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MASHING UP SUMMIT 2021

「正しい」より「楽しい」環境活動を。プラネタリーグッドな視点が社会を変える

プラネタリーグッド

地球環境と人間社会にポジティブであり続けられるビジネスとは、どのようなものだろう。 2021年3月19日のオンラインカンファレンス「MASHING UP SUMMIT 2021」では、「循環型社会とプラネタリーグッドなアクション」と題し、国内サーキュラーエコノミー界のリーダーを招いたトークセッションを開催。

社会へポジティブなインパクトをあたえるサービスや製品、社会貢献度の高い活動を支援する「ソーシャルグッド」の潮流は大きな盛り上がりを見せている。しかし、2030年までにSDGsゴールを達成するためには、そこからさらに一歩踏み込んだ視点が必要だ。

次世代のビジネスのあるべき姿を議論すべく、半永久的に資源を循環させるマテリアルサーキュレーションの仕組みを提供する、日本環境設計 取締役会長の岩元美智彦氏と、「生産者の顔が見えるエネルギーマーケット」を立ち上げ、再生可能エネルギーを中心とした電力小売り事業を展開する、みんな電力代表取締役の大石英司氏が登壇。そして“プラネタリーグッド”を提唱し、地球にも人間社会にも良い事業創出を手がけるインキュベーター/キャピタリストであるPlanetary代表の菊池紳氏がモデレーターを務め、今、企業と消費者に求められるマインドセットについて議論した。

10~30年後の未来を担う次世代リーダーを育成

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岩元美智彦氏(右)、菊池紳氏(左)と、リモートにより登壇した大石英司氏(中央)。

まず「プラネタリーグッド」とは、ソーシャルグッドの枠を超え、地球(生物、資源、生態系、環境)にも、人間社会(生活、事業、文化)にも良いことを両立させる視点を指す、Planetary代表の菊池氏が考案した造語だ。

Planetaryでは、10~30年後の主役を担う次世代リーダーを輩出し、地域にも社会にも良いプラネタリーグッドなアクションを推進する「プラネタリーグッド・イニシアチブ」と、生物/生命遺伝資源や、農畜水産/次世代食料、脱炭素/代替エネルギーなどに関する成長企業を創出するインパクト・ファンド「プラネタリーベンチャーズ」の準備を進めている。

本セッションでは、菊池氏の進行のもと、国内でプラネタリーグッドな事業を運営するパイオニア、岩元氏と大石氏のビジョンが語られた。

モノからモノへ。化学の力で地上資源を半永久的に循環させる

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「環境問題は、専門家による議論ももちろん大事だが、消費者がどう楽しみながら参加できるかというのが重要」と岩元氏。

日本環境設計では、2007年の創業当初から「モノからモノへ」、使い終えたものを資源として循環させる、マテリアルサーキュレーションを続けている。

リサイクル技術には、ケミカルリサイクル(化学的再生法)とメカニカルリサイクル(物理的再生法)の2種類があり、同社が採用するのは、原料に化学的な処理を施すことで別の化学物質に転換する手法であるケミカルリサイクル。メカニカルリサイクルと比較すると、リサイクル対象物の異物や汚れの除去といった点において優れているのが特長で、この技術により資源を劣化させることなく半永久的にリサイクルすることができる。

さらに同社は、誰もが気軽にリサイクルに貢献できるよう、全国の小売企業に働きかけ、購入した店で資源をリサイクルに出せる仕組みを構築した

「この技術と仕組みによって、石油や石炭といった地下資源をこれまでのように用いることなく、すでに地上にある資源を循環させてモノをつくることができます」(岩元氏)

電気にも「産地」がある

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「たとえば、みんな電力の再生可能エネルギーを使用しているTBSラジオは、番組内で『今日は、青森県横浜町からの電気でお送りいたします』と、電気の産地をアナウンスする。他にも、好きなアーティストが作った電力を購入できるなど、電力を通した消費者参加型のプログラムの発案に、今後も取り組んでいきたい」と、話す大石氏。

「皆さん意識していないと思いますが、電気にも産地があります」と、大石氏。みんな電力では、FIT電力と再生可能エネルギーにこだわり、野菜の生産者が情報を開示しているように、消費者が電気の産地を選ぶことで環境に貢献できる、新しいエネルギーマーケットを提供している

「たとえば畑で農作物と太陽光を作る地方の発電所の電気を購入してサポートしたり、津波の被害にあった土地に建てられた発電所で作られた電気を選べば、被災地を応援したりすることもできます」(大石氏)

2011年の創業当初と比べ、社会は明らかに変わったという。

「昔は電気代を安くしてほしいという要望が中心でしたが、今は外資系企業を中心に、多少高くてもトレーサブルなエネルギーを供給してほしいというニーズが高まっています。クリーンな再生可能エネルギーを使用していない企業とは取引しない方針を打ち出す大手企業も増えてきました」(大石氏)

消費者がきちんと理解し、選ぶ時代へ

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環境問題の解決について、簡単にできるところからコミットすること、そしてそれが数十年続くように、将来世代の教育にも注力することのどちらもが大切だと感じる、と話す菊池氏。

電力の切り替えに必要な手続きはわずか5分。これを大石氏は「5分でできるSDGs」と表現する。大石氏によれば、約100万人が家庭での電力を再生可能エネルギーに替えると、車メーカー1社分の排出量に相当するCO2が削減できるという。

「ペットボトルについては、日本は90%以上を回収できています。しかし、それがリサイクルされて何になっているかが見えていません。これからはただリサイクルするだけでなく、その過程や結果も重視される時代です」(岩元氏)

ESGやSDGsといったトレンドに流されるだけでなく、一人ひとりの消費者がサービスや商品の本質を自分で見極めて判断することが大切」と、菊池氏は指摘する。

モノに新たな価値を吹き込む、新次元のリサイクル

環境問題というと難しい話題が多く、岩元氏によると、興味は持っていてもアクションを起こせない人が95%を占めるのだという。しかし、日本環境設計とみんな電力のビジネスから見えてきたのは、消費者を巻き込むポジティブな力だ。

たとえば、日本環境設計では、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のタイムマシンとして有名になったデロリアンをゴミの力で動かすプロジェクトを企画し、多くの参加者を集めた。また、歴史的人物や著名人が着用していた服の一部をリサイクルすることで、そのDNAを持つ服を作るといった、これまでのリサイクルの概念を超え、人を魅了するビジョンを描いている。 「『正しい』を『楽しい』に変えることで、興味のない人を循環というアクションの入口に連れてくることができます」と、岩元氏は力強く語る。

ロジカルなだけでなく、ワクワクして参加したくなるデザインが、プラネタリーグッドなビジネスを構築するうえでは大切ですね」と菊池氏。人を巻き込み、ポジティブな循環を作りながら持続的に発展していくビジネスが、プラネタリーグッドな社会を創出するためのカギなのではないだろうか。

MASHING UP SUMMIT 2021

循環型社会とプラネタリーグッドなアクション
岩元 美智彦(日本環境設計株式会社 取締役会長)、大石 英司(みんな電力株式会社 代表取締役)、菊池 紳(いきものCo. / Planetary 代表)

撮影/中山実華

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中島理恵
ライター。神戸大学国際文化学部卒業。イギリス留学中にアフリカの貧困問題についての報道記事に感銘を受け、ライターの道を目指す。出版社勤務を経て独立し、ライフスタイル、ビジネス、環境、国際問題など幅広いジャンルで執筆、編集を手がける。

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