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「プラスチック・ニュートラル」を試みる米国美容スタートアップ。環境への新アクションは根付くか?

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米国でパーソナルケアアイテムを手掛けるサステナブルなブランド、バイヒューマンカインド(By Humankind)は2020年11月に、消費者がプラスチックの消費量を相殺することができる、新たなチャリティのサブスクリプションサービスを発表した。

この、「プラスチック・ニュートラル(Plastic Neutral)」という名の新サービスは、企業が積極的に植林などし、二酸化炭素排出量のバランスを取ろうというカーボン・オフセットの取り組みに似ている。

バイヒューマンカインドの取り組みは、同ブランドを通じて毎月8USドル(約844円)を「プラスチックバンク(Plastic Bank)」に寄付することで、顧客個人のプラスチック・オフセットを促進するというものだ。プラスチックバンクは世界的な非営利団体で、プラスチックが海に流出するのを防ぐとともに、貧困を減らすための活動をしている。

同団体は、プラスチックごみを回収するハイチやインドネシアの人々に補償を与え、さらにそのプラスチックを適切にリサイクルして再利用している。バイヒューマンカインドの共同創始者でCEOのブライアン・ブッシュネル(Brian Bushnell)氏は、同ブランドはプログラム参加者のレコードを記録し、認証をおこなっていると話す。バイヒューマンカインドによれば、参加者はこのプログラムを通して、海に廃棄されるプラスチックごみを月に22ポンド(約10キログラム)を相殺することになる。

消費者の意識改革と行動変容を促す企業の取り組み

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「私たちは、消費者がプラスチック・ニュートラルになれる手段を提供している。消費者は使い捨てプラスチックの削減についてはすでに大きく興味を持っているが、ライフスタイルに大きな妥協をすることなく、2020年に誰もがゼロ・ウェイスト、つまりごみをゼロにすることはほぼ不可能」と話すのは、バイヒューマンカインド共同設立者でCMOのジョシュア・グッドマン(Joshua Goodman)氏だ。

バイヒューマンカインドではゼロ・ウェイストのライフスタイルを簡単に実現できるような、未来への架け橋を提供しようとしている(グッドマン氏)

オーラルケア用品、デオドラントやバスグッズなどを販売するバイヒューマンカインドは、2019年2月にベンチャー投資会社レラー・ ヒッポー(Lerer Hippeau)率いるシードファンディングで、400万ドル(約4億1400万円)を調達。ブッシュネル氏とグッドマン氏は、同社のサブスクリプションの加入者数について明言こそしなかったが、設立2年目となる同社の売上高は前年比500%増となっているという。

プラスチック・ニュートラルは、本質的には慈善活動だが、オールバーズ(Allbirds)、ディズニーやマイクロソフトといった企業などが、連邦政府の規制がないため、自ら二酸化炭素排出量に対する手数料を課しているのと同じ流れである。オールバーズの場合、透明性を高めるためにサプライチェーンの最適化を計画していた。しかしプラスチックニュートラルは考え方をさらに発展させ、消費者が自らの習慣に対して、個人的に責任を負えるようになっている。(顧客はプログラムへの参加が税金の控除対象にはならないが、バイヒューマンカインドは環境への貢献を生み出すという役割を宣言することで、社会的信用を得られる)

寄付や慈善活動のキャンペーンもウェブへ移行

商品を会計する際に行われている寄付も、ビッグビジネスだ。慈善団体と企業との資金調達のパートナーシップを支援する「エンゲージフォーグッド(Engage for Good)」によると、米国では2016年に店頭でおこなわれた73件の資金調達キャンペーンが、それぞれ100万USドル(約1億350万円)以上の資金を集め、寄付金の総額は4億4100万USドル以上(約456億6千万円)となっている。これらのプログラムでは、30年間で合計41億USドル(約4245億5千万円)以上の資金を調達している。しかしこれは、通常スーパーマーケットや薬局などの実店舗で行われているもので、Eコマースの領域では行われていない。

過去12カ月で、コーラオーガニックス(Kora Organics)やジョンマスターズオーガニックス(John Masters Organics)といった美容ブランドが、寄付をすれば送料無料になる最低限の金額に達するような仕組みをウェブサイトに追加している。前述の両ブランドは、Eコマースプラットフォームのショッピファイ(Shopify)を通じて、社会貢献のための資金調達団体「デイリーカーマ(DailyKarma)」と連携している。

「プラスチックニュートラル」のプロモーションのために、バイヒューマンカインドは毎年11月に実施されるブラックフライデーに、プログラムの概要を紹介する専用のランディングページを立ち上げた。そして、その直後のサイバーマンデーまでEメールやソーシャルメディアの投稿を通じた、無報酬のマーケティングによってそのページへのアクセスを促した。

使い捨てプラスチックの観点からすると、ブラックフライデーは1年のうちでもっとも無駄の多い週末のひとつ。タイミングとして、そのような日に声明を出すべきだと感じた(ブッシュネル氏)

原題 [Beauty brands embrace taboo topics for corporate social responsibility initiatives]/ EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida)/image via GettyImages

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Glossy Japan編集部
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ビューティ・ウェルネスの未来を考えるメディア&コミュニティ。最先端トレンドを発信し、業界の未来を切り拓くことをミッションとしています。イベントや取材を通して、US含む海外トレンド分析と日本における時代潮流を読み解いていきます。

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