメリカ、デンマークに留学。那覇市小学校英語指導員を経て結婚。「助け合う」をテーマに16歳からの講演は100回以上。ファッションショーや舞台でも活躍中。 好きなことは、パンダ、体と環境にいいこと、性教育。著書に『ママは身長100cm(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』。

きっかけはブログ。「コラムニストを名乗りたい!」

デンマーク留学とのとき友人と。

デンマーク留学中。

媒体に記事を書くようになったのは、デンマークに留学していた2004年の頃です。デンマーク人は、自分の苦手なことを人に話し、できないことを恥じるのではなく、それを助けてもらうのが当たり前という文化。日本では自分でできないことも頑張るように教えられていたのに、国によってこうも違うものかと衝撃を受けたんです。そういったカルチャーショックを、ブログに書いていくことにしました。

ブログを書き始めたら読んでくださる方が増えて、沖縄の新聞社からお声がけいただき、月に2回くらいのペースで執筆することに。以前から、世界中で大ヒットした海外ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」が大好きで、主人公のキャリーが「コラムニスト」であることに憧れを抱いていました。だから、新聞社の方から「肩書をどうしますか?」と言われたときに「コラムニストにしたい」と言ったんです。でも、「だいたい3つくらいの媒体に書いていないと名乗れない。ライターやエッセイストはどうか……」と言われ、「どちらもなんか違う!」と、はじめは肩書なしでした。

数年経つと媒体が増えてきて、他の新聞社や雑誌にも寄稿するようになってきました。厳密には3つの連載を持っているわけでないけれど、ひっそりと「コラムニスト」という名刺を作り、ブログにも肩書を入れました。寄稿する際の肩書に「コラムニスト」と入れてもらえて、「よっしゃ!」という感じ(笑)肩書が大事というわけじゃないけれど、憧れに向かって地道に取り組んでいくのは、私にとって意味があったんです。

「自分しか書けないもの」と向き合う

沖縄での連載は、妊娠、出産のたびにお休みをいただきながら、とても長く続いていました。2016年にもう少し大きなところで書きたいと思い、関東に住んでいたのもあり、あらたに東京のいくつかの新聞社にアプローチをしたんですね。

その中で目を掛けてくれたのが東京新聞。ところが、担当してくださった方がかなり厳しかったんです。内容も事前に決める必要があったし、原稿を読んで、「こんな文章なら誰でも書ける」とはっきり言われました。

驚きではあったけれど、「自分しか書けないものって何だろう?」と、何度も原稿を書き直しながら考え続けました。答えを教えてくれるわけではないから、自分で考えるチャンスだと捉えていました。厳しくしてもらったおかげで、連載が好評をいただき、3回掲載された後にグループ内の他の新聞社に転載してもらえるように。本当にありがたいと思っています。

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コラムニスト 伊是名夏子氏。

「私にしか書けないもの」は、今でも考え続けていること。書くことは、いつまでたっても楽にはなりません。何かのテーマについて、私の経験や考えと、読者が共感できるような一般事象を組み合わせて考える。パズルをはめていくような感じなんです。私はマイノリティな経験が多いけど、そればかり出しても読む人は「別世界のこと」としか思いません。読む人に「自分と共通な部分もある」と感じてもらう必要がある。そのバランスが難しいと日々感じています。

パズルがピタッとハマるいいアイデアが浮かぶのは、寝る前とお風呂に入っているとき。そう、メモができないタイミングなんですよ! だから、忘れないようにと、お風呂から出て裸のままでスマホに打ち込んでいます(笑)。

若い人にも読んでほしい。Webでの連載もスタート

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家でのコラムを書いているときの様子。

新聞が読まれなくなってきて、若い人にも読んでほしいとWeb媒体にも書くようになりました。始めてみると、新聞連載とはずいぶん違う。新聞は1回限りで終わるように書きますが、Webはあとから前後を読むことができるので、つながったストーリーを持たせられる。読みやすさや反響など、新聞とは違うニーズを学ばせてもらいました。

小学校の教員時代。

小学校の教員時代。

それ以外でも、積極的に若い人とつながっていきたいと思っています。学生の頃から学校に行かない子どもたちのフリースクールでスタッフをしたり、2010年に小学校の教師をしていたこともあり、若い人との触れ合いは自分にとってとても大切なこと。講演会で学校に行くこともありますが、単発なので、もっと長期にわたって学びを深めていきたい。今は、講演会に来た大学生に、私の生活を動画で撮影してもらったり、「障害者の家に留学体験」と称して、自宅に遊びに来てもらったりしています。これからの可能性がたくさんある若い人と、もっと接点を増やしていきたいですね。

早稲田大学での講演会にて。

大学の講師に招いてもらい講演。

これからもいろいろな仕事に取り組みたいですが、現在、国の障害者福祉制度では、通学中や、就労中のヘルパー派遣が認められていません。

つまり、仕事中にヘルパーさんを頼みたければ、自費でなければならないんです。ヘルパーが生活に必要な人は、どんどん仕事ができなくなってしまいます。それなので、講演会などは先方に送り迎えなどを手配してもらうこともあります。障害のある人も、ヘルパーさんに支援してもらいながら仕事ができるように制度が変わり、もっといろんなことにチャレンジできるようになったらいいと思っています。

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栃尾江美
外資系IT企業にエンジニアとして勤めた後、ハワイへ短期留学し、その後ライターへ。雑誌や書籍、Webサイトを問わず、ビジネス、デジタル、子育て、コラムなどを執筆。現在は「女性と仕事」「働き方」などのジャンルに力を入れている。個人サイトはhttp://emitochio.net

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