2021年11月19日に開催されたMASHING UPカンファレンスvol.5では、さまざまな切り口からこれからの「続けられる」社会をつくるビジネスについて、議論が交わされた。そのなかで昨年に続いて注目を集めたのが、「美をカタチに『第2回ビューティーアクセラレータープログラム』授賞式とSpeed an’ Easy コスメブランドが作れるTOKIWA KOBO(工房)のご紹介」。
カラーコスメOEMで国内シェアナンバー1の企業、トキワが開催する「TOKIWA Lab.ビューティーアクセラレータープログラム」最終採択社のプレゼンテーションと授賞式に加えて、トキワの新たなサービス「TOKIWA KOBO(工房)」についての発表が行われた。
スタートアップの支援と、オープンイノベーションの創出
「TOKIWA Lab.ビューティーアクセラレータープログラム」についてプレゼンテーションをする、トキワ インターンの水野清香さん。
カラーコスメの受託製造(OEM/ODM)において国内シェアナンバー1を誇る、トキワ。 実績と技術力を備える老舗企業である同社が製造した製品の数々は、美容雑誌やSNSで大きな話題を呼んでいる。
そのトキワが2021年にスタートしたのが「TOKIWA Lab.ビューティーアクセラレータープログラム」だ。同社のインターン 水野清香さんは、本プログラムを始動したきっかけを、次のように話す。
「新型コロナウイルス感染拡大の影響で、コスメ事業への参入障壁が高まる中、スタートアップの支援を多方面から行い、Jビューティーを世界中に届けたい。また、オープンイノベーションの場を設けることで、よりいっそう消費者に求められる製品の製造を目指したい」
「高品質・高機能を誇るJビューティーを世界中に届ける」、「消費者目線の製品をつくる」そして、「持続性を意識した、人と地球に優しい製品をつくる」の3つが、このプログラムの目指す着地点だ。
これらの実現につながるアイデアや技術を持ちえるスタートアップや企業を広く募り、採択社に対して、製品開発・生産をバックアップ。最大1万個の初回生産を無償で提供するほか、営業戦略サポート、経験豊富な審査員やトキワの製品開発担当者によるアドバイスなど、多方面から支援を行う。
第2回となる今回はじつに38社からの応募があり、昨年に続いてエントリーする企業も見られたという。そんな中、最終採択社に選ばれたのは2組。授賞式では、2社によるプレゼンテーションが行われた。
コスメ業界から日本の常識を変えていきたい
最終採択社 MANAKABURA代表の成田梨沙さん。
1組目は、MANAKABURA代表の成田梨沙さん。ジェンダーフリーサステナブルコスメブランドをコンセプトに掲げるMANAKABURAを創設した理由として成田さんは、「『こうじゃなきゃいけない』『みんながこうだから』『人より目立つことはちょっと』などの日本に根強くある常識は今の若者もまだ持ち続けており、そんな概念を世界にある多様な良識に変えたい」と語る。
まつ毛エクステンションやまつ毛パーマなどを施術する専門職であるアイリストとして活躍する成田さんは、かつてニューヨークに住んでいた際に、ジェンダーに対する現地と日本との意識差を強く実感。さらに、日本では地球環境を守ろうとする意識が一般的に低いことにも違和感を覚えたという。 「何かおかしい。これは現状を変えるべきではないか。私自身が変えていく力になれれば」と考え、プログラムに応募したと、成田さんは語る。
提案したのは、どんなジェンダーの人でも選択でき、手に入れたくなるジェンダーフリーコスメ。最初に販売するアイテムは、眉の商品だ。
「今の日本でジェンダーフリーをコンセプトにしたコスメは少なく、カラーコスメがメインのブランドはゼロに等しい。2020年、国内の化粧品市場は大きく落ち込んだにもかかわらず、化粧品を購入する男性は、大幅に増えました。進化を続ける女性向け化粧品と、新しい時代に動き出した男性向け化粧品といった高まる機運を追い風に、ジェンダーを超えたブランドから、誰でも使えるカラーコスメを打ち出します。
また、日本には未来の地球を守るコスメブランドが必要です。さまざまな環境問題に対応し、サステナビリティを意識した化粧品を日本から世界へ発信し、日本の常識を、コスメ業界から変えます」(成田さん)
Jビューティの魅力を世界に広げていきたい
アメリカ在住のためVTRで出演した、Cosme HuntのCEO 高橋麻衣さん。
2組目は、Cosme Hunt JapanのCEO 高橋麻衣さん。Cosme Huntは日本の化粧品、コスメやJビューティーに関する情報を届けるECプラットフォーム。アメリカのミレニアル層をメインターゲットに、2018年にサンフランシスコで創設された。これまでに50社以上の日系コスメ、化粧品ブランドのコンサルティングやアメリカ進出のサポートを行い、実績とノウハウを蓄積している。
そのCosme Huntがプログラムで実現を目指すのは、カラーバリエーションが豊富なBBクリームなどの販売だ。
「Cosme HuntのECで扱っていない商品の中で、消費者から人気の高いものが、BBクリームなどの機能性化粧品。日本製のBBクリームなどは信頼性が高く、肌に塗っても白くなりにくい点や、美容成分が入っていたり、ファンデーションとしても使えたりする多機能性、またベタつかないつけ心地などが高く評価されています。アメリカで話題になっているにも関わらず、まだ進出していない日本ブランドがとても多いのが現状です」(高橋さん)
高橋さんが課題として挙げるのが、カラーバリエーション。海外では肌の色に基づいて10種類以上のカラーバリエーションを展開するブランドが多いのに対して、日本では多くの場合、カラーバリエーションは2種類ほど。
「トキワチームの皆さんの力を借りて、この課題を解決したい。そして、日本製品やブランドの良さを世界に広げるというCosme Huntのミッションを実現したい」(高橋さん)
ポテンシャルの高さ、事業計画の完成度を評価
トキワ 副社長の金井博之さんより採択二社に目録の授与が行われた。
プレゼンテーションの後は授賞式が行われ、審査員から講評が述べられた。
アイスタイル BeautyTech.jp編集長 矢野貴久子さん
トキワのOEM企業としてのアクセラレータープログラムは、世界に先駆けるものとして注目していました。サステナブルなものづくりへの哲学、スタートアップの立場に寄り添うビジネス支援の仕組みもすばらしいと感じています。今回は魅力的な応募が多く、化粧品が持つポテンシャルを改めて感じました。Cosme HuntのBBクリームなどの多色展開は『ありそうでない』を叶えるすばらしいアイデア。MANAKABURAの提案は、ジェンダーフリーかつ環境に配慮したカートリッジ式で、トキワの強みとしっかりマッチし、海外にも進出できるポテンシャルを感じました。
ファーメンステーション 代表取締役 酒井里奈さん
ファーメンステーション 代表取締役 酒井里奈さん。
弊社もスタートアップとして色々なアクセラレータープログラムに応募しましたが、ここまで寄り添ってくれるプログラムはなかなかありません。事業計画立案のサポートや、さまざまなアドバイスとともに伴走してくれるプログラムを、改めてすばらしいと思いました。スタートアップとしては、やりたい思いがどれだけ強いか、自分がやらなければいけない理由がどれだけあるかが大事。その意味でも最終採択社のお2人を、一消費者としても、同じスタートアップとしても応援したい。
カーライル・ジャパン・エルエルシー マネージングディレクター 渡辺雄介さん
カーライル・ジャパン・エルエルシー マネージングディレクター 渡辺雄介さん。
今は、本物でないとモノが売れない時代。特にZ世代は、そこに共感がないと買わない。成田さんの強い思いはプレゼンからも伝わってきて、私も感動しました。眉に特化していること、成田さん自身がアイリストであること、マーケットがあることは成功のポイント。ビジネスプランの作成などを通して支援したい。Cosme Huntは今ある需要と供給のミスマッチを正確に捉えて、具体的な商品設計をしており、ビジネスプランとしての完成度が非常に高い。
「TOKIWA KOBO」は、ブランド立ち上げを支援する新サービス
トキワの尾中朋麿さんが新サービス「TOKIWA KOBO」について紹介を行なった。
続いて、トキワの新サービスの発表が行われた。小ロットかつ短納期で、オリジナルブランドを立ち上げられる生産委託サービスTOKIWA KOBOだ。
「SNSの普及で情報発信はマスから個へと変化し、その結果、化粧品市場のトレンドは多様化し、移り変わりも激しくなっています。また、これまで店舗で選び購入していたものから、インスタグラムやYouTubeで探し、気軽にECサイトで購入する購買形態に変わり、インフルエンサーのブランドも増加。こうした背景もあり、トキワは『自分でもブランドを立ち上げたい』という問い合わせを日々多く受けています。
しかし、一般的な生産ロットは数量が多く、オペレーションも難解。また信頼できるOEMを探せない、開発期間が長い、初期費用がかかるなど多くの課題があり、ビジネス継続が難しく、成功までたどり着けないケースが多いのが現状です。そこで、その課題を解決して、ブランド立ち上げを支援するサービスとしてTOKIWA KOBOを立ち上げました」(尾中さん)
TOKIWA KOBOの特長は3つ。高品質、小ロット、短納期の3つで成功確度を上げるための支援を行う。品質については、トキワには世界トップ企業との取引、2019〜2020年のベストコスメ上位選出製品の製造実績があり、デパコス品質で製品化が可能だ。また、最小発注ロットは1000個/色で、初期費用や在庫負担を軽減できる。さらに、通常は開発に1~1年半かかるところを最短2~3ヶ月で製品化できるため、キャッシュフローリスクも軽減。スタートアップには願ってもないサポート内容だ。
50年以上、日本だけでなく世界のブランドに製品を供給してきたトキワだからこそ、その実績とノウハウを生かして実現できるサービスと言えるだろう。
最後は、トキワ副社長・TOKIWA Lab代表の金井博之さんの言葉で締められた。
「トキワはこの10年間、カラーコスメ受託製造事業において10年連続日本ナンバー1、マーケットシェアも25~30%を維持し、グローバルでもその売り上げはトップ5に入る。ただ、マーケットはどんどん変化しており、5年後10年後の勝者は誰か、我々にもわかりません。そこで、皆様にチェンジエージェントとなっていただき、一緒に事業を改革し、日本の閉鎖的な状況を打破していきたい。アクセラレータープログラム、そしてTOKIWA KOBOを活用しながら、皆様とともに成長していきたい」(金井さん)
「縁の下の力持ち」としてブランドづくりを支援するトキワの情熱と、コスメで現状を変えようとする採択社の思いが強く伝わるセレモニーとなった。
[株式会社トキワ]
撮影/俵和彦、取材・文/上妻靖子
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