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Conference:MASHING UP vol.5

「寄り道」があなたを強くする。さまよった先でつかんだ天職

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撮影:中山実華

人生は一本道で、一度失敗したら終わり。生き方や働き方が多様化している今、そんな旧態依然の価値観に捉われる必要はない。

2021年11月19日に開催したMASHING UPカンファレンス vol.5では、「『寄り道』がキャリアをつくる」と題したトークセッションを実施。

登壇者は、パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務CMOの山口有希子さん、東京大学在学中に社会問題をツアーという形で体感してもらうプラットフォーム「リディラバ」を設立した安部敏樹さん、AV女優と日本経済新聞記者を経て文筆家として活躍する鈴木涼美さん。プロノバ代表取締役社長の岡島悦子さんをモデレーターに、それぞれの人生の寄り道や、それらが人生にもたらした意義について語り合った。

10社を経験して得た独自の視野

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パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務 CMO DEI担当役員の山口有希子さん。ダイバーシティ推進役員として女性活躍やLGBTQなどを推進。

撮影:中山実華

山口さんの最初のキャリアは、リクルートコスモスのマンション営業。高価な物件を販売していたが、バブルがはじけ、1日100件飛び込み営業をする求人広告部門に社内転籍した。

「毎日、夜中の2時3時まで仕事していたら、生理がとまったりアトピーが出たりして、このままでは体がおかしくなると思って辞めました。当時20代半ばです。数十社就職活動をしましたが採用されず、『私の価値は何だろう』と思い悩んでいました」(山口さん)

キャリアについて必死に考えた結果、「海外プロジェクトがしたい」という想いを抱くようになった。その気持ちを汲んでくれた名古屋の中小企業に就職し、事務から倉庫の整理まで何でも率先して担った。そんな姿勢が実を結び、ヘッドハンターに声を掛けられ、念願の外資系ベンチャー企業へ。しかし、入社から1ヵ月後に別の会社に買収された。

「名古屋の会社では女性の総合職第一号ということで放り込まれ、なかなか大変な経験をしました。男性からは『どう扱っていいかわからない』と言われ、先輩女性からは『何故、お茶当番をしないの?』と言われ。入社後の歓迎会では上司から『結婚、出産したら辞めてくれ』と言われていましたが、数年後、退職を決めた時には『いつでも戻ってこい』と言われました。そんな経験もすべて、現在のダイバーシティ推進担当の仕事に役立っていると感じています」(山口さん)

何が寄り道なのか、決めなくていい

鈴木涼美さん

東大院卒、元AV女優、元新聞記者という多彩な肩書きを持つ鈴木涼美さん。フランクなトークで会場を魅了した。

撮影:中山実華

寄り道を恐れる必要はない。それ以上に、何が寄り道なのかを決める必要もない。

鈴木さんは慶應大学在学中にAV女優として活躍。東大大学院の修論『AV女優の社会学』で文筆家デビューを果たした。その後、日本経済新聞社に勤務し、現在はフリーランスライターとなっている。

「私の場合、両親とも研究や執筆をしていて、いつも本を読む環境にあったから、大学に行ったり新聞社に勤めたりするのは、得意なことをやっているという感覚でした。でも実は、より興味があって、楽しくてやっていたのがAV女優やキャバクラ嬢の仕事です。だから、どれがメインロードかという意識はなくて、道ごとにいろんな人格になるのが好き。寄り道だけで人生終わりそうですね」(鈴木さん)

これに、「好きなことをやるか、できることをやるかって大きなテーマですよね」と岡島さん。岡島さん自身は三菱商事、ハーバードMBA、マッキンゼーなどを経て、プロノバを設立。6社の上場企業の社外取締役を務めている。

これまでに3万人くらいのキャリアを見てきて、皆、寄り道を嫌う優等生で大変だなと思っています。かくいう私も皆さんの嫌いな“ピカピカのキャリア”ですが、52歳で母になり、ライフイベントでは相当寄り道しています(笑)」(岡島さん)

マグロ漁師から起業家へ。寄り道からつながる道

リディラバ代表取締役の安部敏樹さん

リディラバ代表取締役の安部敏樹さん。第1回 総務省「NICT起業家甲子園」優勝などの受賞歴があり、2017年には米「Forbes(フォーブス)」が選ぶアジアを代表するU-30に選出された。

撮影:中山実華

安部さんもダイナミックな寄り道経験の持ち主だ。東大在学中に始めたリディラバの活動は当初ボランティアで、その資金の一部を賄ったのがマグロ漁の仕事だった。

「マンガの影響で海賊王になろうと思って調べたら、海賊はさすがに厳しそうだ、それなら大きい魚を狙おうということで、オーストラリアで“ツナキング”と呼ばれていた人に仕事を申し込みに行きました。それから海に潜ってマグロを素手で捕まえる漁を、19歳から24歳まで続けました」(安部さん)

現在はビジネスとしてリディラバに取り組み、国内400種類ほどの社会問題にフィーチャーしている。

「ただ、僕の場合は小中高時代のほうが寄り道していたと思っています。その頃に不登校や家庭内暴力を経験して、自分自身が社会問題の当事者だったという経験が今の仕事につながっています」と安部さんは振り返る。

寄り道は違和感に気づくための機会

終始和やかなムードのセッション

終始和やかなムードのセッションで、それぞれの「寄り道体験」が語られた。

撮影:中山実華

マジョリティの中にいると、マイノリティに違和感を覚えなくなくなってしまう」と安部さん。

社会課題に関心を持ちやすい人はどんな人か、という調査では、留学や転校といった越境体験によるマイノリティ体験をした人、という結果が出ました。何か自分だけが異なる環境に身を置いてマイノリティを経験した人は、他人の痛みへの関心につながるのです」(安部さん)

つまり、「寄り道は違和感に気づくための機会」だと安部さんは指摘する。

「その意味では、会社の中ではマジョリティである男性のプロパーの社員は、越境体験がないですよね」と岡島さん。「特権を持っている人は、自分の前で自動ドアが開いてしまうから気づけない」。寄り道をしなかったことが、視野の狭さや固定観念を生んでいるのだ。

プロノバ 代表取締役社長の岡崎悦子さん

プロノバ 代表取締役社長の岡崎悦子さん。6社の社外取締役を務めるリーダー育成のプロとしての視点から「寄り道」のメリットを語った。

撮影:中山実華

寄り道は「強さ」になる

視野の狭さは、弱さにもつながる。男性のほうが圧倒的にうつや自殺が多いのは、「寄り道」をしないビジネスマンが多く、退職後にコミュニティを持てないからだ、と安部さん。1本の道でまっすぐ来たがために、その道が途切れると折れてしまう。

「確かに、寄り道によって複数の道を経験していると強いですよね」と鈴木さん。

「AVでうまくいかなくても文筆の世界があると思うし、逆もそう。2つのラインがあることで、どっちかがなくなっても生きていけるんです」(鈴木さん)

自分との対話を続けていれば、どんな寄り道も怖くない

最後に、「20代の自分に何を言いたいか」と岡島さんが投げかけた。

「いろいろ悩んで立ち止まってしまっても、『大丈夫だよ』と言いたい」と山口さん。

「自分はダメだ、出来ないと思うんじゃなくて、やりたいならワイルドな選択をしてやればいい。何とかなりますから。すべてのことは自分の糧になっていくのだから。今になってすごくそう思いますね」(山口さん)

安部さんも、「僕も『そのままでいいんじゃない』と言いますね」とうなづく。

「ただ、自分との対話の量が一定以上ないと、自分で道を作るのは難しい。多くの人が目の前に何かが起こったときに悩みますが、自分との対話を続けていると、問題が出たときには答えが出ている。リスクをとるためにはそれが重要だと感じます」(安部さん)

グラフィックレコーディング

セッションの最後には、登壇者のトークの内容を視覚的に表現したグラフィックレコーディングが披露された。

鈴木さんは「ただ、女性の人生は無数の選択の連続で、若いうちから日々重要な決断をしなければいけないのは酷ですよね」と指摘。

テーブルの上に選択肢がごちゃっとある中から、自分が明日行きたいと思うスペースを作るだけでもいいかもしれません。そして、私がエロの分野を突き詰めていかなかったように、いつの間にか好みが変わることもあるんです。先のことは考えずに、やりたいことをやっていいと思います」(鈴木さん)

さまざまな寄り道を経験し、独自の人生を歩む登壇者たちの声には説得力がある。岡島さんは「自分の『好き』がわからないと言うこともよく聞きますが、迷っていたらやってみたら?ということですね。考えて、やってみたことは、すべて無駄にはならないはずです」と締めくくった。

想定外の寄り道や休息があったほうが、人生はきっと豊かになる。そしてその先に、自分を最も輝かせる天職が待っていることもあるのだ。

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撮影:中山実華

MASHING UP conference vol.5

「寄り道」がキャリアをつくる

山口有希子(パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務 CMO DEI担当役員)、岡島悦子(プロノバ 代表取締役社長)、安部敏樹(Ridilover / リディラバ 代表取締役)、鈴木涼美(フリーランスライター)

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中島理恵
ライター。神戸大学国際文化学部卒業。イギリス留学中にアフリカの貧困問題についての報道記事に感銘を受け、ライターの道を目指す。出版社勤務を経て独立し、ライフスタイル、ビジネス、環境、国際問題など幅広いジャンルで執筆、編集を手がける。

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