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- メルカリCEOが始めた新たな挑戦。「山田進太郎D&I財団」が女子学生をサポート
外国籍エンジニアの積極採用や、無意識バイアスワークショップの実施など、D&Iへの取り組みを積極的に行なっているメルカリ。このたびメルカリを率いるCEOの山田進太郎さんは、メルカリとは別に非営利で活動する「山田進太郎D&I財団」を設立した。そこで女子学生がSTEM領域(※)に進むことを支援するための奨学金事業を行うという。
今なぜSTEM分野に若い能力が必要なのか。そして山田さんの狙いとは。2021年8月4日の記者発表会の内容を追った。
※ STEM(ステム)とは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の頭文字をとった言葉でいわゆる「理系」分野を指す。
STEM分野への進学を敬遠しがちなのは、なぜ?
日本の女子学生は、必ずしも数学や理科の成績が男性に比べて低いわけではないのに、STEM分野への進学を敬遠しがちであるという。そもそも、なぜ理系を選ぶ女子学生が少ないのだろうか。
「まず、親や親戚、先生のような周囲からの反対がある。女子なら文系を選ぶのが普通、女性には向いていないというような考えが、根強く残っています。昔に比べれば、インターネットなどで様々なSTEM分野で活躍する女性が探しやすくなったが、社会でのロールモデルが少なく、まだリアリティを持つことが難しいのが現状です。理科系科目の先生にも男性教師が圧倒的に多いのも影響しています」
このように、STEM分野に関するステレオタイプが根強く残るなか、日本のSTEM分野の女性の割合はOECD諸国においても最低のポジションにある(OECD, Education at a Glance 2017 2018年04月02日/JRIレビュー Vol.5, No.56 池本美香「女性の活躍推進に向けた高等教育の課題」より )。これを踏まえて山田さんは、「もっと多くの女性がSTEMに進んだ方がいいと考えている」と話す。
STEMを現実的な選択肢に。奨学金の支給をスタート
財団設立の目的は、D&Iの推進を通じて、性別、年齢、人種、宗教などに関わらず、誰もが自身の能力を発揮し、活躍できる社会の実現へ寄与することだ。D&I推進といっても様々な課題があるうち、まずは日本のジェンダーギャップ改善に取り組む。
第一弾として、高校入学時点でSTEMを選択する女子学生にむけて奨学金を開始するという。助成金額は、国公立で年額25万円、私立で年額50万円。日本国内の高等学校理数科、高等専門学校、 スーパーサイエンスハイスクールを2022年4月に受験し、2022年4月に進学予定の約100名(初年度)の女子学生へ奨学金を支給するというものだ。
山田さんは、「無理に、誰にでもSTEMを選んでほしいというわけではない」と語る。そして、「興味があっても諦めてしまう人たちがいる。より多くの人たちに、STEMをより現実的な選択肢として考えていただきたい。そのために、STEMを選択する女子高校生向けの、返済不要の奨学金を提供して、お金の問題を解決したい」と思いを熱く語った。
ジェンダーギャップ解消のための3つの戦術
現在日本のSTEM分野で活躍する女性はOECD諸国と比較してもわずか18%だが、山田進太郎D&I財団は、2035年度の大学入学者のうちSTEMを目指す女性比率を、OECD平均である28%まで引き上げることを目標としている。そのため、3つの戦術を掲げている。
1. オンラインを活用する
まずはネットベンチャーの経営経験を生かした、応募、選考、支給などのプロセスのオンライン化。これにより、劇的な効率化を目指し、常時1,000名以上への支給を目指す。そしてソーシャルメディアや、オンラインコミュニティを活用し、2年目以降はクラウドファンディングなど、調達手段の多様化も検討している。
2. 選考は抽選で行う
目標達成のためには、STEMを目指す女性を一学年あたり約11,000人増やす必要がある。通常の奨学金は、より優れた方へ多くの金額を提供することが多い。一方でこの奨学金で重要なことは、より多くの方にSTEMに目を向けてもらうこと。より多くの学生が興味を持ち、迷っていても気軽に応募できるよう、選考は抽選で行い、成績や世帯収入による上限などもない。一人当たりの支給金額は抑えてより多くの学生に支給する工夫を行っている。
3. 社会的ムーブメントをつくる
よりリアリティを持ってSTEMを選択肢の一つに入れてもらうために、山田進太郎D&I財団ではSTEM分野で活躍する女性からのメッセージをHPに掲載したり、対象学生向けのオンラインイベントを実施したり、政府・企業・NPOなどとの連携を検討している。
山田さんは、より多くの女性がSTEM分野で活躍して欲しい理由を、次のように語った。
「これからも科学技術はどんどん発達していくので、ますますSTEMの重要性が高まっていく。そのような重要性の高まりによって、給料も高くなっている。また、昨今のコロナで急激に進んだリモートワーク、産休育休なども取りやすくなり、柔軟な働き方が可能な職種が増えてきています。さらに今回、さまざまな活躍する女性にヒアリングをするなかで、STEM分野では成果が測りやすいので評価がされやすいという声もありました」
また、今回メルカリとは別に財団を設立して非営利で活動する理由を、山田さんはこう話す。
「私自身が日本社会でマジョリティとして何不自由なく育ってきましたが、より多様な社員、関係者の方々と多様なお客様にプロダクトを提供していく過程で、世界的に見ると、十分な教育を受けられない方もいれば、日本でも女性や外国人など公平ではない立場や状況にあることもわかってきました。世の中には、営利で解決できないことも多い。非営利活動をするためにはお金がかかりますが、自分にはメルカリ株式など、帳簿上の資産がある。これらは社会に還元すべきだと考えており、これから徐々に活動を広げながら、非営利活動にお金を投じていきたいと考えてます」
山田進太郎D&I財団の取り組みは、今後第二弾、第三弾と続き、社会のD&Iを進めるために様々なプロジェクトを継続的に行うことを予定しているのだそう。奨学金によってサポートと勇気を得た学生達が、さらに次の世代のロールモデルとなり、性別に関わらず誰もが自分の志す分野で活躍できるよう、応援したい。興味がある人は、ぜひ挑戦してみてほしい。
山田進太郎D&I財団 STEM(理系)女子高校生奨学金
[ 山田進太郎D&I財団 ]画像提供:山田進太郎D&I財団
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