エンジニアとして20年以上にわたるキャリアを積んできた原田真貴子さん。Salesforceを中心としたマルチクラウド開発などで知られるフレクトのイネーブルメントチームの一員として、現場を支える役割を担っている。社内における知見の共有や学びの輪を広げ、資格取得もサポートする——。エンジニア育成支援に力を注ぐ原田さんの活動と、その原動力を紐解く。
原田 真貴子(はらだ・まきこ)
大学で情報工学やプログラミングの基礎を学び、ソフトウェア開発の会社に新卒で入社。通信キャリアの研究所向け案件等を担当し、結婚を機に退職。2001年にソフトウェア開発の会社に転職し、スマホアプリの開発等に従事。育児休暇を取得し、復職後は在宅勤務をしながら働く。2019年に株式会社フレクトに入社。クラウドインテグレーション事業部にてB2Cサイトの開発・保守に従事し、2020年よりイネーブルメントチームにてエンジニアの育成支援に力を注いでいる。
一人ひとりのエンジニアが活き活きと働けるように
大学の工学部情報工学科で情報工学を学んだ後、エンジニアとしてさまざまな案件に携わってきた原田さん。
2019年にフレクトに中途入社し、エンジニアとして活躍した後、2021年現在はクラウドインテグレーション(CI)事業部のイネーブルメントチームに所属している。
あまり聞き慣れない「イネーブルメント」という言葉。意味するところは、組織として目指す目標や価値観をもとに、一人ひとりが活き活きと働けるよう現場を支援していくことだ。
イネーブルメントチームの発足は、2020年度。発足の背景について、原田さんは次のように語る。
「10年前に10人で始まったCI事業部は、現在100人以上の大きな組織になりました。そのうち9割以上が中途採用。つまり、それまでの業務経験や業務知識が異なる人たちが多く集まっています。
組織が大きくなる過程では、会社が大切にする価値観に変化が生じたり、同じ業務に当たっている社員のあいだでも認識が十分に伝わりきっていなかったりすることがあります。20~30人の組織であれば、日々の業務の中で『ああしよう、こうしよう』という話もできると思いますが、100人規模となると、普段顔を合わせない人も増えてくるのが現実です。
そこで、業務に関する知見や方法を共有し、育てていくことが必要になってきたということが、チーム発足の背景にあります」
発足当初からの試行錯誤の結果、現在は「エンジニアを支える、育てる」ことをチームの明確な目標として具体的な取り組みを推進している。
現場を退き、「育成する側」へ。ライフステージの変化とともにやってきた転機
親子参加型の会社主催ワークショップ「Family day」に娘と参加したときの様子。
フレクト入社時は、エンジニアとして現場の業務に携わっていた原田さん。イネーブルメントチームに加わったきっかけは、COOである大橋正興さんからの誘いだった。
「ちょうど娘が中学受験を控え、受験本番に向けて多忙な時期でした。中学受験はひとつの『人生の岐路』。保育園や小学校時代とはまた違う大変さがありました。とくに受験本番である2月は、年度末に向けたプロジェクトで私の仕事も忙しくなります。前々から上司に相談し、配慮してもらっていたものの、逆にそれをとても心苦しく感じていました。
そんなときに、大橋から『こういう仕事もあるよ』と声をかけてもらいました。もともと人を支える業務にも興味があり、思い切ってエンジニアを卒業してみようと考えました。大橋が掲げた『みんなを支えるための知見の共有』というチームの目的にもとても共感し、参加を決意しました」
これまでも結婚や出産、家庭の状況など、ライフステージに応じて柔軟に働き方を変えてきた原田さん。エンジニアから「エンジニアを育成する側」に転身する道を選択した。
また、これまでのキャリアの中で、原田さん自身、「勉強したいけれど、勉強する場所やきっかけがない」「業務は忙しいけれど、資格を取らなければいけない」といったジレンマを抱えていた。学びを支援する仕組みの必要性を、身をもって強く感じていたため、チームへの参加は良い挑戦だったのだ。
そうして原田さんは、イネーブルメントチームに参加。最初に取り組んだのは、社内教育サイト「Fラボ」の立ち上げだった。
「社内教育の一環で、『Fラボ』という教育サイトを立ち上げました。社員が仕事の中で体験して身に付けた『フレクトならではの知見』を体系化して共有する、企業内大学のようなものを目指しています」
チームでのミーティング風景(右が原田さん)。
取り上げる内容は、最初から『Fラボだからこそ』のテーマにこだわった。
「技術的な内容は、Salesforceや各社・個人が出しているヘルプや学習コンテンツなどの一次情報があるので、まずは社内にしかないテーマを選びました。そのひとつが、お客様との打ち合わせで使う資料や打ち合わせ時の進め方のレビュー方法です。
具体的には、『打ち合わせの前に内部で何日前にレビューをしましょう』、『その時にはこういう観点で確認しましょう』など。これがきちんとできていると、当日に想定外の質問をされてもその場で対応することができ、プロジェクトを早く進められるようになります。このように、まずは対顧客業務で発見したことを、Fラボならではの学びとして進めることにしました」
原田さんの次の目標は、Fラボをさらに根付かせ、育てていくことだ。
「Fラボは現在、セールスフォース・ドットコムが提供する体験学習プラットフォームを活用していますが、まずはこれを使ったコンテンツの拡充に取り組んでいきたいと思っています」
資格取得を全面サポート。社員の学ぶ意欲に伴走して
イネーブルメントチームで手がけてきた数々のプロジェクトの中で、一番原田さんの印象に残っているのは資格取得キャンペーンだという。
「もともと会社の制度として、資格取得に向けた書籍の購入費支援や試験費用を補助、合格時の報奨金授与などの支援はありました。それとは別に、私たちのチームでは、半期ごとにいくつかの資格をピックアップし、勉強会などを主催するキャンペーンを展開。合格者にはプレゼントを用意するなど、さまざまなサポートをしています」
キャンペーン期間はおよそ3か月。チームはその期間中、事業部内の有識者の手を借りながら、資格取得に挑む社員たちの支援を行いました。
『ぜひこの資格は取ってほしい』という会社の強い気持ちを全面に出し、うるさいくらいに周知します(笑)。キャンペーン中は、情報発信を続けていたので、社員の皆さんもモチベーションを保ちやすかったはず。会社のバックアップもあり大規模でやったということもあって、合格者も大人数に! 想像以上の反響とともに、社員の学習意欲の高さを実感しました」
一人ひとりの成長に真剣に向き合う。女性エンジニアの活躍への思い
「性別に関わらず、すべての社員が自由にキャリアをつないでいけるような会社になるといい」と原田さん。そのために何ができるか模索中だ。
イネーブルメントチームは、現場エンジニアの育成以外に、人事評価の支援も担当している。原田さんはフレクトの人事評価のプロセスに大きな魅力を感じると語る。
「CI事業部では部長全員が集まり、2日ほどかけてエンジニア全員の人事評価を行います。『この人は、次はこういう仕事に関わることで大きく成長できるのでは』と将来的な話も出るなど、評価をする部長たちはとてもまじめに熱く語っていますし、それに対してほかの部長や執行役員からも意見がどんどん出ます。
多くの人が、社員一人ひとりの評価と成長に真剣に向き合う。そんなフレクトの社風にとても魅力を感じます」
新たな視点とやりがいを得たいま、原田さんの中で、女性エンジニアに対するある思いが強くなっているという。
「フレクトは、エンジニアだけを見ると女性が少ない。リモートワークが主体になることで、多様な生活スタイルに柔軟に対応できていると思いますし、会社からのサポートも増えています。しかし、どうしてもエンジニアの女性は、働き方と向き合うことが難しいという面があるのが正直なところです。
社員のライフステージが変わっていくときに、性別に関わらずすべての社員が自由にうまくキャリアをつないでいけるような会社であったら嬉しい。その点で、何か新しい動きを作っていけたらいいな、と考えています。それが今の大きな目標のひとつです」
イネーブルメントチームの支援によって、また一歩成長していく組織——。フレクトはいま、原田さんの歩んできた人生のような、しなやかさを得ようとしている。
画像提供/フレクト
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