4回目を迎えたMASHING UPカンファレンスが、2020年11月26-27日という熱い2日間を経て、無事に幕を閉じた。
今回は、新しい時代に応えるかたちでオンライン及びリアルイベントを同時開催。ネットの向こう、そして会場から多くの参加者が、今を「よりよく生きる」意義をつかみとったことだろう。
充実の2日間をふりかえり、MASHING UP編集長・遠藤祐子から、皆さんへ。
「想像力」という言葉が多くの登壇者の発言にあらわれた二日間だった。
他者の考えや、相手の背景にある文化や置かれた環境について想像力を持つ。あまりにもシンプルな、人と人の関わりの「基本的なこと」に、こんなに沢山の人が価値を見出している。
そのこと自体に希望を感じたという参加者の声があったし、私もそう感じた。
人間は長い長い歴史のなかで、ずっと「よりよく生きる」ということを考え続けてきた。インターネット時代に突然発生したパンデミックは、社会と経済と私たちの暮らしを大きく揺さぶり、「よく生きる」ことの意味をふたたび考えよ、と私たちに告げている。
だから、今回のテーマは、Explore! The New Well-being. (新しい幸福を探索しよう!)であった。わたしたちが目指すインクルーシブな社会における、新しいWell-being(幸福さ、良好である状態)についてディスカッションを深めたかったのだ。
そんななか、多くのセッションで飛び出した言葉が「想像力」であった。
たとえば、「これからの隣人。コミュニケーション、移民、移住」のセッション。自身も海外で育ち医師として外国人と向き合う浅香朋美氏は「個人でできることのひとつは、想像力を広げること。寛容性を持つこと。目の前にいる、外国の方の言語、その国の文化、生活をもとに、どんな人なのかということを元に、“想像すること”は楽しいことですし、相手を理解する第一歩になる」と、他者とともにある姿勢を示した。
“想像すること”は楽しいことですし、相手を理解する第一歩になる ——浅香 朋美氏
また、キーノートのパヤル・アローラ氏は、未来のインターネットやテクノロジーを考えるセッションにおいて、“グローバルな想像力”が必要だと言う。世界の「向こう側」の人は、助けが必要な可哀想な人ではないのだ、と。アジアやアフリカなどが「キャッチアップする必要がある遅れた国々」という旧来の論調を捨て、それらの地域で見られる「リープフロッグ(かえる跳び)=新興国が先進国と同じ段階を経ずに一足跳びに最先端技術を取り入れること」や「フルーガル・イノベーション=最小限の資金でイノベーションを起こす」という概念にもっと注目すべきだという。
世界の「向こう側」のあの人たちもまた、私たちの暮らしの延長上にいるということ。ニュースで伝わる表層だけではなく、その背景にも想像力を働かせてみたい。
世界の「向こう側」の人は、助けが必要な可哀想な人ではない ——パヤル・アローラ氏
「ダイバーシティとビジネス、人を生かし成長させる事業」のセッションで、DIALOG IN THE DARK JAPAN「対話の森」代表の志村真介氏は、「私たちは障がい者と出会っていない」という。
マルティン・ブーバーの言葉をひいて「私たちが唯一の学ぶ方法は遭遇による」と話し、いかに他者に出会い、想像することが必要であるかということを、自身がすすめてきた「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の活動を通じて得た気づきと共に話した。
私たちは障がい者と出会っていない ——志村真介氏
セッションのひとつひとつが、「他者」あるいは無意識に「他者」として扱っていた人々の背景にあるもの想起させ、そこからくるイマジネーションはあたらしい考え方の回路をひらいてくれた。私はこの回路から生まれてくるものに期待したい。それは事業かもしれないし、社会的なアクションかもしれない。未来のエンタテイメントもあってほしい。
願わくば、この会が参加者のみなさんの頭のなかに、これからの社会を生きるための地図を形作る一助になれば、 送り手としてこんな嬉しいことはない。
文・遠藤祐子(MASHING UP編集長)
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