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1日1個のカップ麺生活も。なすすべなく社会で孤立する若者たちの現状

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首都圏では2回目の緊急事態宣言が発令され、多くの人がコロナ禍で苦しんでいる。

そのなかで救いとなるのは、人々の助け合いがさかんになっていることだ。今回は、特に「児童養護施設出身の若者支援」に光をあてたい。なかなか注目されない分野だが、とても大切なことだと感じるからだ。幼少期に心に傷を抱え、早くから社会に出て経済的に自立していかなければいけない彼ら。そういう若者に手をさしのべている人たちがいる。

収入は月に3万、なすすべなく孤立する若者たち

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「二度目の緊急事態宣言、10万円の給付金もなくて、生活が前回よりもさらに苦しくなりました」。児童養護施設出身の若者を支援する一般社団法人 Masterpieceには、そんな声が寄せられている。

何と言っても現金が必要。現金ならば、とりあえず何にでも使える」と話すのは、同団体代表の菊池真梨香氏だ。50人の若者に2万円を届けるため、120万円を目標に開始されたクラウドファンディングプロジェクトは、すでに達成。今はネクストゴールの400万円を目指している。3月7日が期限だ。

「困窮している若者をできるだけ多く支援するために、もっともっと応援をお願いしたい。彼らは飲食業で働いている人が多い。コロナ禍で仕事が減り、大きな打撃を受けている」(菊池氏)

2020年の緊急事態宣言時にもクラウドファンディングをおこなっており、その時は504万円が集まった。138人の若者に2~5万円を給付、65人にカップ麺やカレーなどのレトルト食品、お菓子といった食糧支援も行った。

今回の支援について、対象となるであろう若者たちからは他にも「2月の給与は3万円に届かない。父は他界し、母とは疎遠になっているため仕送りもありません」「一日カップ麺一個で過ごしています。栄養のあるものを食べたい」などの声が寄せられている。

早々に自立を強いられる子どもたち

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そもそも、養護施設出身の若者たちはどのような状況にあるのか。

児童虐待や育児放棄など、さまざまな事情で家や親元を離れて、施設で暮らさざるを得ない子どもたちが、日本には4万5千人ほどいる。18歳までは施設で集団生活をして、職員たちに面倒をみてもらえるが、それ以後は施設を離れて自分で暮らしていかなければいけない。奨学金を得て進学できる人はほんの一握り。たとえ進学できたとしても、バイトで生活費を稼がねばならず、家族にお金を出してもらっている学生とは経済的な大変さの度合いが違う

そのため、進学せず就職を選ぶ人たちも多い。正規で雇用されればいいが、バイトを掛け持ちする子も多く、「出稼ぎ」と呼ばれる風俗業で、(心ならずも)生活をしている子も。緊急小口資金(特例貸付)など、今回のコロナ禍でも行政からの金銭的な支援制度はある。だが、そういう支援が彼らのもとに届いていない

2020年にMasterpieceからの支援を受け、今回も応募しようとしているアヤカさん(仮名)に話を聞いた。大学1年生だ。アヤカさんは小学校6年生の時に施設に入った。母の再婚相手である継父に暴力をふるわれ、性的接触もされた。しかし、「お母さんには言えなかった」という。以降、高校を卒業するまで施設で暮らした。

「施設で暮らす子たちは、自分たちの気持ちをきちんと言葉にできない子も多い。自分はそういう子たちの気持ちもわかるから」と語るアヤカさんは、現在は社会福祉を学び、児童相談所で働く夢を持っている。大学には奨学金を使って進学できた。生活費は、居酒屋とファストフードのバイトを掛け持ちしている。親には連絡をとっていない。「逆にお金をたかられる」からだ。

アヤカさんが、たまたまSNSでMasterpieceの支援を知ったのは、2020年の緊急事態宣言時。バイトのシフトが大きく削られ、生活にも影響が出ていたころだった。

「困っていたから嬉しかった。こんなのがあるんだと」。2万円と食料の支援を受け取った。「お菓子とか鍋の素とか。助かりました。家賃がまじやばい、親にも頼れないし、っていう感じだったのですが、おかげで払うことができました」と、語るアヤカさんは、今回も支援の給付に応募するつもりだ。

必要なところへ届かない支援

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アヤカさんの施設の同級生のうち、進学しているのは自分だけだという。「1人は奨学金を受けず、自分でバイトをして学費を払っていたけど、続かずにやめてしまった」と、アヤカさん。働いている友人も、公的な給付金や貸付などの制度を知らなかったり、知っていても応募が難しかったり、面倒だったりしてあきらめてしまう子が多い

「私は給付金の制度を学校で知ったが、学校に行っていない子たちには情報は届かない。それに、私が給付金制度についてのURLを送っても、知的に遅れていて漢字を読むのが難しく、応募できない子も。夜の仕事を始めた子とは、疎遠になってしまった。小さい頃に受けた精神的な傷が原因で、感情の起伏が激しく、『どうしよう』と頼ってきても、急に連絡がとれなくなることも。私もそういう経験があるからわかるんです、何もかも嫌になっちゃうような時が来るのは。でもそういう子が1人にならないためにはどうしたらいいんだろう」(アヤカさん)

Masterpieceの応募は、必ず電話で話して確認するなどして、不正がないように気を配りながら、できるだけシンプルにできるようになっている。

アヤカさんに、クラウドファンディングを通じて寄付してくれる人たちにどう思うか尋ねると、「すごく大事なことだからちょっと時間もらって良いですか」と言い、考えながら丁寧に答えてくれた。

「2020年4月、せっかく進学できたのに授業はオンライン、出身地からは離れた土地に進学したので、知り合いもいない。サークルも禁止で友達もできなくて、本当に孤独でした。そのときに支援してもらって、自分は1人じゃないんだと応援してくれてる人がいると思えて、本当にありがたかった。そのお金で勉強して、自分が支えてもらった分、いつか社会に還元したい」(アヤカさん)

次回は、Masterpiece代表の菊池氏が、養護施設出身の若者支援の活動を始めたきっかけ、そして世間に伝えたいことについて取り上げたい。

Masterpiece クラウドファンディングプロジェクト

https://readyfor.jp/projects/supportforyouth

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秋山訓子
朝日新聞編集委員。東京大学文学部卒業。ロンドン政治経済学院修士。朝日新聞入社後、政治部、経済部、AERA編集部などを経て現職。著書に『ゆっくりやさしく社会を変える NPOで輝く女たち』(講談社)、『女子プロレスラー小畑千代―闘う女の戦後史』(岩波書店)、『不思議の国会・政界用語ノート』(さくら舎)『女は「政治」に向かないの?』(講談社)など。

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