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MASHING UP SALON

私が「自分の仕事」に出会うまで。今を楽しみながら、自分にできることを探す旅

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働く意味は、お金を得ることだけではない。自分が好きなこと、打ち込めることを活かしながら、ビジネスを通して新たな価値を生み、社会に貢献できれば理想的だ。しかし、どうしたらその「何か」が見つかるのだろうか?

9月29日のオンラインコミュニティ「MASHING UP SALON」では、異業種から独自の道を見つけ、消費者に新たな価値を届けるビジネスを展開している、女性2名が登場。

インドの手仕事布ブランド「CALICO : the ART of INDIAN VILLAGE FABRICS」代表の小林史恵氏と、メイドインネパールのピーナッツバターの輸入・販売を行う「SANCHAI」代表の仲琴舞貴氏に、「自分の仕事」を見つけるためのヒントを聞いた。

美容室のマネジメントからキャリアをスタート

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株式会社SANCHAI代表 仲琴舞貴氏

「SANCHAI」代表の仲氏は、20歳から10年間、家業の美容室のマネジメントに携わっていた。だが、父との折り合いが悪くなり、30歳で美容室を離れ、上京。コンビニのリサーチ関連の仕事を5年間続けた。

「36歳で別のことをしようと決意して 、転職活動をしたのですが、キャリアと言えるものもなかったし、自分のスキルをうまく伝えられなかった。そのとき、知人を介して現在の“ボス”である投資家を紹介してもらい、IoT(Internet of Things:「モノ」をインターネットに接続する技術)のコミュニケーションツールを作るベンチャー企業で働きました」(仲氏)

その会社に在籍しているとき、ネパールでの事業をやってみないかと声をかけられ、ネパール語は全く、英語もほとんど話せない中 、リサーチのために単身でネパールのコタン郡という、山岳エリアにある地へ 。現地では、IoTのプロジェクトに加え、そこで作られているピーナッツをビジネスにつなげられないか、調査しようと決めていた。

現地の人にも、働くことで人生の価値を見出してほしい

最初は、アクセスが悪く、水も電気もガスもないコタンで、食品を加工できるとは思えなかったという。もしピーナッツを活かすなら、収穫物を買い取って、首都カトマンズなどにある既存の工場に、製造を委託する方法がベストだと考えた 。

しかしある日、農家の男性が村の山々の風景を見ながら「ここは本当に素敵な場所だよ。皆、故郷を愛しているけど、村には学ぶ場所も、働く場所もないから、しかたなくここから離れていくんだ」 と話してくれた。

「その話を聞いた瞬間、コタンの人たちの人生を、より豊かにできるようなことをしようと思ったんです。ここに工場を作って、コタンの人に働いてもらおうと思いました。私自身、仕事から人生の価値が見出せることを信じていたから、コタンの人たちにもっと主体的に人生を生きる機会を作りたいと考えたのです」(仲氏)

工場を作ってから「すごくおいしい」ことに気づいた

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コタン産のピーナッツで作られたSANCHAIピーナッツバターは驚くほど濃厚な味わい。これは、産業が発展していなかったという一見ネガティブな条件だったからこそ、そのままの状態で作られていた品種未改良の古来種であることが特徴。そこに大きな価値があると考えた。

帰国後、「ボス」に正直に決意を伝えた。現地に工場を作りたい。それは、早々に利益を生むのは難しいことかもしれない。でも、現地の人たちを幸せにできたら、それは利益よりもずっと価値があることだと思うーー。

すると、「やりたいなら、応援するからやりなさい」と言ってくれた。そして、怒涛の勢いで、コタンに念願の工場を1年半かけて建設する。

「工場ができてから、2つ驚いたことがあります。一つは、できあがったピーナッツバターが思った以上においしかったこと。それから、現地で雇った8人の女性たちがとても優秀だったことです。チャンスさえあれば自分の力を活かせる人って、世界中にたくさんいるんだなと思いました」(仲氏)

翌年(去年5月)には日本での販売を開始。新聞などでも取り上げられ、多くのファンを獲得している。

メディア、経営コンサルタントから布の世界へ

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キヤリコ合同会社 代表・デザイナー 小林史恵氏 Photo by Yayoi Arimoto

「CALICO : the ART of INDIAN VILLAGE FABRICS(インド手仕事布の世界)」代表の小林氏も、まったく異分野から事業を始めた実業家の一人だ。 小林さんは20代でメディアの仕事に携わったが、より自分を活かせる仕事を求めて退職。転職前に、旅行や興味のあることの勉強をして見聞を広げた。

「 NGOの仕事もして、世界中にこんなに課題がたくさんあるのに、自分は何もできていないと感じました。そんなとき、ちょうど経営コンサルタントの会社が人材を募集していたので、課題解決の手法を勉強したいという思いもあって入社し、7年半勤めました」(小林氏)

そして、転機となったのがプロボノ(企業に勤めながら行う社会貢献)として始めた、インドの無電化村に太陽光エネルギー設備を普及するNGO活動。インドに惹かれ、その後も、様々なプロジェクトで渡印するようになる。

「日本の中で新しい成長領域を作るのは難しいけれど、インドのような新しいマーケットなら、自分にも何かできるかもしれないと思いました。ヨガやアーユルヴェーダに興味があったこともありますが、実は子どもの頃から布が好きだったのです。かつて、シルクロードによって大陸の文化が渡ってきたとされる奈良で育ちました。また、かつて祖父母も布の仕事をしていました。まだ漠然としていましたが、インドには、自分の知らない豊かな香りのする布文化がある、と感じたのです」(小林氏)

「自分がやる意味」があるかどうか

マハトマ・ガンディーが「カディー(手織りのコットン)は、村という太陽系における太陽である」と語ったように、インドにおいて布は古来、人々の営みの中心として機能してきた重要な産業だ。

「インドの村に太陽光エネルギーを持ち込んだら、さまざまな課題が解決し、電化により様々なことができるようになるのではないかと考えました。でも、それは机上の空論で、なかなか難しかった。インドの人は日本人の私には、ただ技術とお金を持ってきてほしいと期待するのです」(小林氏)

また、様々なプロジェクトに関わり、それぞれにやりがいを感じてはいたが、「“自分がやる意味”や、必然性が感じられないと長くは続けていくことはできない」と思うようになった。そのような中で、インドの農家の軒先で、はらりとかけられたサリーに目を奪われては、「インドで布の仕事がしたい」という気持ちが高まっていった。

「日本からインドの農村を見ると『かわいそうな貧しい村を助けなければいけない』と考えがちですが、インドの農村は美しく、そこには外からは見えない豊かな営みがある。ここに、日本と同じ発展モデルを当てはめるべきかはわからないと思い、そこに何か自分ができることがあるのではないかと考えました」(小林氏)

本当に価値のあるものを日本へ

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Photo by Yayoi Arimoto

小林氏は長年住んだ東京で、「街に出ても、ほしいものがない」と感じていたという。モノがいらない世界になって、いいものが自分たちから遠ざかっていっている。だが、インドでは今も、大切に作られた手織りの布が売られている。

そこで、CALICOでは「美しく多様な手仕事の素材や布が、作りつづけられ、日常に使うことができる世界を創る」ということをゴールに掲げ、オリジナル商品を販売するオンラインショップと店舗運営のほか、インド各地の生産団体やNGOと連携した布の開発、インド人デザイナー・アーティストの支援と作品の代理販売事業などを展開している。

「 企業はそもそもがソーシャルなものだと思っています。だから、私にとってエシカル、インクルーシブ、サスティナブルであることは事業の前提。より多くの人にインドの布の文化を知ってもらい、職人さんが安心してモノづくりができる世界を創っていきたいと思っています」(小林氏)

どんな仕事でも、その中に重要な本質がある

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質疑応答では、「打ち込めることに出会ったきっかけは?」という質問に対し、仲氏が「どんな仕事に携わっているときも、楽しんでいます。どんなことを、どんな時に楽しいと感じるのか、その重要な部分を捉える訓練をしながら勉強してきました。そうした経緯があって、最終的なパズルのピースのように、ネパールとピーナッツバターに出会ったという感覚です」とコメント。

小林氏は、「元々布が好きだったが、その中で自分だからこそできることを考えた。好きなものだけを見ていても、なかなか仕事にはならず、その中で自分が少しでもできること、役に立てる領域を見つけていくことが大事なのでは。いきなり仕事を変えるのではなく、休みの日になにかやってみたり、まずは消費者や発信者になるところから始めてもいいのではないでしょうか」と語った。

「自分の“好き“を見つけるには?」という質問には、「携わっていくうちに、いつの間にか好きになっていることもある。好きなものは作っていけばいいと思います」と仲氏。

小林氏は、「好きというWhatに巡り合うことが実は一番難しく、それこそが人生のテーマ。How toは後からついてくる。いったん自分がいる仕組みやシステムを、離れることでしか見えないんじゃないかなと思います。一定の構造の中にいると、自分の嗜好や興味もその枠の中で作られていくから。コロナ禍では、家でいつもと違う本を読むことでしょうか」と答えた。

共通していたのは、効率的に「どうしたらより早く自分の仕事が見つけられるか」と考えるより、目の前の仕事に精一杯努力しながら、自分で考える力をゆっくり養っていくことの大切さ。いざ、運命の仕事にめぐり合ったときにチャンスを逃さないよう、日々、さまざまなものや人を知り、学ぶことが重要だといえそうだ。

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中島理恵
ライター。神戸大学国際文化学部卒業。イギリス留学中にアフリカの貧困問題についての報道記事に感銘を受け、ライターの道を目指す。出版社勤務を経て独立し、ライフスタイル、ビジネス、環境、国際問題など幅広いジャンルで執筆、編集を手がける。

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