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スローガンで終わらせない。真のイクオリティを実現するために、企業ができること

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社会課題を解決する担い手が、ビジネスをリードする企業にシフトしている昨今。国籍、性別、年齢、障がいの有無、ライフステージの変化や価値観などを問わず、それぞれの個性を尊重し、認め合ってよいところを活かすダイバーシティやインクルージョンは、その質を再確認するフェーズに来ているといえるだろう。

2021年11月19日開催のMASHING UP conference vol.5にて行われたセッション「スローガンで終わらせない、真のイクオリティを実現するために、企業ができること」では、アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 マネジング・ディレクターの市本真澄さん、ヘラルボニー代表取締役の松田崇弥さん、セガサミーホールディングス 執行役員 サステナビリティ推進室 室長 /セガサミービジネスサポート 代表取締役社長の一木裕佳さんが登壇。障がいのある人材をどのように活用し、企業の成長戦略や社会課題解決の糸口とするのか、成功事例を持ち寄って意見が交わされた。

データ分析に基づく評価やトレーニング 。IT企業ならではのアプローチ

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アクセンチュアの市本真澄さん。社会貢献活動の一環で自身も携わるデザイン小物事業では、「どういったアイテムなら消費者にご購入いただけるのかという視点で商品を企画することは、障がいのある方と本格的な小売業を営んでいる感覚」と話す。

総合コンサルティング会社としてグローバルに事業を展開するアクセンチュアは、インクルージョン&ダイバーシティ(I&D)を実践するトップランナーとしても、ビジネス界を牽引している。障がい者支援の取り組みには、社内のI&D徹底と社外に向けたコーポレート・シチズンシップ(社会貢献活動)の2本柱を展開。市本さんは「アクセンチュアにおいて、これらは経営戦略と位置づけており、今後もどんどん加速させたい」と強調する。

「全国各地のオフィスやセンターで障がいのある社員が勤務していますが、発達・精神障がいのある社員が多く在籍しているサテライトオフィスでは、彼らの特性を理解したうえで、いかにパフォーマンスを発揮してもらうかといった創意工夫が欠かせません。たとえば稼働率のデータを取って、パフォーマンスを可視化する。データに基づいた分析によって評価やトレーニングを行い、それぞれが成長できる環境作りの試行錯誤を続けています」(市本さん)

新卒採用にも力をいれているアクセンチュアでは、未経験の人材を0から育てるプログラムも充実している。市本さんは、「そのナレッジは障がい者雇用と親和性が高く、新卒向けトレーニングの豊富な経験・知識を、障がい者採用のエンジニア育成に活かしている。トレーニングを通じてスキルを高め、一人前のエンジニアとしてプロジェクトに参画し、アクセンチュアが本業とする分野で立派な戦力として活躍してもらうことが可能」と語った。

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デザイン小物ブランド「equalto」のWebサイト。どの商品も、デザインの美しさが際立つ。

社外に向けたコーポレート・シチズンシップの取り組みについて、デザイン小物ブランド「equalto」を通した障がいのある方の自立支援の事例が共有された。「付加価値の高いおしゃれなアイテムを作ってブランド化し、東急ハンズさんや銀座の伊東屋さんで販売することで障がいのある方の作業を価値あるものに高め、工賃アップにつなげていきます」と、市本さんは語る。

また、パラリンピックムーブメント推進支援として、「ダイバーシティの価値観を日本中・世界中に広げることを目的に、パラアスリートにご自身の経験を発信してもらいました。アクセンチュア社員がプレゼンテーションのスキルアップトレーニングを提供し、アスリートの皆さんがロジックを組み立て、自身のストーリーを語れる方になっていただければ」と続けた。

社内外でのいずれの取り組みも、障がいのある方に簡単な作業をあてがってポジションを確保するといった一時的な取り組みではない。障がいのある方が企業や社会の成長に寄与することを念頭に置いた、本質的な施策である。

知的障がいのある作家によるアートが日常生活に溶け込んだ世界へ

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ヘラルボニーの松田崇弥さんは、双子の兄 文登さん(ヘラルボニー 代表取締役副社長)と一緒に岩手と東京で福祉領域のアップデートに挑む。今回のカンファレンスで来場者に配られたノベルティのバッグとステッカーは、ヘラルボニーのデザインによるもの。

主に知的障がいのある作家とアートライセンス契約を結び、多様な事業を展開しているヘラルボニーの活動はユニークだ。障がいのある作家のアートデータを軸に、自社ブランドや企業とのコラボプロダクト、まちづくりなどに展開し、売上の一部をライセンスフィーとして彼らに還元するというビジネスモデルを構築。現在はファッション・インテリア・ライセンスの3領域に手を広げる。

「ファッションはデザイン性を追求し、実店舗は期間限定ショップも含めて全国4店舗ほど展開しています。インテリアはこれから注力する領域で、活動拠点の岩手県にあるホテルの数部屋をプロデュースする予定です。ライセンス事業では、アートデータによりさまざまな業界とのコラボが実現していて、サバ缶や車椅子、コスメブランドのギフトボックスなどにアートを展開しています。生活の中に当たり前に知的障がいのある作家のアートが自然と溶け込んでいる世界を目指したいですね」(松田さん)

知的障がいのある作家のクリエイティビティに着目するようになった理由のひとつとして、松田さんは「重度の知的障がいを伴う自閉症の兄の存在が大きかったですね」と振り返る。「兄も喜怒哀楽のある人間なのに、“障がい者”というレッテルを貼られた途端にかわいそうな目で見られる」と憤り、「こうした知的障害に対するイメージを変えたくて起業した」というストーリーを明かした

ヘラルボニーのミッションは、「異彩を、放て。」──。彼らが打ち出すのは、障がいのある方も健常者も平等という考えより、「知的障がいがあるからこそ、描ける世界がある」という「異彩」である。いまや北海道から沖縄まで、最近では海外の作家とも契約をし、150名以上の作家とアートライセンス契約を結ぶにいたった。

「最近はマルイさんと提携して、使うたびに社会が前進するエポスカードをローンチしました。ポイント還元の0.1%が障害福祉団体に寄付として回り、作家やヘラルボニーの利益にもなる仕組みです。資本力のある企業や投資家だけでなく、ちょっとした買い物でエポスカードを使うだけで普段の生活の中で社会を前進させることができる。そんな世界を目指したかった」(松田さん)

このアイデアに、モデレーターの一木さんは「知らず知らずのうちに、さまざまな人が福祉を支えるプロジェクトに参加し、新たな社会を共創できる仕組みづくりが素晴らしい」と笑顔を見せた。

特性を活かし珊瑚の養殖、海に生物多様性を

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「エンタテインメント企業として社会にできる価値還元を」と語る、セガサミーの一木裕佳さん。社員を対象とした障がいに対する理解促進セミナーや、グループ会社がダーツマシンを生産していることから、車椅子ユーザーの女性へ向けたダーツ大会の開催など、障がいを切り口としたセガサミーのインクルージョン推進施策は多岐に渡る。

一木さんはセガサミーグループが運営するフェニックス・シーガイア・リゾート(宮崎県)のランドリー工場や、グループ各社が集約された大崎オフィス(東京都)のクリーニングとアシスタント業務に障がいのある方を起用するなど、ダイバーシティやインクルージョンの推進をはじめ、セガサミーグループにおけるサステナビリティ推進の旗振り役を務める。最近では、エンタテインメントを軸に、障がいのある方も社会も笑顔になる世の中の創出を目指し、社内ではアウトサイダーアートの展示や全盲の演奏者によるパラコンサートなども行ったという。

自身も障がい者雇用に積極的に携わる一木さんは、2人の事例紹介を踏まえて「いまや雇用がマストだからではなく、すでに企業の内外にいる障がいのある方に、どのように活躍の場を用意できるか、という段階に入ってきましたよね」と水を向ける。すると、市本さんからアクセンチュアによる、珊瑚の養殖を障がいのある方に任せるという一大プロジェクトが明かされた。

「サステナビリティや生物多様性のようなテーマがアクセンチュアの中でもどんどん身近になっている時に、沖縄で福祉施設を運営している方から新しい事業を創出したいという想いと、珊瑚礁の破壊にさいなまれている環境問題の実情を聞きました。海洋における生物多様性を獲得する取り組みに、これまで多くのシーンで社会的弱者として庇護される存在だった障がいのある方が積極的に関わることができたら、すごいことですよね」(市本さん)

聞けば珊瑚の陸上養殖には、水質のモニタリングや餌付けなど、きめ細やかな手入れが欠かせないという。それを聞いた松田さんは自身の兄のエピソードを紹介し、「知的障がいや自閉症のある方に向いている作業かもしれません」と身を乗り出す。

「餌を毎日同じ時間にきっちりあげる、珊瑚の植え付けを丁寧に行うなどといった根気がいる細かい作業は、障がいのある兄に向いている気がします。彼は日曜18時には絶対に『ちびまる子ちゃん』を観なければならないという強いこだわりがあります。自閉傾向の強い方は、決まった時間に決まった作業をするという日々のルーティンに忠実に生きている方も多い。珊瑚の養殖は、知的障がいのある人と相性が良いとすると、緻密に計画通りできあがりそうですよね」(松田さん)

松田さんの実感がこもったコメントに対して市本さんも、「自閉症や知的障がいのある方は、とても実直な人が多い。きっちり計画通りに作業を進められるというスキルを活かしてもらえるはず」とうなずき、一木さんも「同じ作業を集中力を途切れさせることなく進められる特性を、珊瑚の養殖に当てはめるアイデアが素晴らしいですよね」とオーディエンスに語りかけた。

あなたにとってのインクルージョン&ダイバーシティとは

セッションの最後には、一木さんから「あなたにとってのI&Dとは?」という質問が投げかけられた。三者三様の答えを紹介する。

いつか自分に返ってくるもの/市本さん

「企業としてI&Dに取り組んでいますが、いつか個人に返ってくるものだろう、と常々考えています。アクセンチュアのコアバリューに、自分と関わる人たちに敬意を持ちなさいという『Respect for the Individual』という言葉がありますが、これはそのままI&Dにもつながる考え方。相手に敬意を払えば、結果的に自分も尊重してもらえる。よい循環を生み出していくことで、社会がよくなることにつながると信じています

手考足思(しゅこうそくし)/松田さん

手で考えて、足で思う──。いま僕が読んでいる本に記されている、陶芸家 河井寬次郎さんの言葉です。サステナビリティにまつわる言葉には、ダイバーシティにインクルージョン、ESGなどいろいろあって、打ち出される言葉数の割に取り組みが追いつかず“頭でっかち”になっているような印象を受けます。でも大切なのは、現場に足を運ぶこと。当事者と直接会って、話してみることでいちばん伝わるのだと思います

成長のエンジン/一木さん

「社会や企業が成長を遂げる根底には、すべてインクルージョン&ダイバーシティがあるのではと思います。障がいのある方だけでなく、結婚・出産などでライフステージが変化する社員、仕事と介護の両立に悩む優秀な人財といった存在も取りこぼしてはいけません。彼らに対して“できること”をどれだけ会社が考えついて、人財として活用し続けてもらえるのか。そう考える積み重ねこそ、企業の、ひいては社会の成長のエンジンとなるのではないでしょうか

セッションを通じて得た実感は、障がいのある方の実力を上から目線で捉え、お仕着せの枠組みで業務をあてがう時代ではなくなった──ということ。ラストには、一木さんが「企業が社会全体に利益をもたらす仕組みやアイデアで、周りを巻き込みI&Dを実現していく。そしてそうした取り組みが消費者を刺激し、ひいては社会解決の課題や真のイクオリティにつながるのではないでしょうか」とオーディエンスに問いかけ、セッションを結んだ。

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MASHING UP conference vol.5

スローガンで終わらせない、真のイクオリティを実現するために、企業ができること

一木裕佳(セガサミーホールディングス 執行役員 サステナビリティ推進室 室長 / セガサミービジネスサポート 代表取締役社長)、市本真澄(アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 マネジング・ディレクター)、松田崇弥(ヘラルボニー代表取締役社長)

アクセンチュア

撮影/俵和彦、文/岡山朋代

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