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インタビュー/働くあなたに伝えたいこと

チャレンジしたのは、自社サービスに愛があったから/アドビ株式会社 秋田夏実さん

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東京大学経済学部を卒業後、メガバンクへ就職してから金融業界で活躍してきた秋田夏実さん。その間に、米・ノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院でMBAを取得、3人の子どもを育てるなど、ハードな時期も乗り越えてきた。

現在はアドビ株式会社でバイスプレジデントを務め、マーケティングや広報全般を統括している。 輝かしいキャリアのなかで、転機となったタイミングや、大変だった時期、仕事で大切にしていることなどを聞いた。

秋田夏実(あきた・なつみ)
アドビ株式会社 マーケティング本部 バイスプレジデント。東京大学経済学部卒業。1994年メガバンク入行。その後、米・ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBA取得。帰国後、新生銀行、HSBC、シティバンク、マスターカード等を経て2017年アドビ入社。18年、バイスプレジデントに就任。

友人の医師に「失敗しても死ぬわけではない」と言われ、ハッとした

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大学卒業後に日本のメガバンクに総合職として入ったとき、同期は男性が250名、女性が6名。他に願書を出したシンクタンクでは、「女性は採用していません」と面接すらしてもらえなかったこともありました。

まだまだ女性の社会進出に対する風当たりが強い時期でしたが、そう見られていたとしても、誰よりも働いて成果を出していればいい、自分が成長すればいい、と考えていたのです。そんな風に気持ちを張りつめていたので、いつでも「絶対に失敗できない」という想いで仕事をしていました。そんなある時、金融機関でマーケティングのキャンペーンに多額の予算を使うことになり、責任がとても重くのしかかってきたのです。自分にとって大きなチャレンジだったこともあり、とても焦っていました。

そんなとき、医師の友人に「失敗したら誰かが死ぬのか」と言われて、ハッとしました。

「自分は医師として、失敗すれば人を死なせることがあり、それは取り返しがつかない。あなたの場合は、誰も死なないのだから取り返すチャンスがある。思いつめる必要はないよ」

失敗することで、もしかしたらクビになるかもしれない。周囲に迷惑をかけることにもなる。でも、生きている限り、それをやり直したり、取り返したりするチャンスがあるはず。そう思ったら、とても楽になりました。失敗しても、むしろ学ぶこともあるはず。無駄にはならないし、それで終わりではないのですよね。

乳児を抱えた時期に、長男の受験が訪れて

キャリアを振り返ってもっとも大変だったのは、3人目の出産と長男の中学受験が重なったときです。長男が、どうしても受験がしたいといい、塾では「お母さんが伴走することが大切です」と言われる……。長男には「仕事を辞めた方がいい?」と聞いたのですが、そう思っているわけではないと言うのです。ただ、夏休みの2か月、勉強をしっかり教えてほしい。それが彼の希望でした。

そこで、出産前後の産休期間を使って、彼の勉強をサポートしました。その後も、乳児と幼児、受験生を抱えて働くことはハードでしたが、受験が無事終わると、長男も子育ての戦力になってくれたのです。長男は現在、高校一年生。保育園の送り迎えも協力してくれて、今我が家は、大人が3人いるような状態です。

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アドビに入ったのは、その翌年。エージェントから声をかけていただいたときには、「IT企業」だと聞いて無理ではないかと考えましたが、その企業がアドビと聞いてぜひやりたいと思いました。金融と全く別の業界にチャレンジした理由の一つに、アドビ製品をずっと使っていた、ということがあります。

20代のうちから個人でWebページを作っていて、Photoshopをはじめとするアドビ製品にはずっとお世話になっていました。それらCreative Cloud領域とは別に、マーケターとしてExperience Cloudを活用していたし、間違いが許されない金融の世界で、 Document Cloudにも非常に助けられていました。もともと、ガジェット好きだったり、テクノロジーオタクなところもあるので、ずっとファンだったのですよね。

異業種への転職ではありましたが、大好きな製品を扱うのですから、それほど大きな苦労はありませんでした。

メンバーの「多様性」を大事にする

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現在のチームは、男女比がほぼ1対1で、20年ほどの社歴の人や、最近入社したばかりの人もいる。経歴も国籍もさまざまで、多様なバックグラウンドを持ったメンバーが集まっていて、みんな違う視点を持っています。

時には喧々諤々(けんけんがくがく)と議論することも。健全な議論をするには、心理的安全性を確保しなくてはなりません。誰かが発言したときに、否定せず「いいね」と言い合えるようにしているし、誰のどんな意見も、「悪い」とか「正しくない」ことはない。「何を言ってもいい」という雰囲気を担保している自負はあります。自分と異なる意見をプラスに受け止められれば、自分が思いもしなかったアイデアが手に入ることがあるから。

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実は今、仕事よりも強いストレスがかかることをしているのです。それは、空手の昇級試験。40代から始めて、いまは3人の子どもと私の4人で通っています。礼儀作法も身に付くし、精神の鍛錬になります。空手を始めるまでは細い声だったのですが、声が大きくなり、相手に伝わりやすくなりました。丹田を意識して発声するからだと思います。昇級試験は、CEOに英語でプレゼンするくらい緊張するので、よい経験になります。おかげで、他のことを大したことではないと感じられるほど

私がどんなことにもベストを尽くすのは、30代前半に体調が悪くなった時期があったから。今、健康でしっかりと働けているのは、とても恵まれているし幸せなことだと思っています。人間、いつどんなことがあるかわかりません。いつ振り返っても「ベストを尽くしていた」と思えるように生きたいのです。

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栃尾江美
外資系IT企業にエンジニアとして勤めた後、ハワイへ短期留学し、その後ライターへ。雑誌や書籍、Webサイトを問わず、ビジネス、デジタル、子育て、コラムなどを執筆。現在は「女性と仕事」「働き方」などのジャンルに力を入れている。個人サイトはhttp://emitochio.net

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