今、あらゆる企業がD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を経営課題として重視し、インクルーシブな組織づくりに取り組んでいる。 では、国籍や年齢、性別、価値観など、一人ひとり異なるメンバーの能力を最大限に発揮し、真にインクルーシブなチームをつくるには? またそのメリットとは?
2022年3月24日に開催されたMASHING UP SUMMIT 2022では、これらを考えるトークセッション「メンバーの能力を開花させる、インクルーシブなチームの築き方。」が行われた。
登壇したのは、様々な業界の企業の取り組みを支援しているPR Tableの久保圭太さんと、カインズでD&Iを推進している横井良典さん。2人のクロストークで、チームマネジメントの秘訣を探った。
インクルーシブな状態とは、自分らしくいられる居場所があること
カインズの横井良典さん。カインズ 人事戦略本部 人事戦略・企画部 健康経営推進G グループマネージャー。前職はメルカリの労務担当として、D&I推進に携わっていた。
撮影:中山実華
「世界を、日常から変える。」をビジョンに掲げ、さらなる成長のためにチャレンジを続けているカインズ。2021年には、従業員一人ひとりが、より自分らしい働き方を実現できるよう、新たな人事コンセプト「DIY HR ®(じぶんらしい働き方、創ろう。CAINZのDIY HR®)」(※)を打ち出した。働き方やキャリアパスを、自分らしく、自らで創っていこうという意味が込められている。
そのカインズで、D&Iやウェルビーイングの領域を担当している横井さん。入社して半年、試行錯誤しながらチームビルディングを実践している段階だという。
セッションは、その横井さんと久保さんが、3つの質問に答えていくという形で進められた。1つ目の質問は、「インクルーシブな状態って?」。そもそもどんな状態が、インクルーシブなのか。 この問いに対して、横井さんは「居場所感」というワードをあげた。
「メンバーが、『ここに居ていいんだ』と感じられる居場所をつくることが大切で、それは、心理的安定性にもつながると思っています。そのためには、自分自身だけでなく、周りのメンバーのアクションも必要。インクルーシブは与えられるものでなく、一人ひとりが関わりながら一緒につくっていくものではないでしょうか」(横井さん)
カインズの「じぶんらしい働き方」にも通じる内容に、久保さんは共感。そして、自身は「違和感のない自分でいられること」と回答した。
「多様性が実現できていても、そのメンバーたちがモヤモヤを抱え、自分の強みを発揮できていなければ、違和感を抱えたまま働くことになってしまう。ただ多様性がある状態ではなく、その上で違和感なく働くことができている状態が重要だと思っています」(久保さん)
※ DIY HR®は商標登録を完了しています。
互いを理解し、課題解決のために行動する傾聴の姿勢が大切
「チームビルディングの秘訣は?」という問いに、「相互理解」「傾聴」というキーワードが飛び出した。
撮影:中山実華
では、そのインクルーシブな状態を目指すための「チームビルディングの秘訣は?」。この2つ目の質問に、横井さんは自身の現状を踏まえて、「相互理解」と回答した。「チームビルディングにはいくつかの段階があると考えています。私はまだ入社して半年、チームのメンバー一人ひとりについて、カインズという会社について、相互理解することを丁寧に行っている段階です」
ただ、個々が自分らしさを追求するあまり、多様な個性がぶつかり、相互理解できないこともあるのではないか。自分らしさと相互理解を両立させるためにはどうすればよいのか。久保さんがそう問いかけると、横井さんは「共通言語があることで、お互いがしっかりつながっている組織をつくれるのではと思っています」と答えた。
「組織や企業における共通言語は、会社のミッション、ビジョン、バリュー。そこに共感しているからこそ、同じ場にいるのだと思いますし、コミュニケーションもとりやすい。共通言語をしっかりつくることが大切ですね」(横井さん)
チームビルディングの秘訣として、久保さんがあげたのは「傾聴」。
「チームメンバーもそうですが、お客様やパートナーに対しても、しっかり傾聴すること。そこで大事なのは、話を聞くだけでなく、課題を特定して、課題を解決するために行動すること。すべて行ってこその傾聴だと思っています」 (久保さん)
PR Tableは、「つよく、やさしく、かっこよく。」というバリューを掲げているが、その中の「やさしく」が、まさに傾聴することだという。「本当にやさしい人は、相手が困っていることに気付き、課題解決のために自発的に行動する、という傾聴ができる人」と久保さんは言う。
インクルーシブであればこそ、より良い商品・サービスを提供できる
PR Tableの久保圭太さん。前職も含めて、ダイバーシティやインクルーシブなチーム・組織づくりに取り組んできている。
撮影:中山実華
最後の質問は「インクルーシブであることのメリットって?」。インクルーシブなチームビルディングをしてきた上で、そうすべきメリットは何か。
このテーマに対して、横井さんは「くらしを体現」、久保さんは「笑顔が連鎖する」と答えた。
「私たちが届ける商品や接客サービスに直に生きてくると考えています。メンバー一人ひとりが安心感を持っている、組織としてインクルーシブな状態であるからこそ、お客様に良い商品、良いサービスを提供できる。お客様がどんどん多様化している時代にあって、インクルーシブでない状態で商品開発やサービスを行っていても、多様な価値にお応えできません。『Kindnessでつながる』というカインズのコアバリューを実現するためにも、インクルーシブでなければならないのです」(横井さん)
D&Iとビジネスは必ずつなげて考えるべきとも語り、「グローバルカンパニーを目指していた前職のメルカリでは、多様な価値観を持った人に向けてサービスを展開するためには、多様性が必要だと考え、D&Iを推進していました。外国人採用も積極的に行い、今ではエンジニアの半数以上が外国人になっています」と事例をあげた。
久保さんも大きく頷き、「サービスの質向上のためには、組織の多様性は重要」と同意。PR Tableでも、男性中心だった以前に比べて、今は女性社員が6〜7割を占め、さらに色々な業界から人が集まることでサービスの幅が広がり、お客様満足度も向上していったという。
「私が考えるインクルーシブであることのメリットは『笑顔が連鎖する』ことです。誰もが違和感を持たず、インクルーシブな状態でいられると、生産性は上がると思います。生産性が上がるとサービスの質も上がり、顧客満足度も、会社の業績も上がる。お客様も従業員も笑顔になる。そんな風に笑顔が連鎖する世界をつくることができるのではないでしょうか。これは当社がビジョン(働く人の笑顔が“連鎖”する世界をつくる)として掲げていることでもあります」(久保さん)
どちらの回答も、両社のミッションやビジョンにつながっている。D&Iに取り組むのは何のためなのか。企業のミッション、ビジョン、バリューを共通言語として、「ビジネスにつながっていることを伝えなければ、D&Iを推進することは難しい」という横井さんの言葉に目が開かれた。インクルーシブな状態で、より良い商品やサービスが増え、笑顔が広がる。そんな世界に期待が膨らんだセッションだった。
PR Tableは、「働く一人ひとりのストーリー」を通して企業情報を発信するサービス「talentbook」を提供している。企業規模や業種業界を問わず、社員一人ひとりにスポットを当て、記事作成、発信、計測・分析を繰り返すことで、社員同士の相互理解を深めるだけでなく、商品やサービス、組織の魅力を伝え、採用広報や企業ブランディングにも役立てることができる。
「企画の難しさ」「ノウハウ不足」「継続できない」といった、企業の情報発信における課題を解決するtalentbook。累計1,000社以上、5,000記事以上のストーリーの中には、カインズをはじめ、チームビルディングにまつわる事例もたくさん詰まっている。インクルーシブなチームをつくるための大きなヒントになるだろう。
撮影:中山実華
MASHING UP SUMMIT 2022
メンバーの能力を開花させる、インクルーシブなチームの築き方。
久保 圭太(PR Table PR/Evangelist)、横井 良典(カインズ 人事戦略本部 人事戦略・企画部 健康経営推進Gグループマネージャー)
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