1. Home
  2. Equality
  3. 「女性への投資」というムーブメントを。クロエキャピタルが目指すもの

ゼブラとジェンダーレンズ

「女性への投資」というムーブメントを。クロエキャピタルが目指すもの

zebra_genderlens

「女性に投資をするVC(ベンチャーキャピタル)」。これが、クロエキャピタル(Chloe Capital)のウェブサイトを開くと一番大きく表示されるキャッチコピーだ。ニューヨーク州イサカを本拠地として、女性起業家に投資をする目的で2017年に立ち上げられたVCである。

前回アランテキャピタル(Alante Capital)の記事を読んで頂いた方は、既に違いに気が付いたかもしれない。アランテは、アパレル業界のサステナブルなサプライチェーン実現をテーマとしており、女性起業家への投資比率を社内ルールでは設けつつ、それを前面に出してはいなかった。しかし、クロエは女性への投資自体がVC立ち上げ時の目的であり、積極的にそれを打ち出している。

どちらもジェンダーレンズ投資をしているVCだが、その見え方はかなり異なる。そこで今回はクロエキャピタルについて紹介し、ジェンダーレンズ投資家の幅広さを探ってみたいと思う。

女性への投資を前面に打ち出すクロエキャピタル

クロエキャピタルの設立のきっかけは、共同創業者のキャスリン・カルティニ(Kathryn Cartini、ベンチャーキャピタリスト)とエリサ・ミラーアウト(Elisa Miller-Out、テック業界の連続起業家)が起業家イベントで度々出会う中で、その場に自分たち以外の女性がほとんどいないことに疑問を抱いたことだった。

その疑問を投資家にぶつけたときの反応は、レベルの高い女性の起業家がそもそも少ないから、質の良いディールフローが無いからというものだったと言う。キャスリン、エリサと共にクロエを立ち上げ、COOを務めるエリカ・オブライアン(Erica O'Brian)はこう語る。

この認識自体が、暗黙のバイアスに囚われたもの。ただし、子育てや家族のケア等で女性には、夕方以降に行われるネットワークイベントや出張に参加しづらいバリアが確かにある。このバイアスやバリアを超えられる環境を女性起業家に提供したいと考えて、クロエを立ち上げた」(エリカ・オブライアン)

その設立の経緯から、クロエの投資先選定ルールは「女性がマネジメントチームに1人以上いて、更にその人が20%以上の株を持っていること」と明確だ。保有株式の下限を決めることで、実際に意思決定権があるかをスクリーニングしている。

zebra_genderlens_2

クロエキャピタルCOOのエリカ・オブライアン。

投資だけでなく、ムーブメントをつくりたい

またクロエはその設立の経緯から、投資をするだけではなく、女性起業家投資のムーブメントをつくることを目標に置いている。その一環として、「Invest In Women Tour」と銘打ち、4年間で米国の10都市以上を回り、女性起業家発掘のためのイベントを開催してきた。

ユニークなのは、大学や自治体等のパートナーと組んでいること。例えば直近では、2021年10月にニューヨーク州北部で地元のコーネル大学と共に、コーネル大学の選んだテーマ「Diversity and Climate Tech」に沿ってイベントを開催予定だ。地元の団体とパートナーシップを結ぶことで、アプローチできる範囲が拡がり、投資候補先を増やすことができるし、その土地に女性起業家投資の機運が残りやすくもなるという。

各地で実施してきたこうしたイベントでは、応募者の中から5人をファイナリストとして選び、最終ピッチの結果、投資是非を判断する。たとえクロエが投資を見送っても、ゲストとして招いている他の投資家が出資を表明することもあるし、何よりもその場で地元の投資家とのネットワークを拡げ、デューデリジェンス(※)を受けることが、女性起業家にとって次につながる大きな財産になるのだ。イベントで発掘された起業家も含め、クロエの投資先は現在11社。立ち上げ時はSPV(特別目的事業体)からはじめたが、現在は機関投資家からの出資も受け2500万ドルの1号ファンド調達中である。

※デューデリジェンス……投資を行う際に、投資対象の価値やリスクを調査すること。

MeToo以降、プレイヤーは増えている

クロエの立上げ経緯や事業モデルについて理解したところで、エリカに少し変化球な質問をぶつけてみた。「起業家の成功率はわずか7%と言われ、ただでさえ可能性のある起業家を見つけるのは難しい中で、投資先を女性に絞ることは経済的なデメリットになるのではないか?」

実はこれ、私自身がジェンダーレンズ投資について調べていると言うと、かなりの頻度で受けてきた質問でもあり、エリカがどう答えるのか知りたかった。彼女の回答は明確だった。

「そうは思わない。女性経営者による良いディールフローはあるのに、これまでは単にバイアスに依ってそれが見過ごされていた。クロエはそこに絞って投資するので、むしろ成功チャンスが上がると思っている。もちろん投資先のマネジメントに男性がいても良くて、ポイントは、意思決定層に女性を含むダイバーシティが担保されていること。そうした会社では、意思決定層に男性しかいない会社と比べて多様な意見が交わされるので、当然成功率が高いと考えている」(エリカ・オブライアン)

力強いコメントの一方、エリカは「この考えを証明し、ムーブメントを大きくするためには、トラックレコードを打ち立てなければならない」とも言った。クロエキャピタルは、女性への投資を前面に出して活動をしている幾つかのVCの内の一つである。

2017年のMe Too運動以降、ジェンダーレンズ投資にも更に注目が集まり、プレイヤーが増えている。ただしこれを本当の意味で定着させるには、クロエのような会社が経済的に成功することで、ジェンダーレンズ投資家以外にも、女性経営者への投資が拡がっていく必要がある。

反対に、ジェンダーレンズ投資を前面に出している企業が経済的に失敗してしまうと、盛り上がりが失速してしまう可能性もあるのだ。その意味では、クロエキャピタルの果たす役割も大きく、今後の動きを注目していきたい企業の一つであると言える。

次回は少し視点を変えて、投資を受ける側から見たジェンダーレンズ投資の世界を紹介したい。

このトピックとかかわりのあるSDGsゴールは?

sdgs

Chloe Capital ]画像提供:Chloe Capital

  • facebook
  • twitter
  • hatena
小口絢子
総合商社にて鉄鋼ビジネスに従事。東京本社、ベトナムの鉄板加工工場での勤務等を経て、現在ハーバードビジネススクール在学中。米国のジェンダーギャップ解消に向けた取組みをリサーチしながら、日本に持ち帰れること、課題に対する自分の関わり方について日々考えを巡らせている

    ゼブラとジェンダーレンズ

    おすすめ

    powered byCXENSE

    メールマガジンにご登録いただくと、

    MASHING UPとGlossy Japanの新着記事や最新のイベント情報をお送りします。

    また、登録者限定の情報やイベントや座談会などの先行予約のチャンスも。

    MASHING UPとGlossy Japanの最新情報をご希望の方はぜひご登録ください。