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違法な美白商品、世界で深く根付くカラーリズム。「美白」の概念はどう変わる?

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近年、「美白」という概念が議論の的になっている。今回、Glossy USによるグローバルにおける美白の今を伝えるポッドキャスト「アンフェア(Unfair)」の中から、欧米をはじめ世界各国で販売される違法な美白商品と、それをめぐる各国政府の対応、そして世界で深く根付くカラーリズムについて伝える。この風潮を変えるべく今後美容企業と消費者の両者が取るべきアクションとは──。

EUでは禁止成分のハイドロキノン、英国では違法製品の摘発も

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ハイドロキノンは美白製品によく使われている成分で、ある程度の量であれば皮膚科医も問題ないとみなすだろう。だが皮膚に炎症や黒ずみを引き起こすこともある有害な成分でもあり、EUでは2001年以降、化粧品への使用は禁止されている。(アメリカでは2%までの濃度で市販が許可されている)

ロンドン取引基準局のポール・ガンダー(Paul Gander)氏が率いるチームは、ステロイドやハイドロキノンなどを違法に使用した美白化粧品が保管されている店舗内の倉庫を発見、合計1万ポンド(約140万円)以上の価値がある何百もの製品が押収され、ラボで検査したところ、5分の1の製品に禁止成分が含まれていることが判明した。新型コロナウイルスの感染が拡大する以前は、同局ではこうした強制捜査を年に5、6回行っていたという。

違反行為が止まないのは、残念ながら需要があり、利益を生むからです」と、ガンダー氏が言う通り、美白化粧品は世界的に流通している。異なるバックグラウンドを持つ多様な人種コミュニティがあるイギリスも、例外ではない。過去5年間でロンドン取引基準局は、数十件の事件を摘発、ある事例では、市販品に自宅でハイドロキノンを添加した女性が告発されている。イギリスはこの問題に真剣に取り組んでおり、2018年には20か月の実刑判決を受けた販売業者もいた。取り締まりの最大の理由は、ハイドロキノンに健康上のリスクがあるからだ

「全身に美白目的で使うと長期的な悪影響を及ぼす可能性があります。局所的なシミには理想的な製品もあるとはいえ、美白目的で全身に毎日使うようになると、長期的な健康被害が出てくるためEUが禁止したのです」(ガンダー氏)

水銀が含まれた美白製品の深刻な被害

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ガンダー氏がロンドンで押収した製品には、ハイドロキノンだけでなく、深刻な影響をもたらす別の成分、水銀が含まれているものもあった。

「何十年も前から水銀が有毒であることは知られていますが、いまだに完全に対処されていません」と話すのは、世界保健機関(WHO)で化学物質安全性を担当するキャロリン・ヴィッカーズ(Carolyn Vickers)氏だ。

「美白製品に含まれる水銀が腎臓にダメージを与えることがわかっています。また中枢神経系への影響のほか、不眠症、イライラ、抑うつ、歩行困難などの症状が出ることもあり、医師や本人が原因を特定することさえ難しいケースも見られます。アメリカのようにこれらの製品が禁止されている国でも、水銀含有の美白製品を使用していたために、こうした症状が現れる人が繰り返し報告されているのです」とヴィッカーズ氏は指摘する。

確かに水銀は厳しく規制されている。2013年に採択された国際条約では、ほとんどの例外を除き、水銀を含む製品の製造や輸出入を禁止している。アメリカは7年前に同条約に署名しているが、カリフォルニア州では過去10年間で60件以上の水銀クリーム中毒が発生している。カリフォルニア州公衆衛生局の科学者ローリ・コパン(Lori Copan)氏は最悪のケースについて次のように説明した。

「カリフォルニア州では、市販のクリームに水銀を加えたものを使用して昏睡状態に陥った女性がいました。これは去年の事件で、彼女は今も昏睡状態です。こうしたクリームを入手できないようにすることが非常に重要だということがこれでわかりますよね。メチル水銀が添加された理由は不明で、現在も調査中です」(コパン氏)

水銀は市販品に添加されることが多く、カリフォルニア州の場合は通常メキシコで行われている。2019年、コパン氏は多くの店を訪れ、水銀が添加されたクリームを発見した。カンボジア、中国、日本、メキシコ、パキスタン、フィリピン、タイなどでも実店舗でこれらのクリームが販売されているという。輸入を制限しようとしても、個人の手荷物などに紛れて国境を超えてしまうため、綿密に練られた対策が必要となる。しかし以前からこの問題に取り組んでいるコパン氏は、カリフォルニア州の規制システムは機能していないと苛立ちをあらわにしている。

いっぽうニューヨーク市衛生局の行動は注目に値する。汚染された製品の販売停止を企業に命じ、外国の領事館との連携も行っているのだ。また食品医薬品局(FDA)も、この問題に気づいている。押収可能な製品の「レッドリスト」を作成し、昨年はそのリストにパキスタンのゴールデンパール(Golden Pearl)社など海外企業数社を追加するという輸入警告を発した。またFDAは昨年メキシコから密輸したクリームをフェイスブックで販売していた女性を逮捕している。

ただしラベルが表示されていないものから、伝統的な製品に見えるもの、無名メーカーのものやドラッグストアで売られている製品にそっくりなものまで実にさまざまであることから、問題となる製品は非常に広範囲に及んでいる

水銀による被害も。米政府の対応は

なぜこれらの製品に水銀が含まれているのか。理由のひとつは、ハイドロキノンと同様に、水銀はメラニンを生成する機能に作用するので、使用することで肌のトーンが明るくなるからだろう。しかし、そこには恐ろしい代償がある。

ミネソタ州公害管理局のマイケル・シオン(Michael Xiong)氏は、州の健康プログラムの一貫として尿検査を行い、妊婦の検体から過剰な水銀が検出された場合、個別訪問をして調査を行うという。

水銀は目に見えず、無臭なので発見が難しい。ときには空気中に漂っていて、家全体を危険にさらしていることもあるという。またシオン氏は、家庭を訪問する際に通訳を同行させることも多い。なにか法的な責任を問われるのではないかと恐れる移民の家庭に、そうではなく健康上の安全のために訪問しているということを説明し、相手の言語で書かれたパンフレットを渡す。

この問題にはアメリカ政府も注目しており、ミネソタ州のベッツィー・マッカラム(Betsy McCollum)議員は、これらの製品の危険性について啓蒙すべくFDAに100万ドル(約1億円)の資金供給を考えており、7月には議会で演説を行った

「特に有色人種の女性や少女を対象とした肌の美白製品など、化粧品の安全性に取り組むために、FDAに資金提供する旨を報告書に盛り込んだ委員会に感謝したいと思います。これらの製品には違法で危険なレベルの水銀が含まれており、多くの場合、腎臓や免疫・神経系だけでなく、皮膚へのダメージを含む深刻な健康被害につながる可能性があります」(マッカラム議員)

美白製品を宣伝する大手美容企業の社会的責任

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ユニリーバが販売する美白クリーム「フェア&ラブリー(Fair & Lovely)」シリーズ。現在はグロー&ラブリー(Glow&Lovely)に名称を変更している。image via Shutterstock

美容企業はこれらの問題とどう向き合っているのか。無名の企業や密輸業者と違い、大手のブランド企業は水銀やハイドロキノンを無謀な濃度で使用しているとは思えない。たとえばユニリーバ(Unilever)が販売する美白クリーム「フェア&ラブリー(Fair & Lovely)」シリーズ(現在はグロー&ラブリー(Glow&Lovely)に名称を変更している)には水銀、ハイドロキノン、ステロイドは含まれていないと言う。

ユニリーバやロレアル(L’Oréals)の美白クリームには害はないだろう。しかしこれらの企業は、色の濃い肌は理想的ではなく、それを変えられるという考えを押しつけている。オマル議員は、こうした美白製品や色白のほうがよいという広告が及ぼす心理的な害について語っている。

「褐色の肌や黒い肌をした多くの人々にとって本当に個人的で重要な問題です。多くの社会で濃い肌の色が抑圧されていて、何を美しいとするか、自分たちの価値をどう理解するか、私たちが内在してしまっている抑圧と戦わなくてはなりません」(オマル議員)

ミシガン大学ビジネススクールで社会におけるビジネスの役割をテーマに教鞭をとるアニール・カルナニ(Aneel Karnani)氏は「これは身体的な害ではなく、社会的な害にまつわる問題だ」と指摘し、同製品とユニリーバを批判する。

「ユニリーバがこのような偏見を生んだわけではなくても、同社がやっていることは社会に人種差別的かつ性差別的な偏見をもたらしている。肌の色が黒い女性は、仕事も恋愛もうまくいかないというバイアスを生んでいる。インドで育った若い女性がこうした広告を日常的に目にしていることを想像してみてほしい。自尊心や価値観に悪影響を及ぼすのは明らかだ」(カルナニ氏)

この社会的問題に対して行動を起こしている国もある。インドでは、2003年にふたつのフェア&ラブリーのテレビ広告を差し止め、2014年には国の広告基準審議会が、濃い肌色を劣ったものとして描いた広告を禁止している。カルナニ氏は、企業の社会的責任、産業界による自主規制、市民社会による行動、そして政府による規制という4つのメカニズムを論文で考察し、「企業の社会的責任だけに頼るのはうまくいかない。企業が自発的に変化すると思うのは、あまりにも甘すぎる。これは市民社会による行動や政策として、社会全体で反対すべきことだ」と主張した。

インターネットに蔓延する違法な美白製品

実際に変化をもたらした行動はあるだろうか。カラーリズム(肌の色の濃淡で差別すること)や美白を終わらせるべく活動する非営利団体ビューティウェルプロジェクト(Beautywell Project)のエグゼクティブ・ディレクター、アミラ・アダウェ(Amira Adawe)氏は、ソマリア系アメリカ人のラジオ番組のホストを務め、肌の色に関する政治問題について語っている。

昨年、アダウェ氏はアマゾンに対する取り組みを行った。いくつかのグループとともに製品試験をした結果、同社に水銀を含む美白化粧品が掲載されていることが判明。そこで彼女は25,000件の署名を集め、請願書を手にミネアポリス郊外のシャコピーにあるアマゾンの施設を訪れたのだ。アマゾンはその商品を外したが、美白製品のような危険な商品をインターネットから完全に排除することは難しい。アダウェ氏はeBayで購入した製品のテストも行っている。

「彼らには大きな責任があるのです。知らないふりをしているのか、知っているのか、いずれにしても私からすればカラーリズムを助長しているにすぎません。社会や環境に有害なものをつくり出している。公衆衛生や環境正義の問題のすべての原因になっています」(アダウェ氏)

アマゾンは我々の取材に応じず、代わりに「水銀を含むスキンクリーム」に関するポリシーを提示した。プラットフォーム上に水銀を含む製品が存在しないと、どれだけ自信を持っているのか教えてくれることはないだろう。

eBayの広報担当者は同社のウェブサイトからこれらの製品の多くを削除しているという。過去1年で、eBayは禁止されている美白製品を1万件以上ブロックした。その際、冒頭のイギリスのポール・ガンダー氏のチームと協力体制をとっている。また、昨年12月には特定の製品を取り下げるために、自動と手動の両方でフィルターを設置した。しかし、いまだ「スキンホワイトニング」で検索をすれば、eBayでもアマゾンでも美白製品が大量にヒットする状況だ。

規制しても流通を止められないオンライン販売の仕組み

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Glossyの編集者リズ・フローラ(Liz Flora)氏はこう話す。「アマゾンで『美白』と検索すると、最初に出てくるのがムラド(Murad)というスキンケアブランドの広告です。『FDAの規制前にハイドロキノンを買い占めろ』と書いてあり、 つまりこのブランドがスポンサーになっていることがわかります。この言葉に対して広告枠を買っているブランドが間違いなくあるんです

特定の検索キーワードで自社商品を紹介したい場合、検索結果の上位に表示されるスポンサー付きの枠を購入することができる。これらの枠には「スポンサード」というラベルが貼られており、そうしたブランドは、その検索語に表示される広告を特別に購入したことがわかるようになっている。

これは特にポーラチョイス(Paula's Choice)やムラドのようなブランドにとっては問題だ。米国ではハイドロキノンの含有量は2%を超えてはならないのに、売り文句として利用しているのだ。その成分が含まれていなくとも、そのキーワードで美白製品を求めている市場をターゲットにしている。また、無名ブランドや住所不明なブランドも検索結果に表示される。ウクライナ製の美白薬やテキサスの美白のハーブサプリ、中国製の製品など、まさに国際市場であり、世界中のこうした商品を、アマゾンは米国市場で販売しているのだ。

問題の大部分を占めるのが金だ。製品を規制することはできても、ひとたび金になるとわかれば、実店舗や個人、オンラインを問わず人や企業が関わってくる。

肌の色に対する消費者の意識を変えるために

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重要なのは供給側に対する取り組みだけではない。ありのままの自分の肌を愛すべきだと教えるプログラムを通じて、需要の側面を変えたいと考える人々もいる。環境保護団体シエラクラブ(Sierra Club)で働くソーニャ・ランダー(Sonya Lunder)氏もそのひとりだ。

「一番の問題は人種差別やカラーリズム、肌の色を明るくしたいという強烈なプレッシャーは世界中に存在するということです」と話す彼女は、アマゾンやeBayで購入した商品をテストするためにアダウェ氏と密接に協力している。非常に毒性の強い製品を世界的に販売しているのはごく少数の企業であることが判明したものの、人種差別やカラーリズムのほうが問題であり、それを解決することで美白業界の危険な側面を弱体化できるかもしれないとランダー氏は考えている。

「単に成分を違法にするだけでは問題解決になりません。この製品は危険だからやめたほうがいいよと個人に伝えるだけではダメなのです。有害な『美の基準』にあわせろと、主に女性が友人や家族、愛する人から本当にプレッシャーを受けているという社会的・文化的状況について真剣に考える必要があります。これは身体的なダメージだけではないのです」(ランダー氏)

原題 [‘We certainly are at risk’: Unfair Podcast, episode 2 ]

(翻訳:Maya Kishida)

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Glossy Japan編集部
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