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ボーダーを超えて。創業10周年のandu ametが見つめるサステナブルの「その先」

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画像:MASHING UP

大量生産・大量廃棄を前提としたビジネスモデルなど、ファッション業界の構造や慣習が環境に与える負荷について、ますます議論が活発化している昨今。エシカルな消費の重要性が叫ばれる今、私たちはどのようにファッションと環境配慮に向き合うべきなのだろう。

SDGsというワードが大きく取り上げられるより前から、この課題と本気で向き合ってきたブランドが、世界最高峰の羊革とも呼ばれるエチオピアシープスキンを用いたレザーバッグや小物の製作販売を手がけるandu amet(アンドゥ アメット)だ。創業から10周年という大きな節目を迎える今、ブランドを率いる鮫島弘子さんは次の10年や、サステナビリティの「その先」をどう捉えているのか。

コロナ禍。試行錯誤の末生まれた、サステナブルなバッグ

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鮮やかなピンクが目を惹くバッグは、「Shubu-Shubuコレクション」の一つ。ブランド名「andu amet」とは、エチオピアの言葉・アムハラ語で「一年(ひととせ)」の意。「幸せなときも悲しいときも、いつもそばにいて、長い時間を共に重ねていける、大切なパートナーのような製品を作って行きたい」という思いを込めて、名づけられた。

画像提供:andu amet

エチオピアは最高級の羊皮の産地でありながら、これまでは原料である皮の状態での輸出に依存していた。それらが、例えばイタリアでなめされるとイタリア製の革となり、フランスで縫製されるとフランス製のバッグとなって付加価値が付くものの、産地であるエチオピアに富はもたらされず、職人の技術も育たない状態が長く続いていたのだという。

ブランド創業前、国内化粧品メーカーでプロダクトデザイナーとして働いていた鮫島さんはその現状を変えるべく、andu ametをスタートさせた。この10年間でファンも増え、着実にブランドは成長。「エシカルでありながらラグジュアリーな体験を生み出すブランド」として、独自の地位を築いている。

しかしandu ametも2020年以降、エチオピア国内の内戦と、新型コロナの影響をダブルで被った。鮫島さんは、この数年を「試行錯誤の連続だった」と振り返る。

「幸い工房があるエリアは内戦の被害を受けておらず、スタッフも工房も無事だった。しかし、戦争による急激なインフレや国の外貨不足により、ヨーロッパ諸国から皮をなめす薬剤が調達できない状況に。タンナー(革なめし工場)から革の仕入れがストップしてしまう状態が、約1年続いた」

そこで試行錯誤の末生まれたのが、端切れを使って作るバッグだ。通常、皮革はお腹の部分は柔らかく、バッグを作るのには不向きであるため、一つの革から製品を作る際にどうしても端切れが出てしまう。そこで、鮫島さんは創業から10年間ストックしておいた、柔らかい部分やシワの多い部分など、通常の工場なら捨てられることも多い規格外のレザーを使い、新たなシリーズ「Shubu-Shubuコレクション」を開発。

柔らかくて繊細な素材を使いつつも十分な強度が保たれるよう、それぞれに異なる芯材を裏打ちしたり、縫製方法を変えたりと、職人の技術と創意工夫が存分に活かされている作品だ。動物の命を余すことなく使い、新たな価値を吹き込んだバッグは顧客にも好評で、発売後すぐに完売するアイテムがあるほど人気だという

この数年で、消費者のサステナビリティに対する理解が急激に進んだと感じている。そういった風潮と、弊社が生み出したソリューションがうまくマッチしたのでは」と、鮫島さんは語る。

「良いレザー」とは? 消費者への啓蒙にも注力

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andu amet CEOの鮫島弘子さん。エチオピアの工房とzoomでつなぎ、オンライン取材を行った。

画像:MASHING UP

近年、アニマルフリーのファッションアイテムを求める声も多く、レザーに対する世間の目は厳しくなっている。しかし、「実は、アニマルライツの観点から見ると、エシカルでないレザーはごく一部」と鮫島さん。クロコダイルやオーストリッチなど、商品を作るために動物を屠殺するケースは深刻な問題だ。しかし彼女曰く、多くのレザープロダクトは、食肉の副産物。皮革として使用されなければ産業廃棄物として廃棄されてしまうのだという

「合皮をエコレザーと呼称するケースも散見される。本革と比較して安価で手に入れやすい、手入れが楽などのメリットがあるが、マイクロプラスチックや寿命の問題もある。ある側面だけを見て判断するのでなく、課題の本質を捉え、自分にあった選択肢を選ぶことが大切

また、業界全体で変革していくことが必要だ、と鮫島さん。「今の状況は、蛇口の水を閉めずに、すでに流れた水を慌てて拭いているようなもの。ファッション業界が大量生産というビジネスモデルを改めない限り、大きく変わらない」とし、大量生産・大量消費により利益を得るのではなく、良いものを作り、付加価値を上げることで利益を生み出し、雇用も守るなど、ビジネスモデルを構造的に改める必要があると語った。

SDGsウォッシュが溢れる時代だからこそ、本質を知ることが大切

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工房でスタッフたちと。この数年、鮫島さんはエチオピアと日本を行き来してビジネスを運営するなかで、立ちはだかる「Border」を誰よりも実感したという。一方で、自分一人が健康で安全なだけでは身の安全をキープできないことも再認識し、「世界はすべてつながっている」という事実に改めて気づかされたという。

画像提供:andu amet

今後の構想についても尋ねた。次の10年は、andu ametのストーリーやフィロソフィーをより深く消費者とシェアしつつ、アドボカシーにも力を入れていきたいという。例えば、2022年2月にリニューアルを行ったWebサイトでは、同社の今年を象徴するステートメント「Beyond Borders」を掲げ、現地のアトリエで作業している社員の様子やプロダクトの誕生秘話など、ものづくりの背景にあるストーリーに焦点を当てている。

「ブランドを立ち上げた10年前は、エチオピアで製品を作っていると話すと“チャリティブランド”と認識されることもあったが、今は時代のムードも変わった。もっとブランドのフィロソフィーを打ち出し、そこに共感してくれる消費者と共にブランドを成長させていきたい。また、少量生産は私たちの原点。これからも大規模なビジネス拡張はせず、どのようにソーシャルインパクトを生み出してゆくかが課題

これまで、数々の大企業やグローバル企業とコラボレーションプロジェクトを進めてきたandu amet。新たなプロジェクトとして、一緒にものづくりをするだけに留まらず、アフリカにおけるビジネスやサステナビリティの本質を深く学べる、企業向けのサービスも構想中だという。

雇用状況や、モノづくりの現場が抱える課題は、現地にいるからこそわかる部分も多い。新サービスでは、海外駐在や長期出張では養えない視点を提供できると思います。企業も消費者もサステナビリティやエシカルについて、『前例や実績があるから』『ニュースで見たから』などではなく、自分で学び理解することが大切」

私たちの前に立ちはだかるボーダーを軽々と超え、今の時代に必要な視点を提示してくれるandu ametの製品。これからも、エシカルのその先にある新たな価値観を届けてくれるはずだ。

写真展「Beyond Borders」

創業10周年を記念し、現在、エチオピアの今を伝える写真展「Beyond Borders」を表参道コンセプトストアにて開催中。生産地エチオピアの若者たちがスマホで撮影した現地の風景から、プロダクトが作られたストーリーに想いを巡らせてみてはどうだろう。

会場:andu amet コンセプトストア(表参道)
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4丁目16−12 青山ビル 1F
展示期間:2022年2月3日(木) ~3月28日(月) ※定休日を除く
写真提供:Bored Cellphone Addis Ababa
協力:Ethiopian Art Club

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MASHING UP編集部
MASHING UP=インクルーシブな未来を拓く、メディア&コミュニティ。イベントやメディアを通じ、性別、業種、世代、国籍を超え多彩な人々と対話を深め、これからの社会や組織のかたち、未来のビジネスを考えていきます。

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