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Conference:MASHING UP vol.5

互いをリスペクトし合える、「ちょっとやさしい街」はどうつくる?

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異なる個性を持つ誰もが、自分らしく暮らせる街とは?

11月19日に開催された「MASHING UPカンファレンスvol.5」では、「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2021(SIW)」とコラボしたワークショップ「誰もが住みたいすてきな街 SIWワークショップ」が行われた。

SIWは、MASHING UPカンファレンス同様、多様性やソーシャル、ビジネスといったテーマを通して、これからの社会の姿を考える大型イベント。そのSIWエグゼクティブプロデューサー長田新子さんをモデレーターに迎え、LGBTの当事者としてYouTubeなどで発信をするミュータントウェーブのメンバー3人(大嶋悠生さん、大川政美さん、山本朝陽さん)が登壇。異なる視点を持つ私たちの誰もが自分らしく暮らせる、これからの街の姿について参加者と一緒に考えた。

「人はそれぞれ違う」 YouTubeを通して伝えたい

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YouTuberとして活動するミュータントウェーブのメンバー。左から山本朝陽さん、大嶋悠生さん、大川政美さん。

ミュータントウェーブは、女子サッカーなでしこリーグの元選手で、現在は男性として生きるトランスジェンダーの3人グループ。セッションは、リーダーの大嶋さんによるグループの活動紹介から始まった。

「僕たちはLGBTの当事者ですが、当事者であるかないかは関係なく、人は皆違っていて、個性にあふれているということをYouTubeの企画を通して発信しています。僕たちがFTM(Female to Male、女性として生まれ、性自認が男性である人)のインフルエンサーグループとなって、世の中には多様な人、考えが存在するということを広めたいと思っています」

人気企画の一つに、渋谷や地方の街に出てLGBTに関するアンケートを行うというものがある。街の人々はどれくらいLGBTを知っているのか、どういうきっかけで知ったのか、それについてどう思うかに加えて、メンバーの3人がL・G・B・Tのどこに属していると思うかも聞いている。回答とともに、元女子サッカー選手であることも打ち明けると、皆一様に驚いた表情を見せるという。人によって捉え方がさまざまであることもよくわかる。

「街や年代による違いが伝わればいいなと思って企画しましたが、人によって判断の仕方や受けとる印象は千差万別だということを実感しました」(大嶋さん)

不便さを感じるのは、街の中のどんな場所?

長田新子さん

渋谷未来デザイン 理事・事務局次長の長田新子さん。

長田さんからメンバーへの次の質問は、「生きづらさ・過ごしにくさ」について。ひと昔前に比べるとLGBTへの理解が進んでいるとはいえ、苦労することは多いのではないか。

「参加者の中には、当事者の体験談を聞いたことがないという方も多いと思います。これからの街のあり方、お互いに何ができるかを考えるうえで、メンバーの皆さんがどういうところに苦労を感じているか教えてください」(長田さん)

女子サッカー界に身を置いていた時は、3人とも「生きやすい」環境にあったという。

女子サッカー界には『メンズ』という言葉があって、性自認が男性である人や、女性のことを好きな人を指します。僕らのことも『あぁ、あの人メンズなんだね』で終わりです。サッカー選手として、しっかり練習し、試合で結果を残していれば何も言われません。そういう意味で過ごしやすい環境にありました」(大嶋さん)

山本朝陽さん

ミュータントウェーブ メンバーの山本朝陽さん。

では、現在はどうだろう。山本さんが言及したのは、トイレについてだった。

「女子サッカーを引退し、男性として生きると決めた時、公共の場で女性用トイレに入ることを躊躇するようになりました。男女共用トイレをわざわざ探して入っていました

大川さんもトイレに関しては不便さを感じたという。

「まだ戸籍上女性だった時は、女子トイレに入ると、見た目から『間違ってるよ』と言われたり、驚かれたりすることも。そういう時は、あえて高い声を出して女性であることをアピールしながら入ることもありました

さらにハードルが高い場所として銭湯やプールをあげ、周囲を驚かせてしまうことも心配だと話した。

大川雅美さん

ミュータントウェーブ メンバーの大川雅美さん。

「治療段階によっては、まだ胸が残っているけれどホルモン注射で見た目は男性化している場合もあって、そんな時は男性更衣室も女性更衣室も使いづらい。自分がいいと思っても、周りをびっくりさせてしまうと思うと入りづらいですね」(大嶋さん)

次に、「街」について。「例えば、渋谷は理解が進んでいるのではないかなと思います。私自身もLGBTの友人がいて、人は多様であるということを自然と受け入れられていますが、街や地域によって差は感じますか?」という長田さんの質問に、大嶋さんはこう答えた。

「渋谷は街全体でダイバーシティを推進しようとしているので、過ごしやすいなと感じます。地方に住んで就職活動をしたことがあるのですが、そもそもLGBTという言葉を聞いたことがないという人が多かったですし、そのために内定を取り消されたこともあります。ただ最近は、メディアの影響もあり、五輪をきっかけにLGBTを知ったという人も多く、地方でも否定的な意見を聞くことは少ないですね」(大嶋さん)

「それでもいろいろな当事者から話を聞き、困っている人がたくさんいることを実感します。皆が生きやすい社会をつくるために、変えられることはあるのではないかと考えています」という大川さんの言葉を受けて、ワークショップを通して、参加者も考えることに。

「ちょっとやさしい街」をつくるためのアイデアを考えよう!

どんな街が住みやすいか、こうだったらいいな、自分だったらこうするな、というアイデアを皆さんで出し合ってください」と長田さんが呼びかけ、ワークショップがスタート。

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ワークショップを通し、「ちょっとやさしい街」をつくるためのさまざまなアイデアを、短冊型のカードに書いていく。

参加者たちは短冊型のカードにアイデアを書き、各グループでディスカッション。ミュータントウェーブのメンバーたちも各テーブルを回り、話し合いに耳を傾けた。会場からは、街をテーマにさまざまな角度から課題をとらえた、多様な意見があがった。

「トイレを示す色は、男性が青、女性が赤というものが多いが、この性別はこの色、というステレオタイプを変えていけないだろうか

「生物学的にではなく、さまざまなジェンダーがあるということを子どもの時に知ることができる環境が必要なのではないか。学校の性教育で触れるのが一番だとは思うが、家庭でも触れられれば良いと思う。ジェンダーに対しての認識を持ち、多様性を受け入れられる社会に変えていけるように皆が心がけることが大切」

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ミュータントウェーブのメンバーたちも、ディスカッションに参加。会場からのアイデアに耳を傾けた。

そのほか、街にもっと緑を取り入れることで皆がリラックスでき、他人に寛容になれるのでは、という意見も。ディスカッションの感想を求められた山本さんは、次のように話した。

『街づくりはモノがあるだけでは足りない』と、“人の心”にも触れたディスカッションがあったのがよかったですね。誰かの心に手を添えてあげるというやさしさを皆がほんのちょっとずつでも持てれば、マイノリティだけではなくて、誰もが豊かに生活できると思っています。今日のワークショップがそうしたことを考えるきっかけになれば非常にうれしいですね」(山本さん)

互いを知ることでリスペクトが生まれる

ディスカッションで「教育」についての意見があがったことから、長田さんがあるエピソードを紹介。

「街づくりの仕事をする中で、車椅子に乗っている人から聞いた話です。街で子どもが『あっ、車椅子だ』と言うと、多くの親は『そんなこと言ったらダメよ』と諌める。それがすごく不自然だと。子どもはいろいろなことに興味を持つものなのに、なぜ車椅子のことを口にするのはダメなのか。『そうか、話題にしてはいけないものなんだな』と子どもはネガティブに捉えてしまいます。

ところが、あるお父さんは、『車椅子だとなんであんなに走れるんだろう』と聞く子どもに、『彼女にはスーパーパワーがあるんだよ』と言ったそうです。すると子どもは『それカッコいいね!』と返したのだとか。親の対応によって、子どもの捉え方は大きく変わりますよね」(長田さん)

教育の重要性については、ミュータントウェーブのメンバーも同意。

子どもの頃に当事者と触れ合う機会を持つことは大事。ジェンダー教育について、教科書で読んで学ぶのではなく、体験しながら楽しく学べるような活動をしていきたいですね」(大嶋さん)

大嶋悠生さん

ミュータントウェーブ リーダーの大嶋悠生さん。

それを受けて、「社会人でも意外と知らないことは多いので、皆さんも今日知ったことをぜひ周りの方に伝えていただければ」と長田さん。

最後は、「Respect Is Knowing/尊重は知ることからつくられる」をテーマに、SIWがつくった動画が流れた。フィールドが異なっていても、それぞれがつくり上げてきた過程やルーツ、努力などを知ることで自然とリスペクトが生まれてくること、そして、どんなフィールドにいようとも互いを尊重できる世の中にしたいというSIWの思いが込められた動画だ。

「今日も知ることでリスペクトが生まれたと思うので、これからもたくさんの人を知り、お互いをリスペクトし合って、皆ですてきな街をつくっていければいいなと思います」(長田さん)

そんな前向きなメッセージでセッションは終了。互いを知り、自分たちにできることは何だろうと考えるきっかけを与えてくれるワークショップとなった。

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MASHING UP conference vol.5

誰もが住みたいすてきな街 SIWワークショップ

長田新子(渋谷未来デザイン 理事・事務局次長)、山本朝陽(YouTuber ミュータントウェーブ メンバー)、大嶋悠生(YouTuber ミュータントウェーブ リーダー)、大川政美(YouTuber ミュータントウェーブ メンバー)

撮影/中山実華、取材・文/上妻靖子

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上妻靖子
上妻靖子
編集・ライター。大学卒業後に上京し、雑誌編集や広告制作を経験した後、2017年フリーランスに。会報誌や社内報、Webのライティングを中心に活動中。インタビューが好き。大阪出身で、得意料理はお好み焼き。

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