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- 日本の海から魚がいなくなる?! 未来を変える「サステナブルシーフード」とは?
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魚資源が豊富な日本の海から魚がいなくなっている!?
海に囲まれた日本は4つの海流が流れ込み、世界でも稀に見る魚資源が豊かな国。国土面積は世界で61位なのに対し、排他的経済水域にあたる海の面積は世界6位。なんと、国土の10倍が日本の漁場で、約3700種の魚が生息している。これは世界でも断トツの豊かな海洋環境だ。
ところが、そんな豊かな海から急速に魚がいなくなっているのをご存知だろうか? 主要な原因は「過剰漁獲」。私たちが想像するよりもかなり危機的状況になっているという。
海で一体何が起きているのか、海の未来を考える団体「Chefs for the Blue(シェフス・フォー・ザ・ブルー)」代表理事の佐々木ひろこさんにお話を伺った。
佐々木ひろこさん
一般社団法人「Chefs for the Blue(シェフス・フォー・ザ・ブルー)」代表理事、フードライター。東京のトップシェフ約30人と共に「Chefs for the Blue」を立ち上げ、2017年から持続可能な海を目指してイベント開催や講演など、啓蒙活動に取り組む。「Chefs for the Blue」は、アメリカの海洋保全団体主催の国際プロジェクトコンペティションでは優勝経験も。
魚の数が危機的状況になっている
「魚は鉱物資源と異なり、自ら増えてくれる資源です。これまでは“魚が枯渇する”なんて誰も考えていませんでした。ところが実際は、急速に確実に日本の漁場の魚がいなくなっています。たとえば、クロマグロの例でいうと初期資源量(漁を行っていなかった頃)を100匹とすると、今は4匹。96匹は獲り尽してしまったのです」 (佐々木さん)
2013年、ニホンウナギが環境省から絶滅危惧種に指定されたとき、「もう鰻を食べられないの? 」と、ちょっとした騒ぎになった。レッドリストに入った理由は個体数が激減したからであり、その原因は環境の変化もあるが過剰漁獲があることは明らかなのである。
「ニホンウナギと同様のことが、日本の海で起きています。多くの魚が危機的状況なんです。
総漁獲高でピークを記録したのが1984年の1282万トン。2019年は416万トンですから、35年で3分の1以下に落ち込みました。 過去10年間でもサンマは4分の1に、ホッケは10分の1になっています。
これは何を意味するかというと、もし何も変わらなければ、私たちは近い将来、今のように魚を食べられなくなるということです」 (佐々木さん)
日本の魚種は世界でもトップクラス。しかし、減少数も世界一。豊かだったはずの海にそんなことが起きているとは、なんという皮肉であろうか。
水産庁が動いた今が最後のチャンスかもしれない
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2018年12月、70年ぶりに漁業法改正が行われ、「水産資源の持続的な利用を確保する」という一文が組み込まれた。
「これはとても大きなターニングポイントです。具体的な政策、施策はこれからロードマップが展開されることになりますが、まずは『魚資源は留意しなければ持続性が担保できない』ということが逆説的に認められたことになります。
生産者、流通業者、消費者が持続可能な消費を考え、実行していかなければならないタイミングがきました」 (佐々木さん)
水産資源を持続可能とするためには、各魚種の漁獲限界値を計算し、漁獲高を管理するなどのアクションが必要だ。アメリカではすでに500系群の魚について管理ができているという。
「しかし、日本はまだ8種類しかできていません(*TAC制度の対象魚種)。これは主に水産庁所管の国立研究開発法人、水産研究・教育機構が行っていくことになりますが、今後加速することを願うばかりです」 (佐々木さん)TAC制度:魚種ごとに年間の漁獲可能量を定め、水産資源の適切な保存・管理 を行うための制度
では、消費者にできることは何なのか?
「サステナブルシーフード」を知り、選ぶこと
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「MSC認証」をご存知だろうか?
MSCとは(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)の略で、本部はイギリスにある国際的な非営利団体。MSCは、水産資源と環境に配慮し、適切に管理された「持続的な漁業」で獲られた天然の水産物に対する認証制度であるMSC認証と、そうした水産物に付けることができるMSC「海のエコラベル」を管理・推進している。 漁業がMSC認証を取得するためには、以下の3つの原則を満たす必要がある。
- 過剰な漁獲を行わず、十分な資源が残されていること。
- 漁業が依存する生態系を維持できる形で漁業を行うこと。
- 地域や国際的なルールを尊重した管理システムを有すること。
日本の海から魚がいなくなる「負のシナリオ」を変えるのは消費者のアクションしかない
このように「持続可能である」とエコ認証を受けた水産物を「サステナブルシーフード」と呼び、私たちはそれを購入することができる。
日本では、イオンのTOPVALU製品や日本生活協同組合連合会のCOOP商品、セブン&アイ・ホールディングスのセブンプレミアム製品、西友、楽天等でも購入可能だ。また、マクドナルドで 販売されているフィレオフィッシュにもMSC「海のエコラベル」が付いている。
養殖魚にはASC認証(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)やBAP認証(Best Aquaculture Practice)があり、こちらも同様に認証されたものはサステナブルシーフードとして流通している。
「消費者にできることは、サステナブルシーフードについて知り、それを積極的に選ぶということです。MSC、ASC、BAP認証の商品はまだそんなに多くありませんが、私たちが行動をすれば、世界が動き、サステナブルシーフードを増やすことができます。持続可能な魚が多く流通するようになれば、海への負荷も下がっていくのです」 (佐々木さん)
もうひとつ、「幼魚を選ばない」という視点も大事だという。
「たとえば、のどぐろは雌40㎝にもなる魚ですが、最近の食卓に上るのどぐろは小さいですよね。幼魚を獲り、それが流通しているからです。海に幼魚がいなくなるということは、将来卵を産む魚がいなくなるということ。私たちは“幼魚を選ばない”という選択もできるのです」 (佐々木さん)
シェフたちも立ち上がり、この秋サステナブルシーフードレストランも!
「Chefs for the Blue」のメンバーのひとりである、ミシュラン一つ星のフレンチレストラン「Sincere シンシア」のオーナーシェフ、石井真介氏が、2020年9月、サステナブルシーフードを使った料理を中心としたビュッフェスタイルのレストラン「Sincere BLUE シンシアブルー」をオープンした。
「Sincere シンシア」と「Sincere BLUE シンシアブルー」のオーナーシェフ、石井真介氏
「シェフたちに声をかけ、“日本の海から魚がいなくなる”と深夜の勉強会を開いたのが2017年。その事実を知ったシェフたちの意識は大きく変わり、「Chefs for the Blue」の立ち上げにつながりました。
原宿にオープンしたシンシアブルーは、サステナブルシーフードを召し上がっていただけるレストランです。“料理を通して、お客さまにサステナブルな未来を考えていただくきっかけにしたい”という石井シェフの想いと、おいしく楽しく食べながら海の未来を考えていただきたいという私たちの想いが詰まったレストランです」 (佐々木さん)
フレンチブッフェ(オードブル10種類超からお好きなだけ食べられます。メインディッシュ、デセール¥4,900 オードブルからその一部をご紹介します。写真左上から時計回りに)MSC帆立と岩海苔のクロケット、FIP和歌山ビンチョウマグロと根セロリのソース、ASCブラックタイガーのカダイフ、ASC燻製銀鮭とカリフラワームース
日本の海を守るのは私たちのアクション。サステナブルシーフードへの意識を高め、100年後の海も守っていきたい。
[Chefs for the Blue,MSC(海洋管理協議会)日本事務所,ASCジャパン(水産養殖管理協議会)〕
サステナブル・シーフード・ウィーク2020開催中!
10月1日から10月30日まで、MSC(海洋管理協議会)日本事務所、 ASC(水産養殖管理協議会)ジャパンが主宰するイベントが開催されている。スープ作家・有賀薫さんのレシピ「MSC認証マダラとじゃがいものミルクスープ」、「ASC認証バナメイエビのワンタンスープ」を作って、Twitterに投稿すると抽選でMSC、ASCのキッチングッズが当たるキャンペーン実施中。
詳細はこちらから。
Sincère BLUE
東京都渋谷区神宮前1-23-26 JINGUMAE COMICHI 2F JR原宿駅竹下口より徒歩3分
☎03-6343-0703
営業時間:11:30-14:00 close 17:00-23:00 close
定休日:月曜日 コース:¥4,900( 税サ別) フリードリンク:¥3,013(ノンアルコール¥1,883)(税サ別 )席数:全26席(当面は席数削減)

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