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ソーシャルイノベーションには、なぜ共創が必要か?

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サービスを選ぶ際、SDGsや社会的意義を重視するなど、消費者の意識が変化してきている。これからの時代、消費者に選ばれる、よりよい社会をドライブさせるビジネスとは? 社会貢献の新しい形とはなにか? 本特集ではインタビューや対談を通じて、共創で生まれる新しいソーシャルイノベーションの価値を紐解き、その可能性を紹介していく。

第1回は、ima(アイマ)代表取締役CEOの三浦亜美さんと、東邦レオ代表取締役社長の吉川稔さんの対談をお届けする。

1965年創業の東邦レオは、エコ建材や都市緑化技術の開発を主業務とし、57年にわたって堅実な成長を遂げてきた。吉川さんはファイナンス、ラグジュアリーブランドのセレクトショップ、カフェという経歴を経て、2016年から同社社長に就任。隈研吾氏とともに「地球OS書き換えプロジェクト」を始動するなど、社内外のネットワークを活用しながら、人と人が緩やかに交わる「グリーンなライフスタイルの街づくり」を牽引している。

一方、imaの三浦さんはAIを活用した伝統産業承継システムを考案日本酒、伝統工芸、漁業などに携わる“匠”たちが生み出す世界と、最新のテクノロジーとの“あいま”をつなぎ、新たな価値を創出することを使命として取り組んでいる。異なる視点からソーシャルイノベーションを生み出す二人に、産官学を越えた共創の未来について聞いた。

三浦亜美(みうら・あみ)
ima代表。株式会社サンブリッジというベンチャーキャピタル(VC)で海外クラウドサービスの日本法人立ち上げや、インキュベーション施設の立ち上げなどを行う。2013 年、株式会社 ima を創業。日本酒、伝統工芸品、ユニークな技術などに最新のテクノロジーや VC での知見を持ち込み、事業継承の仕組みをつくる。2016 年、一般社団法人 awa酒協会を設立。2017 年、つくば市まちづくりアドバイザーに就任。

吉川稔(よしかわ・みのる)
東邦レオ代表。1965 年 10 月大阪まれ。89 年 神戸大学農学部卒業、住友信託銀行に入社。2001 年 株式会社リステアホールディングス 取締役副社長。 バレンシアガジャパン取締役。 株式会社リステアインベストメント(ゴールドマンサックスと JV) 代表取締役。10 年 クール・ジャパン官民有識者会議委員。14 年カフェ・カンパニー株式会社 取締役副社長。16 年 7月 株式会社 NI-WA 創立 代表取締役社長に就任、現職。16 年 11月 東邦レオ株式会社 代表取締役社長に就任、現職。

経済的価値と社会的価値のバランスをどう取るか

東邦レオ代表の吉川稔さん

東邦レオ代表の吉川稔さん。「東邦レオは現在ソーシャルインパクトを高める方向にリソースを割いている」と話す。

撮影/柳原久子

対談の会場となった「kudan house」(東京・九段)は、吉川さんが代表取締役社長をつとめる株式会社NI-WA(東邦レオの関連会社)が運営する会員制ビジネスイノベーション拠点。築100年近い登録有形文化財「旧山口萬吉邸」を、「歴史」と「和」、「現代アート」の融合をテーマに、未来へ向けたイノベーションを生み出す会員制ビジネス拠点として生まれ変わらせ、現在は、会員企業の研修会や展示会、多彩なプログラム開発により、エコシステムを構築している。

対談の会場となったkudan house(東京・九段)。

対談の会場となったkudan house(東京・九段)。

吉川稔さん(以下、吉川):これだけの一等地で、庭だけで100坪もの土地がある。ビジネスとしては建て替えてビルやマンションにするのが合理的だったかもしれません。しかしそうではなく、この邸宅をどうしたら良い形で残せるのかという永続性の方向から考えてできたのが「kudan house」。東急、竹中工務店、東邦レオの3社が共同で建物の文化財認定を支援し、組織の枠を超えたコミュニケーションを促すイノベーションの拠点として再生しました。

いま長期的に存続意義のある会社を作るにはどうしたらいいかと考えると、経済的なリターンと、社会的にプラスのインパクトを生み出すことのバランスを取らなければいけない。利益は高いのに社会にマイナスのインパクトを及ぼす企業は、非常に悪いイメージを消費者に与えます。

ベストは両方がプラスになることですが、いま東邦レオはソーシャルインパクトを高める方向にリソースを割いているところ。色々大変ですが、上場していない会社だから、自らの経済的リターンのなかで内部留保を生かしつつ、自由度高く動けるのは強みですね。

感情が動いた瞬間が判断の軸になる

ima代表の三浦亜美さん

ima代表の三浦亜美さん。テクノロジーの力で伝統産業を次世代につなぎ、新たな価値を生み出している。

撮影/柳原久子

——今すぐには経済的な利益が出ないけれど、社会によりよいインパクトを与える可能性がある。そうした事業に出会ったとき、お二人が「これだ!」と決断する軸はどこにあるのでしょう?

三浦亜美さん(以下、三浦):私の場合は「これおいしい!」とか、「きれい!」とか、感情が大きく動く瞬間があるんです。あるいは「知っていると思っていたけど、もっとすごかった」とか。でも、このままだとなくなってしまう……。そういう日本の伝統技術や食文化との出会い、そのときに感じた心の動きがモチベーションになっています

酒作りや伝統工芸などレガシー産業の悩みは、大きく言うとブランディング、プライシング、そして属人的工程と事業承継に分けられます。これまで出してきたソリューションのなかで、ブランディングとプライシングの部分では、「一般社団法人awa酒協会」の活動があります。自然発酵のスパークリング日本酒を世界に広めていけるように、「awa(あわ)酒」という新しい定義を作ったことで利幅が上がり、協働する蔵元も8蔵から25蔵に増えました。

事業承継の部分では、「霞ヶ浦シラウオ」の付加価値を高めてシラウオ漁を持続可能にするために、シラウオの鮮度を客観的に評価するAIを茨城県行方市とともに開発しました。また、これまで人から人へつないできた日本酒の醸造過程や、漁業、伝統工芸の技術が失われないように、間にAIをかませることで、次世代につなぐ仕組みづくりなども行っています。

「日本のよき中小企業」が秘めるポテンシャル

微笑む吉川さん

確かな技術と人材をもつ「日本の中小企業には、大きなポテンシャルがある」と語る吉川さん。

撮影/柳原久子

——お二人は今日が初対面ということで、お互いに「自分の会社は“〇〇の会社”だと説明しづらい」と仰っていましたが、目指す方向性など共通点が多くありそうですね。

三浦:実は私が九段下で一番好きな場所が、こちらの「kudan house」なんです。2018年にオープンしたときも、友人が「こんなに素敵な場所が九段下にできた」とSNSにたくさん写真をアップしていて。それを公益法人やNPO法人ではなく、一企業が利益剰余金を活用しながら運営していると伺って本当に驚きました。

吉川:東邦レオは日本のよき中小企業の典型のような会社で、創業以来借り入れをしたことがないんです。事業内容も明確だったのに、僕が来て引っ掻き回している(笑)。でも、今は利益の最大化よりも、長期的にどう継続できるかが問題。存在を必要とされる企業になるために、自分たちが未来に対してどんな価値を生み出していけるのかが大事だと考えています。

確かな技術と人材をもつ日本の中小企業には、大きなポテンシャルがあるんです。ただ一つ欠けがちなのが、人の思い・技術・資金をどうクリエイティブに生かしていくかというイノベーションの視点。うちの会社で何か面白いことができて、「この会社の規模でできるなら、うちにもできる」と思ってくれる会社がどんどん増えて繋がっていけば、相当大きなことができるのではないかと思います。

三浦:かつては腕のある職人や役者に私財を投じて活躍の場を与え、文化を後世に伝える役目を担った「旦那衆」と呼ばれる人々がいました。吉川さんがなさっていることは、クリエイティブを通して次の世代に「旦那衆」をつないでいくことのように思えます。

吉川:そうかもしれません。建物の再生やリノベーションはひとつの手段であって、一番やりたいのは企業そのもののイノベーションなんです。

価値観が違うほど大きなイノベーションが生まれる

笑顔で話す三浦さん

「相関が遠いもの同士が相互に作用することでイノベーションが起きる」と三浦さん。

撮影/柳原久子

——この対談のテーマは「共創」ですが、価値観が異なる人・企業・組織が一緒に何かをすることの意義を、お二人はどう感じていますか。

三浦:イノベーションというものは、あまり関係がないもの同士、相関が遠いもの同士が相互に作用することで起きるというのが私の考えです。例えば、生まれた年代やジェンダーが違うだけで、使うツールも得られる経験も異なってきますよね。大企業の役員の方にお会いすると、経営者として矢面に立ってきた回数というか、経験値の違いを感じることもあります。

企業の取締役会はオールドボーイズクラブだと揶揄されることもありますが、実際に話すと皆さんすごい“ファーストペンギン”なんですよね。驚くようなことを戦前・戦後のレベルでやっている。もしも同世代だったら友達だったかもしれないし、一緒に何かやっていたかもしれない。きっとAIも活用していただろうし、この人が女性だったらどんなふうに道を切り開いただろうとか、色々と想像してしまうんです。

そういう時代や業界を超えた先駆者と、世代を超えてつながることができたら、社会を変える強い起爆剤になるんじゃないか。そう考えるとウキウキワクワクして、「一緒に何かやりましょう」って言いたくなる。そういう気持ちで接すると自ずと尊敬しあえるし、そこから何かが生まれていくという感じがしています。

吉川さん、三浦さん

撮影/柳原久子

吉川僕も自分と異なるからこそ興味があるというか、一緒だと興味がわかない……というか想像がつく。想像がつくと仕事はスピーディーだけど、そんなに心がワクワクしないんですよね。異なるものと出会うとワクワクするし、それを仕事として設定すれば、コミュニケーションも質量ともに増えざるを得ない。

価値の高いものを創りたいというよりは、“出会ってしまう”という感じ。出会ったら一緒に仕事したいし、長く続く関係にしたいからアイデアも出る。だから「共創しよう」と思って仕事をしたことはないけれど、結果を振り返ると、ほとんどが共創型になっているなぁと思いますね。

例えば「kudan house」も、山口萬吉さんがこの建物を建てたのは1927年ですが、僕とうちのチームが山口さんと共創している状態なんですよね。共創は現実に会ってコミュニケーションしている人とだけではなく、100年前の時間軸の人ともできる。僕が社長をしている東邦レオとの関係もそうで、自分そのものではなく、東邦レオの創業者が現代に生きていたらどんな経営をするだろうと常に考えています。創業者と共創しながら経営しているという感覚ですね。

三浦:ある意味、イタコみたいですね(笑)。

吉川:そうそう。自分の心の中に乗り移ってもらう。たぶん僕の心だけだったら、もっとビジョンやミッションのレベルが低いと思います。だから逆に言うと、魂が自分よりも高いなぁと思う人と共創したい。僕が共創するときは、相手の心の部分を自分の中に入れて、そこに自分の頭、体、経験の部分を加味したらどうなるかを考えるという感じです。

【後編に続く】

撮影/柳原久子

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田邉愛理
ライター。学習院大学卒業後、センチュリーミュージアム学芸員、美術展音声ガイドの制作を経て独立。40代を迎えてヘルスケアとソーシャルグッドの重要性に目覚め、ライフスタイル、アート、SDGsの取り組みなど幅広いジャンルでインタビュー記事や書籍の紹介などを手がける。

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