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Conference:MASHING UP vol.4

倫理としてのCSRから戦略としてのESGへ。真に持続可能な「社会貢献」とは?

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SDGs(2015年に国連で採択された、持続可能な世界を実現するための17の国際目標)が採択されて以降、社会に対する個人や企業の意識が変化しつつある。そんな中、CSRの領域を超えて、社会を良い方向にリードしている企業が注目されている。

2020年11月27日の「MASHING UP Conference vol.4」では、そうした取り組みを続ける企業から、アクサ生命保険株式会社 代表取締役社長兼CEO 安渕聖司氏ロート製薬株式会社 代表取締役会長 山田邦雄氏、そして大和証券グループ本社CSR室長などを経て、現在は不二製油グループ本社 CEO補佐を務める河口眞理子氏を招き、「企業が社会に届ける価値」と題したトークセッションを実施。エッセイストの小島慶子氏をモデレーターに、各社の取り組みや社会の動きについて語ってもらった。

投資の力で気候変動に立ち向かう

企業も個人も、いかに社会に対してポジティブなアクションを取れるかと考えることが、近年では当たり前になってきました」と小島氏。それに先駆けて、積極的に社会に関わってきた企業もある。アクサ生命保険もその一つだ。

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アクサ生命保険株式会社 代表取締役社長兼CEO 安渕聖司氏

「最近では、会社のパーパス存在意義を問われることが多くなりました。当社のパーパスは、『すべての人々のより良い未来のために。私たちはみなさんの大切なものを守ります』というもの。保険と共に資産運用を行うなかで、リスクの専門家として、人類がコントロールできない大きなリスクである気候変動に着目しています」(安渕氏)

地球の温暖化は今、待ったなしの危機的状況にある。温暖化のリスクは水害や食糧不足だけではない。感染症にも大きく関わっている、と安渕氏は指摘する。

「気候変動に取り組むことは人類に対するリスクを抑えることであり、保険を引き受けるリスクを抑える意味で、会社のサステナビリティを高めるためにも必要です。そこで当社では、パリ本社に気候変動の専門チームを立ち上げ、取り組みを強化しています 」(安渕氏)

具体的には、気候変動を悪化させるリスクのある企業には投資をしない、という投資基準を掲げている。またその一方で、将来的にエネルギー移行を進める企業への融資を目的とした債券、トランジションボンドの発行を提唱。

こうした投資を続けていくことで、2050年までに地球の温度上昇を1.5℃に抑えるというパリ協定に基づいた 目標を立てているという。

未来を創る「人」と「サイエンス」を支援したい

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ロート製薬株式会社 代表取締役会長 山田邦雄氏(Zoomによる登壇)

ロート製薬の大きな転機は、東日本大震災だった。

「こういうときこそ企業の社会における新しい可能性が発揮できないかと考え、当社とカゴメさん、カルビーさんとの3社でみちのく未来基金(※)を立ち上げました。震災当時に母親のお腹の中にいて、親御さんが亡くなられた方が大学に進学するまで支援する、というプロジェクトです」(山田氏)

国の支援に頼らずに始めたプロジェクトが大きな賛同を集めたことで、「企業にもできることがある」という気付きになったという。それから、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)ではなく、社会貢献と企業側の利益を両立するCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)の部署を作り、さまざまな活動をスタートさせている。

もう一つ、今の日本で見逃してはならない危機が科学力の低下」だと山田氏は指摘する。

「社会課題を解決するためにも、今こそサイエンスが必要なのですが、日本の研究開発は非常に心もとない状態です。そこで、今後日本の主力産業の一つになると言われている再生医療の研究を、当社では社会貢献の一環として行っています」(山田氏)

※みちのく未来基金 現在の運営は、カゴメ株式会社、カルビー株式会社、ロート製薬株式会社に加え、エバラ食品工業株式会社も理事として活動している。

消費者の選択が企業をリードする時代へ

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不二製油グループ本社 CEO補佐 河口眞理子氏

長年、CSRやESG投資の研究普及啓発の活動に関わってきた河口氏は、企業や投資の変化が加速したのは、2015年のSDGsの策定以降だと指摘する。

「たとえば、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)を重視した経営を行う企業に投資するESG投資が3年前くらいから主流になっていますが、私がこれを始めた20年以上前は誰も知りませんでした。エコファンドの話を環境省に持っていっても、『証券会社の人間に、環境について評価されたくない』といわれた時代からすると大きな変化です。気候変動や生物多様性の問題がクローズアップされ、このままでは地球が人間にとって住める環境ではなくなってしまうということが明らかになってきたことで、大きく方向転換したのです」(河口氏)

「消費者の意識も変わってきたのでしょうか」という小島氏の質問には、今まで遅れていた日本も変わってきている、と話す。

「実は、企業は昔から取り組んできてもいるのです。ただ、頑張ってソーラーパネルを作っても、消費者が高いと言って買ってくれなければどうにもなりません。私は長年、CSRの活動を企業に、ESG投資を投資家に勧めてきたのですが、これだけでは不十分。やはり消費者がそれを評価して買ってくれなければだめなのです。それが、SDGs以降、モノを選ぶときに環境負荷を考える人が増えてきたことで変わってきました」(河口氏)

SDGsはおまけでなく「本業」であるべき

コロナという予期せぬ事態が、消費者や投資家の行動に与えた変化はあったのだろうか。

「移動できなくなったことでベニスの運河がきれいになったなど、環境負荷が減ったことを目の当たりにして、消費者が自分の健康や幸せを改めて見直すようになりましたよね。投資家も変化しています。例えば、海外ではコロナウイルスの影響で大手のエアラインなどに政府からの支援金が入っていますが、リーマンショックのときは、投資家が『支援金が入ったのだから配当に回すべきだ』と主張して、金融機関の社会的責任を問われる事がありました。しかし今回は反対で、投資家が『今は配当はいらないから雇用を守るべきだ』と言っています。これまで自分の儲けを優先的に考えていた投資家が、企業が社会にとって良いことをするためのステークホルダーのひとりであるという風に変わってきたのです」(河口氏)

これには、「確かに、投資家は配当よりも地域を守ることを気にするようになり、消費者も含めてマインドが変わってきたと思っています」と安渕氏も同意する。

「私は2020年3月まで、大和総研で研究員をしていました。その頃、企業の役員の方たち向けに講演してきましたが、そのテーマが倫理としてのCSRから戦略としてのESGに変わっているということです。今までは、本業で儲けて、CSRで良いことをしようという感覚だったから、業績がよくないとCSRにまで気が回らなくなったり、CSRの担当者は本流ではないと、社内からは冷たい目で見られたりしていました。それが、2015年以降は企業戦略の一つとして考えられるようになり、ESG投資家がそうした戦略としてのESGを評価するようになったのです」(河口氏)

消費者も大きく変化し、2015年以前はエコマーク付きの商品やフェアトレードの商品はコンビニでは売れないと言われていた。しかし、今ではそうした商品をメーカーがコンビニから要求されるほど変化していると河口氏は言う。消費者のニーズが変われば、企業もそれに合わせたモノを作ろうとし、そこに投資の機会も生まれる。

「これからの時代は、消費者がどんどん企業にエシカルを要求する時代になってくると思います」と河口氏は指摘する。

社会に対して企業がどうひらいていくか

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エッセイスト・タレント 小島慶子氏(左)、安渕聖司氏(右)

社会のために、企業という枠を超えた活動を始めているケースもある。ロート製薬では、副業を認めることで社員が社会で活躍する機会を増やし、そのポテンシャルを社会のために活かすという取り組みを続けている。「ロート製薬という枠の中でできることは限られています。社員を開放することも、社会貢献なのではないかと考えています」と山田氏。

これを受け、「まさに、キーワードは企業が社会にどうやって開いていくかということだと思うんですよね」と安渕氏は指摘する。

「今、コロナ禍で起こっているのは、家庭と会社、そして社会という今まで分断されていたものの融合です。仕事の中に突然、家庭が入ってくることが当たり前になったのです。この流れを止めてはいけません。企業が開かれていくほどに、コミュニティはよくなるはずです」(安渕氏)

SDGsのバッジをコミュニケーションツールに

質疑応答の時間に入り、「働いている社員が、企業に変化を促すには?」という質問には、「仲間を募って勉強会などを立ち上げて、3人くらいの上司に話をすれば、どこかで取り上げてもらえます。それでもダメだったら、転職も考えてもいいかもしれません」と安渕氏。

ロート製薬では、社内で起業家を募り、社内通貨を使ったクラウドファンディングで応援するという仕組みを作っている。「若い世代には社会問題に熱意を持つ人も多いですが、踏み出せないという人もたくさんいます。一歩を踏み出す仕組みを、企業に作ってもらいたいですね」と山田氏は指摘する。

また「最近はSDGsのバッジをつけているだけで満足している人もいるようです」という聴講者の意見が読み上げられると、会場では笑いが起こった。「バッジをつけている人には、実際にどんなことをしているのか聞いてみましょう」と河口氏。また、SDGsバッジをコミュニケーションツールとして使うといいのでは? という意見も。それをきっかけに話を聞けば、なかには“本物”の人もいるはずだ。

企業のトップだけでなく、企業で働く社員の一人ひとり、モノを買う私たち一人ひとりから変わることが大切なのだということを本日の皆さんのお話から学びました。SDGsバッジをきっかけに人脈を広げて同志を見つけ、世の中に対してポジティブなアクションを取ることが当たり前な世の中になるといいですね」と小島氏。

企業が社会を変えることも、個人が企業を変え、社会を変えていくことも実現可能だということを、力強く示してくれたセッションとなった。

MASHING UPカンファレンス Vol.4

企業が社会に届ける価値
安渕聖司氏(アクサ生命保険株式会社 代表取締役社長兼CEO)、山田邦雄氏(ロート製薬 代表取締役会長)、河口眞理子氏(不二製油グループ本社 CEO補佐、立教大学特任教授)、小島慶子氏(エッセイスト・タレント)。

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このトピックとかかわりのあるSDGsゴールは?

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中島理恵
ライター。神戸大学国際文化学部卒業。イギリス留学中にアフリカの貧困問題についての報道記事に感銘を受け、ライターの道を目指す。出版社勤務を経て独立し、ライフスタイル、ビジネス、環境、国際問題など幅広いジャンルで執筆、編集を手がける。

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