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MASHING UP SUMMIT 2021

コロナ禍で多くの女性が貧困や暴力の犠牲に。ジェンダー格差是正に向け必要なアクションとは?

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コロナ禍で多くの女性が窮地に立たされている。なぜ、こうした非常時に女性が影響を受けやすいのか。

2021年03月18日・19日開催のオンラインカンファレンス「MASHING UP SUMMIT 2021」では、「新型コロナウィルスはジェンダーギャップにどのような影響を与えたか」と題して、トークセッションを展開。

国連開発計画(UNDP)でジェンダー平等と女性のエンパワメントの推進を担当し、内閣府による「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」にも参画する大崎麻子氏、子どもたちの支援をおこなうNPO法人3keys代表理事の森山誉恵氏が登壇。フリーランス女性と企業とのマッチングや、離職した女性の再就職支援に取り組むWaris共同代表の田中美和氏がモデレーターを務め、コロナ禍で女性が置かれている現状や、目指すべき未来について語った。

コロナ禍で世界中の女性たちにしわ寄せが

新型コロナウィルスはジェンダーギャップにどのような影響を与えたか

MASHING UP SUMMIT 2021にてセッション「新型コロナウィルスはジェンダーギャップにどのような影響を与えたか」が展開された。

まず冒頭から、「コロナ禍では女性の貧困や暴力の問題が明らかであり、これを放置すればジェンダーギャップはさらに開くだろうと世界的に予測されています」と、大崎氏。

「2020年4月9日に、国連のグテーレス事務総長が『女性と女の子をコロナ対応の中核に据えるべきである』と各国政府に提言しました。あわせて、新型コロナウイルスに関するすべての意志決定の場に女性が参画することコロナによる影響に対処するすべての枠組みへのジェンダー視点の主流化などを、対策として提言したのです」(大崎氏)

今回のコロナ禍で女性の状況が著しく悪化しているのは、「経済、健康、無償ケア労働、暴力」の4つの領域だ。具体的には、最も打撃を受けた飲食業などの対面サービス業の多くを、女性の非正規雇用者が担っていたことにより、女性の貧困化が進んだこと。休校やテレワークにより家事や育児の負担が増大したこと。強いストレス下でパートナーが自宅にいる時間が増え、家庭内暴力の犠牲となる人が増えたことなどである。そして、こうした状況を背景に、特に専業主婦や年金受給者など無業者、学生など若年層の女性の自殺者が増えている

「頼る」ことが苦手な日本人特有の問題も

大崎麻子氏

Gender Action Platform 理事・大崎麻子氏。「なぜ緊急時に女性に影響が出るのかを精査し、ポストコロナ社会の制度に、ジェンダー主流化の視点を組み込んでいくことが必要。そして今後の災害時に、女性にしわ寄せがよらないようにすべく、中長期的に構造改革するための議論が、今グローバルでおこなわれています」と語った。

女性の自殺者の増大は、実は日本特有の問題だと大崎氏。これに対し、森山氏は次のように指摘する。

「もともと生活保護などの支援を受けることを恥だと思い、世間の目が厳しい日本の文化も影響しているのではないでしょうか。3keysは頼れる親のいない子どもたちの支援をしていますが、コロナ禍では家にいる時間が長くなった父親から、暴力や性的虐待を受けているという声が多く寄せられました。それでも、子どもの虐待の加害者で最も多いのは実母です。それだけでも、育児における負担がいかに母親に偏っているかということを物語っていると思います」(森山氏)

未来のために私たちができること

森山誉恵氏

NPO法人3keys代表理事の森山誉恵氏。生まれ育った環境によらず、すべての子どもたちの安心・安全な育ちや権利が保障されるためのセーフティネットを増やすべく活動する立場から、今の社会に必要な視点を語った。

女性たちが直面している現状を知り、支援することはもちろん重要だ。しかし、その場しのぎの支援では、また何らかの災害が起きたときに、再び女性たちその背後にいる子どもたちが苦境に立たされてしまう。負の連鎖を断ち切るために、私たちは今、何をするべきなのか。

地域や親戚などとの社会的つながりが薄れた今、育児のすべてが家庭と学校に集中しています。だから親御さんも、自立するために厳しくせざるをえなかったり、色々な役割を同時に求められ、結果、子どもたちにとって家が安らげる場所でなくなっているということも多い。

私たちは10代の子どもたちを支援するサイトも運営しているのですが、虐待までいかなくても、多くの子どもたちが、家庭に居場所がないと感じている現状を感じています。これからお子さんが10代を迎えるご家庭では、色々な役割の中でも、家庭を安心できる場にすることを優先し、それ以外の役割はなるべく外部に頼っていただきたいです」(森山氏)

子どもを守り、かつエンパワメントするためには、やはり教育も不可欠だ。

「コロナ禍では、サービス業での労働需要が減ることによる若年女性の貧困化も進行しています。一方で、デジタル産業は急成長していますが、そうした仕事には男性が集中しています。女性のエンパワメントのためには、従来型の職業教育ではない、女性の能力開発も重要だと思います。そうしなければ、非婚などが進む中、今後さらに女性の貧困化が進む可能性があります」(大崎氏)

女性のエンパワメントで社会を強化する

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株式会社Waris共同代表/一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 理事の田中美和氏。女性の就業支援やエンパワメントに関する事業を行う田中氏がモデレーターを務めた。

そして、「今、日本はかつての総中流社会から、階層化した社会に移行しようとしています。しかし、それはサステナブルといえるでしょうか。中長期的に女性や子どもが安心して生活できる社会にするためには、女性の政治参加が不可欠です」と大崎氏。

森山氏は高齢化社会への補償で手一杯で、子どもの貧困問題まで手が回っていない日本の現状を指摘した上で、「ぜひ自分ができることを、すぐに始めてほしい」と、語った。

最後に田中氏が、「女性や子どもの未来のために、誰かがやってくれるのではなく、できることを一人ひとりがやっていく。事業の中でも意識して取り組んでいきたい」と締めくくった。

コロナはこれまで社会が抱えていた問題を顕在化させたが、間違いなくジェンダー問題はその大きなトピックの一つ。社会を変えるためには、現状を知ること、声を上げていくことが大切だ。これは女性だけの問題でないことを改めて意識し、社会全体で前進していきたい。

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MASHING UP SUMMIT 2021

新型コロナウィルスはジェンダーギャップにどのような影響を与えたか
大崎 麻子(Gender Action Platform 理事)、森山 誉恵(認定NPO法人3keys 代表理事)、田中 美和(株式会社Waris共同代表/一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 理事)

このトピックとかかわりのあるSDGsゴールは?

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写真/中山実華

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中島理恵
ライター。神戸大学国際文化学部卒業。イギリス留学中にアフリカの貧困問題についての報道記事に感銘を受け、ライターの道を目指す。出版社勤務を経て独立し、ライフスタイル、ビジネス、環境、国際問題など幅広いジャンルで執筆、編集を手がける。

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