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MASHING UP SUMMIT 2021

脱炭素のカギはDXが握っている。平井大臣、藤井保文氏らが語る日本の課題

summit2021report

SDGsの一環として、脱炭素社会の実現が叫ばれて久しい。日本政府も2050年カーボンニュートラル実現に向けて、グリーン成長戦略を策定した。

脱炭素社会のように持続可能な社会を構築するためには、デジタル・テクノロジーの力をどのように活用していけばよいかが課題となる。

2021年3月18日・19日にオンラインで開催されたMASHING UP SUMMIT 2021 では、SDGsをいかにビジネスに実装し、事業をドライブさせていくべきか、多様な分野で活躍するスピーカー陣が未来のビジネスのあり方について議論を行った。

18日のセッションでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)にフォーカスをあて、「DXは脱炭素社会を実現できるのか?」のテーマで平井卓也デジタル改革担当大臣、『アフターデジタル』シリーズ著者でUXデザイン/DX推進支援を手掛けるビービット執行役員CCO 東アジア営業責任者の藤井保文氏をゲストに迎え、ジャーナリストの浜田敬子氏が司会進行役を務め、官民の視点から徹底討論した。

コロナで浮き彫りになった“デジタル敗戦国”日本

セッション風景

リモートで参加した平井卓也デジタル改革担当大臣(中央)、藤井保文氏(右)、浜田敬子氏(左)。

セッションはまず、日本におけるDXの現状と課題を探るところから始まった。

コロナ禍では、諸外国に比べて日本のデジタル化の遅れが深刻な状況であることが改めて認識された。これを「デジタル敗戦」と形容した平井卓也デジタル改革担当大臣は、まずコロナ禍での反省点を振り返った。

「2000年頃からデジタル関連のインフラに莫大な投資をし、(日本は世界的に比較しても)整っているほうだと思っていました。それなのに、なぜデジタルで国民を便利に、幸せにすることができなかったのか。COVID-19のマイナスインパクトを弱めることができなかったのか。不便なお役所仕事を、国民に寄り添う形に変えられなかったのか。反省ばかりだなと思います。そこから生じた危機感が、今回のデジタル庁を作ろうという決断に至った背景にあります」(平井大臣)

平井大臣

平井大臣は、今回のデジタル庁設立に関して、「Government as a Startup」つまりスタートアップ企業を立ち上げる速度で改革を行っていることを話した。

今後の目標と取組みについては、とにかく“スピード”を重視すると強調した平井大臣。従来型のお役所仕事は正確性を重視するあまり、迅速性と柔軟性そして利便性をも犠牲にしたため、今回のコロナ禍のような未曾有の危機に対応しきれないのだと語った。

デジタル庁は、2020年9月の菅政権発足時にその創設が重要政策として掲げられ、2021年9月の発足を目指すという、これまでの政府機関には見られなかったスピード感で準備が進んでいる。平井大臣は、自身が考えたという「Government as a Startup」とのスローガンを紹介し、スタートアップ企業を立ち上げる速度でスピーディーに改革を行う必要性を強調。そこで重要になるのが、DX活用のあり方だ。

脱炭素分野のDX活用は中国がすすんでいる

藤井保文氏

ビービット 藤井保文氏。「企業がCSRを掲げても、ユーザーにとって利便性が伴わないと実践できない」とUXによる体験設計の重要性を伝えた。

中国など諸外国のDXにも精通しているビービット執行役員CCO 兼 東アジア営業責任者の藤井保文氏は、“デジタル大国”中国で目の当たりにした最先端のサービスを紹介した。

一つ目は、次世代自動車メーカーの「NIO」。米電気自動車メーカー大手・テスラの競合であるNIOは、2020年12月に米ゼネラル・モーターズの時価総額を超えた。藤井氏によると、電気自動車銘柄だからという訳ではなく、ユーザーからみた体験価値の高さが非常に高いエンゲージメントを作っているのが理由だ。優れたUXが、中国における電気自動車の普及に一役買っているという。

「電気自動車の課題に、ガソリンスタンドと比べて充電スタンドの数が少なく、充電に時間がかかることが挙げられます。電気自動車が社会全体に普及するためには、ステーションがたくさんなければならない。ユーザーが増えてから充電スタンドを増やすのか、最初からインフラを整備してからユーザーを増やすのかが問題となります。NIOの場合は、『このサービスエリアに20分後に来て欲しい』とアプリ経由で連絡すると、 “NIO Power”という専用の青い充電カーが来て電気をデリバリーしてくれます」(藤井氏)

『NIO Power』はNIO以外のメーカーの電気自動車も利用可能であり、社会インフラとしても浸透。このことが、社会全体の脱炭素化をさらに加速させている。

さらに、ガソリンスタンドのようなステーションも充実。車庫のような充電ステーションに車を入れると、車の底面を外して新しいフル充電された電池に替えてくれるサービスであり、所要時間は約3分。従来のガソリンスタンドとほぼ変わらず、電気自動車ならではの課題も解決済みだ。

ジャーナリストとして自動車業界の取材を続けてきた司会の浜田氏も、潮流の変化を実感していたと語る。

「(取材の中で)テスラをトヨタと比較して話すと、“浜田さん、一緒の次元で語らないでください”とよく専門家に言われます。先日シリコンバレーの方に取材をしたら、テスラの顧客はソーラーパネルを自宅の屋根に敷いて、電気自動車の充電も自宅で太陽光を使って行っていると話していた。つまりテスラは、もはや自動車メーカーではなく、エネルギー企業。先述のNIOもしかりで、自動車という次元ではなく、それにより社会課題をどう解決できるのかという、もっと大きな枠組みで設計をしていると思いました」(浜田氏)

さらに藤井氏は、もう一つの事例として、中国電子決済サービス・アリペイの機能「アント・フォレスト」を紹介した。徒歩・自転車での移動、割り箸を断るなど脱炭素的な行動を取ることでポイントが貯まると、アリペイに植林をしてもらえる。「ゲーミフィケーションを使って、利用頻度を高めつつ、同時にCSR的な効果を狙っている。やはり利便性がないと実践できない。それなりの体験設計、UXづくりが重要」と藤井氏。

DX、脱炭素社会の前に立ちはだかる問題点とは?

浜田敬子氏

浜田敬子氏はテスラやNIOを例にあげ、「もはや自動車という次元ではなく、社会課題をどう解決できるのかの枠組みで設計されている」と指摘。

日本の企業が抱える問題点とは。平井大臣は、固定観念にとらわれない柔軟な発想の重要性を強調し、若い世代への速やかな権限委譲を繰り返し訴えた。

「伝統的な日本企業ならではの足枷のようなものがある。本業に拘りすぎており、コア・コンピタンス(=ほかに真似できない能力)に対する発想力がない。新しいビジネスモデルを求める経営判断ができる人があまりいない。先ほどのNIOにしてもテスラにしても、自動車に対する考え方が全然違うわけです。まったく固定観念にとらわれていない、新しいプラットフォームになっていこうと」(平井大臣)

藤井氏も概ね同意しながら、硬直化した縦割り組織への警鐘を鳴らした。藤井氏がとりわけ重視するのは、企業全体で同じ世界観を共有することだ。

「ジェフ・ベゾスやイーロン・マスクは(自社ビジネスを)ECや自動車だと思っていない。事業をEC・自動車で区切るのは、縦割りの考え方。“ここは自動車事業部、ここは日用品事業部”と分けて、部署ごとに違うことを追っているのに売上は成立している、というのは良くない。ジェフ・ベゾスやイーロン・マスクらは、いわゆるムーンショット的な大きなものを掲げていて、そのために全てが一本に繋がっている。世界観の実現のために、横串が通されている」(藤井氏)

脱炭素社会という地球規模の壮大な目標を社会全体で共有して実現するためには、日々の生活の中で“気軽に・地道に”実践できるような国民目線・ユーザー目線の制度設計が重要であることを痛感。官民の視点からDXの現状と課題を理解することができ、非常に実りの多いセッションだった。

MASHING UP

MASHING UP SUMMIT 2021

DXは脱炭素社会を実現できるのか?
平井 卓也(デジタル改革担当大臣)、藤井 保文(株式会社ビービット 執行役員CCO 兼 東アジア営業責任者)、浜田 敬子(フリーランスジャーナリスト)

このトピックとかかわりのあるSDGsゴールは?

SDGs

撮影/中山実華

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吉野潤子
ライター・英語翻訳者。社内資料やニュースなどの翻訳者を経て、最近はWebライターとしても活動中。歴史、読書が好きです。

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