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「自分を肯定できる社会」にアップデートしよう。ジェンダー平等の実現へ向けて、今できること

画像提供/スリール

世界規模で多様な価値観が求められる昨今。日本は、性差に関係なく望む仕事やポストに就ける、“多様性に富む社会”と胸を張って言えるだろうか。

3月8日の「国際女性デー」をきっかけに、日本のジェンダー格差やありたい未来について考えるオンラインイベント「Break the Bias #2030理想の世界 ~日本のジェンダー格差とこれからの未来」が、2022年3月18日に開催された。

パネリストは、立教大学経営学部教授の中原淳さん、LOFホテルマネジメント日本法人社長の薄井シンシアさん、ソフィアメディ代表取締役社長兼CEOで、リクルートホールディングス サステナビリティトランスフォーメーション部パートナーの伊藤綾さん、NO YOUTH NO JAPAN代表理事の能條桃子さん。

女性の活躍を阻む日本のジェンダー格差について、また、2030年を見据え次世代に繋ぎたいバトンについて、モデレーターを務めたスリール代表の堀江敦子さんを交え、トークセッションを行った。

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モデレーターを務めたスリール代表・堀江敦子さん。『自分らしいワーク&ライフの実現』をミッションに、企業向けコンサルティング、ライフとキャリアのデザイン教育などのサービスを手がける。

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「バイアスゼロ」の人はいない。自分の思い込みに気づくことが必要

スリールが2017年に発表した「両立不安白書」によると、出産を経験していない働く女性の92.7%が、「仕事と育児の両立に不安がある」としている。

出産を経験していない働く女性(約350名)へのアンケート結果

出産を経験していない働く女性(約350名)へのアンケート結果。92.7%が「仕事と育児の両立に不安がある」としている。

出典:スリール「両立不安白書」

アンケートには、「夜中まで仕事をしながら子育てはできない」「ワーママの現状を見聞きすると大変そう」といった不安の声が寄せられた。

そこで、自分らしく生きるうえで障害になりうる、個人や社会構造の中にある固定観念、「私の周りにあるジェンダーの壁(バイアス)」について、各パネリストに話を聞いた。

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双子の男の子を出産後、『ゼクシィ』編集長として復帰し、“定時帰り”を目標に働き方を変えたという伊藤綾さん。

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ブライダル総合サービス『ゼクシィ』の元編集長でもある伊藤さんは、産後、職場復帰をした当時をこう振り返った。

「周りにママで編集長をしている人がいなかったんです。『前例がないことをするのは自分には無理だ』『自分はマイノリティだ』と思いすぎていたのが、私のバイアスだったかもしれません」(伊藤さん)

定時で家に帰るため、会議を短縮するなどあらゆる工夫をしたという伊藤さん。それらがいい結果に繋がったと振り返る。

「私が働き方を変えると、チームメンバーも一緒に働き方を意識してくれるようになりました。そうすると視点が増えて……。今まで思いつかなかった企画が形になったり、あのときの経験は財産になりました」(伊藤さん)

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専業主婦を経て、17年ぶりに再就職したときは時給1,300円からスタートした、という薄井シンシアさん。その後、10年で企業のトップに就いた。

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続く薄井シンシアさんは、17年間の専業主婦を経て47歳で再就職。現在、企業のトップとして活躍している。

「20代の頃は、キャリアも結婚も子どもも欲しい、と欲張りでした。でも、子どもが生まれたとき、限界を受け入れて専業主婦に。今年63歳、20代の頃に欲しかったものを妥協せずに手に入れました。時間はいっぱいあります! 同時は難しくても、自分のやりたいことを一つずつ現実にしていけば大丈夫、と伝えたいですね」(シンシアさん)

自身の人生を“バイアスブレイク”のロールモデルにしてほしい、と激励のメッセージを寄せる。

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「誰か他の人がリーダーをやると言っていたら、『NO YOUTH NO JAPAN』の代表をやっていなかったかも」と笑顔で語る能條桃子さん。

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Z世代の一人である能條さんは、偶然、自身のバイアスが打ち破られた経験を語った。

「私はクラスの学級委員長すらやったことがなく、リーダーを裏で支える方が向いていると思っていました。大学4年生のときに立ち上げた『NO YOUTH NO JAPAN』のリーダーになったのは、やる人が他にいなかったから(笑)。やってみると意外にできるものだな、と今は感じています」(能條さん)

「踏み出すのは大変だったと思いますが、原動力は?」と堀江さんから質問されると、「大学時代に留学していたデンマークで、41歳の女性が首相になったこと同じ歳の女の子が国会議員だったこと」と回答。

そして、教育や組織開発を専門とする中原さんは、社会構造的な視点で“バイアスとはなにか”を解説。

「女性だけではなく、あらゆる人のキャリアや行動は、個人的な要因と環境要因で決まります。バイアスというのは個人的要因に属します。でもね、バイアスがゼロの人はいません。バイアスに囚われずに生きるためには、自分がどんな思い込みに浸っているのか気づく必要がある。さらに、個人だけが変わってもダメで、環境要因である社会が変わることが大事です」(中原さん)

中原さんは、「社会にある一番の問題は“長時間労働”。これを見直していかないと、いい結果は生まれない」とこのコーナーを括った。

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「みんなバイアスだらけ。他人からのフィードバックなどのきっかけがないと、自分ではなかなか気づけない」と立教大学経営学部教授の中原淳さん。

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封建的な価値観は「アンインストール」するべき

バイアスが障害になっているのは、女性に限ったことではない。能條さんは「男女平等の価値観を持っている男性が、結婚をして家事の分担を頑張っても、上司も同じ価値観でないと両立するのは厳しい」と言う。

では、誰にとってもバイアスなき社会を実現するためにどうすればいいのか? “次の世代に繋ぎたいバトン”“アップデートしたいこと”について、パネリストが意見を交わした。

企業の代表と子育てを両立してきた伊藤さん。次世代に渡したいものとは?

「働き方や休み方など“選択肢”をたくさんつくって、周りの人や次世代に“プレゼント”できる自分で在りたいと思っています」(伊藤さん)

バイアスや違和感に気づくのは、大事なこと。歓迎して現状を変える力にしたい」という伊藤さんに、「違和感は、アップデートできる“のびしろ”があるということですね!」と堀江さんも賛同する。

次世代では全ての人にとって格差のない社会であってほしい、と話すのは、能條さん。

「性別の問題だけでなく、たまたま生まれた地域や家庭環境でも不平等が生じないように、 “みんなにとってのジェンダー平等”という議論になってほしい」(能條さん)

そして、日本の多様化には疑問を感じるというシンシアさんは、「常に誰かが居心地の悪さを感じるなら、多様性のある社会ではない」と訴える。

「私が日本に来た1980年当時は『働く母』が、そして現在は子育てに専念したい『専業主婦』が、肩身の狭い思いをしています。『マジョリティーに入っているから大丈夫』ではなくて、自分の価値観に沿って生きられる世界になってほしい」(シンシアさん)

最後に、中原さんは、「誰もが自分を好きになれる社会」へアップデートし、障害になるものはアンインストールすべきだと力強く語った。

「大学で『自分のことが嫌いだ』という学生に会います。彼らが自分を愛せないのは、古臭い環境の枠にはめられたことが原因。自分を肯定できるような社会にアップデートしなくてはならないですよね。封建的な考え方、昭和時代はアンインストールしなきゃダメです!」(中原さん)

女性がいきいきと活躍できる環境は、誰にとってもいい場所

登壇後の様子

「Break the Bias #2030理想の世界 ~日本のジェンダー格差とこれからの未来」を終えて。

画像:MASHING UP

最後に、堀江さんから「バイアスがありすぎてどう在るべきかわからない、という人はどうすればいいでしょうか」との問いかけに、シンシアさんがこう答えた。

「若い皆さんは先が見えないので想像ができないかもしれませんが、人生は本当に長い。急いで生きることはないですよ。やりたいことがあるなら、『不可能はない!』という気持ちでとにかくチャレンジして欲しい」(シンシアさん)

中原さんも、「長く生きていると、不測の事態は誰にでも起こりうる」と続けた。

「育児もある、介護もある、自分が病気になるかもしれない。大きな出来事があったときに『私の人生、詰んだ』と思っていたらキリがありません。今回は女性を中心に考えてきましたが、女性がいきいきと働けて生きられる環境は、誰にとってもワクワクと生きられる場所。『そういう社会をつくっていきましょう』ということに尽きると思います」(中原さん)

2030年は、皆がいきいきと生きられる世界になっているだろうか。そのためには、個人も社会も、あらゆるバイアスを打ち破る努力をし続ける必要があるだろう。

取材・執筆/石上直美

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石上直美
ライター・エディター。出版社にてウェルネス誌・カルチャー誌の編集者として勤務後、フリーランスに。現在は環境・ジェンダー問題などSDGs関連の記事や、ライフスタイル、インタビュー記事を中心に取材・執筆。また、社会問題をテーマとした映画レビューも手がける。

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