1. Home
  2. Social good
  3. 訴訟に込められた人々の思いや物語を届けたい。公共訴訟支援「CALL4」ができた理由

ザ・サークル/社会、経済、暮らしの環。

訴訟に込められた人々の思いや物語を届けたい。公共訴訟支援「CALL4」ができた理由

CALL4

CALL4(コールフォー)代表、谷口太規氏。

身の回りの生活に何か不便、不都合、不自由があって、それが社会の制度や政策に関係があることだったとする。たとえば夫婦が同じ姓を名乗らなければいけない、とか、同性の相手が好きで結婚したいのに、それがかなわない。そんな時どうするか。その制度がおかしい、変えたい。だから裁判を起こして変えよう……とアクションをおこす人は本当に少数だろう。

だいたい、裁判というシステムがあるのは知っているけれど、裁判がどういうプロセスをふんでいくのかもわからない。費用だってどのくらいかかるかわからない。時間がどのくらいかかるのかもわからない。わからないことだらけだ。

これはおかしい。裁判を身近にしよう。みんながもっと裁判に関心を持てば、裁判でもっともっと合理的な判決を下されるようになるはず。

「CALL4(コールフォー)」はそんな思いから2019年に立ち上がった。社会問題の解決をめざした訴訟を支援するウェブプラットフォームだ。弁護士の谷口太規氏が代表。現在、NPO法人化の準備を進めている。

社会問題の解決をめざした訴訟とは?

たとえばハンセン病の元患者は、病気の治療法が確立された後もずっと隔離されていた。あまりに理不尽だと国による謝罪と補償を求めて訴えを起こした。その結果、元患者側が勝訴した。国は謝罪し、経済的補償をした。

あるいは、海外に住む日本人は長い間、日本国内で行われる選挙の投票権がなかった。同じ日本国民ならば、国内にいるときと同じように投票できるべきではないか。そこで、すべての投票権を求めて、国を相手取って訴訟を起こした人たちがいた。勝訴し、今では駐在や留学で海外にいてもすべての選挙の投票ができるようになった。

CALLl4が対象とするのは、こんなふうに国や自治体を相手取った訴訟だ。これを「公共訴訟」と呼んでいる。

何を支援するかといえば、まず、裁判がどういうふうに行われているのかが誰でもわかるよう、裁判の過程で使われる文書はすべて公開する。原告側が使うもの、被告側が使うもの。これらの書面をすべて公開している。

これまで私たちはこういった書面について、報道を通じてしか知ることができなかった(ちなみに報道メディアは、裁判所などから文書を入手してエッセンスを報じる)。

また、訴訟をするには、弁護士費用や書類の準備など、なんだかんだとコストがかかる。その費用もクラウドファンディングを行って資金を募り、支援のひとつとして経済的サポートをする。

訴訟の背景には必ずストーリーが存在する

CALL4ではそうやって、21件の訴訟を支援している。具体的な事例を見てみよう。

2020年3月、同姓どうしの婚姻が認められないのは憲法の「婚姻の自由」に反するとして、国に損害賠償を求めた訴訟の第一審判決があった。札幌地裁の判決は、同性婚を認めていない民法の規定が憲法14条の「法の下の平等」に反すると認めた。

CALL4は、この案件も支援していた。北海道内の同性カップル3組が訴訟を起こしたのだが、クラファンでは200万円を目標に資金を募集した。「訴訟資料」というところをみると、第1回、第2回、第3回……とそれぞれの裁判で使われる原告、被告が準備した書面が全てアップされている。この書面をもとに裁判では、弁護側や被告側の尋問が行われる。これらを読めば、原告や被告の主張、それぞれへの反論なども追っていくことができる。

さらに、訴訟を起こした人たち(原告)がどういう人たちなのか、どういう人生を送ってきたのか、なぜこの訴訟を起こすことになったのかについて記した「ストーリー」も紹介されている。これは、専門用語が並び、かなり堅い訴訟用の書類とは違って、人間にぐっと焦点をあてた柔らかい、読み応えのある文章だ。

支援ケースの中には、すでに訴訟が終了した事例もある。それなのに、今さら支援? それは、裁判関係の文書が国や自治体によって破棄されるケースがあるからだ。後世に訴訟を伝え、検証可能にしておくためにも文書を集め、保存しておく必要があるとCALL4では考えている。

勝った、負けたでは伝わらないものは多い

call4_4

CALL4の創設メンバー。

なぜこの活動を始めたのか、代表の谷口太規氏に聞いた。

谷口氏は1978年生まれの弁護士だ。

「そもそも、司法、裁判がもっと多くの人に使われるように身近にしたい、というところから始まったんです。私たちは裁判をマスメディアを通じてしか知ることができなかった。多くの場合、提訴した、という始まりとこういう判決があった、という終わりだけ。勝った負けた、だけしか報じられませんよね。でも、社会の重要なことを、科学と論理と合理性に基づいて広く議論を起こすべきではと思ったんです。そのためには、できるだけ裁判を透明化して、みんなが情報を得やすくする必要がある。だからCALL4では、法廷で使われる全ての書類を公開します」

CALL4の創設メンバーは、ほかにもマーケッターやイベントの専門家、編集者やライターなどが集っている。ウェブサイトはとてもおしゃれでクール、かっこよくて見やすい。

「デザインやユーザーインターフェースは、とても意識していますね。裁判の持つなんか堅くて暗いイメージを変えたい。自分ごととして感じてほしいんです。ストーリーに力を入れているのもそのためです。理念とか、べき論だけではなくて、私たち一人ひとりの生活と地続きのところに、訴訟を起こしている彼らがいるんです。これまで伝わっていなかった彼らの物語を知ってほしい。共感が社会を変えていくと思っています」

CALL4の名前の由来は、「〜を呼び起こす」「〜を必要とする」という意味の“call for”という英語から。立法、行政、司法は三権といわれるが、「社会を形作る4つめの力として市民の力があるはず」と考えるからだ。4つ目の力を呼び起こす、という意味で、”four”の代わりに、”4”という数字にした。

扱うのは、国や自治体が相手の公共訴訟のみだ。国や自治体ならば書面も公開できるが、民間が相手だと公開するのが難しい場合もあるからだ。弁護を提供することはせず、CALL4に相談するのは弁護士がついてから、という仕組みだ。

クラファンの手数料はとらず、メンバーは今のところプロボノで活動中。今後は、CALL4自体の活動を持続的にするために、寄付も広く募っていきたいという。

次回は、谷口氏がなぜこの活動を始めたいと思ったのかをさらに詳しくお伝えする。

写真/神宮巨樹

CALL4https://www.call4.jp/

このトピックとかかわりのあるSDGsゴールは?

SDGs

  • facebook
  • twitter
  • hatena
秋山訓子
朝日新聞編集委員。東京大学文学部卒業。ロンドン政治経済学院修士。朝日新聞入社後、政治部、経済部、AERA編集部などを経て現職。著書に『ゆっくりやさしく社会を変える NPOで輝く女たち』(講談社)、『女子プロレスラー小畑千代―闘う女の戦後史』(岩波書店)、『不思議の国会・政界用語ノート』(さくら舎)『女は「政治」に向かないの?』(講談社)など。

    ザ・サークル/社会、経済、暮らしの環。

    おすすめ

    powered byCXENSE

    メールマガジンにご登録いただくと、

    MASHING UPとGlossy Japanの新着記事や最新のイベント情報をお送りします。

    また、登録者限定の情報やイベントや座談会などの先行予約のチャンスも。

    MASHING UPとGlossy Japanの最新情報をご希望の方はぜひご登録ください。