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「差ではなく違いを活かせ」。世のため人のため、変わらぬ信念を胸に有事に立ち向かう

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画像提供:本田技研工業

新型コロナウイルス感染症の影響で、Hondaも働き方を変える必要性に迫られた。リモートワークを推進するために、請求書を電子化するプロジェクトのリーダーとなって変革を進めたのが、財務部の横田さやかさん。ともに請求書電子化プロジェクトを推進したデジタル統括部の並木健さんやNECの長田有生さんの話も交えながら、横田さんのこれまでのあゆみに迫る。

横田 さやか(よこた・さやか)
2007年Hondaに新卒入社し、埼玉製作所の会計課を経てから本社財務部と経理部で経験を積む。グローバル経理・財務ユーザー向けシステムの運用や製作所の支払業務集約プロジェクト、請求書電子化プロジェクトなどに携わる。2022年1月より現在の所属。

並木 健(なみき・けん)
2008年Hondaに中途入社して以来、一貫してIT領域でのキャリアを積む。請求書電子化プロジェクトでは、自らの知見を活かし貢献する。2021年4月より現在の所属。

長田 有生(おさだ・ゆうき)
NEC エンタープライズビジネスユニット トランスポート・サービスソリューション事業部門 モビリティソリューション統括部第一インテグレーショングループ所属。Hondaの請求書電子化プロジェクトではNECの窓口となり、プロジェクトの成功に貢献する。

有事になると人が集まり、協力して解決に向かうHondaの底力

横田さやかさんの写真

横田さやかさん。新型コロナウイルス感染症発生後、プロジェクトのリーダーとして、請求書の電子化に取り組んだ。

画像提供:本田技研工業

2020年初めから猛威を振るう新型コロナウイルス感染症は、Hondaの業務フローを大きく変えるきっかけになった。Hondaは2020年にアフターコロナ対応として新業務フローを実施。そのなかでも、取引先に紙の請求書を電子化してもらうプロジェクトに取り組んだのが、財務課の横田さんだった。

横田さんは2007年にHondaへ入社し、埼玉製作所の会計課に配属となった。その後2011年からは本社に異動し、財務部や経理部で経験を積んできた。

「経理部業務企画推進課では、7か国28社2万人の経理・財務ユーザーが使うシステムの維持、運用と業務改善プロジェクトを担当していました。また、経理部財務経理課では、日本国内のHondaの製作所(5拠点)の支払業務を本社に集約するプロジェクトなどに携わりました。サイバー攻撃や新型コロナウイルスなど有事への対応にも関わってきたんです」(横田さん)

2011年以降は出張の機会が多く、中国の大連市やタイ、イギリス、アメリカなどを訪れて仕事をしてきた横田さん。学生時代から、海外に関わる活動をしてきた。

「学生時代は、留学生と大学の国際交流センターのパイプ役をするなど、海外に関わるボランティアを継続してきました。入社後は、自分でも海外とのやり取りがある業務を希望しており、上司も理解してチャンスを与えてくれたので、2つ目の部署以降は海外とのやり取りがメインになっていますね」(横田さん)

横田さんがHondaに入社したのは、創業者である本田宗一郎の考えに共感したからだ。

「就職活動をするなかでさまざまな業界を見て、素敵な会社はたくさんありました。本田宗一郎の本を読むなかで、『世のため人のため、自分たちが何かできることはないか』『差ではなく違いを活かせ』など心に響く部分が多くあったんです。Hondaフィロソフィーや考え方をもとにグローバルに活躍できるHondaという会社で働き、地球規模での社会貢献活動をしたいと思い、入社を決めました」(横田さん)

Hondaに入社し、財務部時代は中国の大連市にあるSSC(Shared Service Center)へのアウトソーシングや約20の海外現地法人との決済業務効率化のため、グローバル・マルチネッティング導入プロジェクトなどを進めた。そのとき、デジタル統括部(当時はIT本部)で活躍する並木さんと出会う。

「並木さんは、有事の際に登場してくれるヒーローのような存在です。たとえばHondaでは経理・財務業務を中国にある企業のメンバーにアウトソーシングしているのですが、2020年1月に中国で新型コロナウイルスが出たとき、約50名のメンバーが出社できない状況になってしまいました。

ですが、アウトソーシング先の会社とは、出社前提で契約していたので、リモートワークをできるように切替えないと、Hondaから国内外への支払業務が止まってしまう恐れがあったんです。そんなときに並木さんが登場し、本当に大変な状況のなか動いてくれて、IT本部(当時)の複数部署のメンバーにスピーディに働きかけてくれました。その結果、通常であれば3か月ほどかかるようなインフラやセキュリティの整備が1〜2週間で完了したんです」(横田さん)

「Hondaは大企業なので、関係者が多く、どうしても整備に時間がかかる場面もあります。でも、有事の際の団結力がすごいんですよね。私は長年経理のシステムを担当しているので、担当から外れたあとも有事になると召集されます。私だけではなく、何かあったらいろいろな人が集まってきますね」(並木さん)

「Hondaには、ピンチをチャンスに変えなければいけないときに登場してくれる人が必ずいると感じています。IT本部から並木さんがきてくれたように、有事になると各領域のキーパーソンが集まってOneTeamとなって一緒に立ち向かうんです。私もコロナ禍になる前から大連とのつながりがあったので、コロナ対応で召集され、対策を進めました」(横田さん)

変えることが皆のハッピーにつながる。わずか半年で電子化を実現

並木健さんの写真

並木健さん。アウトソーシング先のリモートワークを進めるために、瞬時に各所に働きかけた。「有事の際に登場してくれるヒーローのような存在」と横田さん。

画像提供:本田技研工業

2020年はじめに中国でのリモートワークは可能になったものの、今度は日本でも新型コロナウイルスが流行した。そこで横田さんは上司と相談しながら“After CORONA Project”を企画し、5月に立ち上げた

「感染拡大防止を目的としたリモートワークを推進するためには、新業務フローを確立する必要がありました。具体的には、お取引先からの紙の請求書を電子に切替えをしていただいたのです。

内部統制領域や税務領域、システムなどの課題をクリアしなければ業務フローを切替えられず、各領域の協力が必須だったので、私がプロジェクトリーダーを務める形で、約20名のプロジェクトメンバーの皆と一緒にOne Teamで進めていくことになりました」(横田さん)

プロジェクト開始から半年後の11月に、紙から電子への切替えが実施された。わずか半年でデジタル化を実行できたのは、Hondaのような大企業にとっては奇跡のような出来事だ。

「当時の部長が、『コロナで失ったものもあると思うけれど、コロナによって一気に変えられるものはチャンスと捉えたらいいよ』という言葉をくれたんです。失ったものに目を向けるのではなく、得たものに目を向けて機会(チャンス!)と捉える考えが、私の信念と合致しました。だからこそ、反対の声を受け止めながらも絶対に変えるんだという気持ちで進められましたね」(横田さん)

社内の部門向けにAfter CORONA Project説明会をオンラインで実施した際には、約1,000名の担当者が参加し、業務フローの変化に戸惑う声も多くあった。また、11月に切替えを実施してからは、国内外の取引先からも各部門からも問い合わせが集中し、その数は1日に数百件にものぼった。説明会実施後や、業務フロー切替え後3か月間は、対応を特に強化する期間と捉え、変化に納得してもらうためにまずは相手の意見を受け止めることを心がけた

「もらった意見を否定すると平行線をたどってしまうので、まずは『ご意見ありがとうございます』と受け止めたうえで『電子への切替えはしなければなりません。なぜならば……』と一つひとつ理由を説明するように、プロジェクトメンバーにも対応してもらいました。

目の前の業務が何のために取り組んでいることなのかわからなくなると、皆がハッピーではなくなってしまいます。ハッピーになるためにやっているんだと目的(A00 ※)を伝えることを心がけていましたね」(横田さん)

A00:Hondaの商品開発の基本概念を示す記号から生まれた独自の表現。現在は経営戦略、計画、施策、プロジェクトなど様々なテーマの目的とその取り組みの明確化のために使われている。

今まで紙の請求書で対応していた取引先に電子化を依頼することになり、国内外約8,000社に案内を送ることになった本プロジェクト。取引先が多い分、関係部署も多岐にわたるため、頻繁にミーティングを行いベクトルがずれないように気をつけた。

「いきなり切替え案が降ってきたら相手も気分が良くないので、それぞれにしっかり目的や方向性を伝えるようにしていました。というのも、世の中でステイホームが推奨されている状況で、私のグループで一緒にお仕事をする仲間に請求書と伝票チェックのために出社してもらわなければいけないこと、部門のみなさんにも出社をしてもらわないといけないことと、Hondaの社会的責任を果たす『支払遂行』との間で葛藤があったんです。

リモートワークを実現し、お取引先にも支払ができる、みんなのハッピーを実現するために、という想いでプロジェクトを進めていましたが、当初は社内の理解が得られず辛かったこともありました。しかし、並木さんや部長をはじめとする周りの方々が声をかけてくれて救われましたね」(横田さん)

異なる領域同士でも、助け合いながら進めていく。有事の際にHondaがスピード感を持って対応できるのは、人と人とのつながりが強いからだ。

「技術の前では皆平等」だからこそ、世の中を良くするためだけに動けた

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NEC側の担当として、請求書の電子化を進めた長田有生さん。Hondaの二人とタッグを組み、課題解決のために奮闘した。

画像提供:本田技研工業

請求書を電子化するにあたり、特にやり取りの多い取引先には直接連絡をして「電子化に対応してもらえるか」を事前にヒアリング。電子への切替えが難しいと回答した取引先のなかには日本電気(以下、NEC)もあった。実はその回答がきっかけでNECとの関わりがより深くなっていった

「請求書は紙の電子化なのでPDFにしたものをメールで送っていただければいいのですが、NEC様の場合はそうではなく、『NECとHondaの共通の箱を準備してやり取りしよう』という一歩進んだレベルを目指してくださっていました。だからこそ、『できません』ではなく『すぐに電子化するのは難しい』という回答だったんですよね」(並木さん)

「一旦難しいと回答したあと、横田さんや並木さんとやり取りをさせていただきました。請求書のPDF化だけにとどまらず、履歴や人の異動も管理できるシステムを作るというNECで構想していたプロジェクトの第1号になっていただき、一緒に進めることにしたんです。

プロジェクトを進めるうえで弊社にも課題があったんですが、おふたりにお伝えしたところとても迅速に対応していただけました。Hondaさんと一緒に進めた結果、両社にとって良いものになったと思います」(長田さん)

Hondaは古くから、NECのさまざまなシステムを利用している。これまで取引をしてきた長い年月のなかでも、一気に方向性が変わることはなかった。2社で協力して無事に電子請求を実現できたのは、平等な立場で課題解決に立ち向かったからだ。

「Hondaさんから一方的にこれをやってと言われることはなく、何をどうすれば課題を解決できるのかという視点で動いていただいていたので、横田さんや並木さんの視座の高さを感じました。それがスピード感のある電子切替えにつながったんだと思います」(長田さん)

「システム導入などをする場合、基本的には両社の担当者が『ここまでが対応できる範囲です』という主張をすることになります。しかし、今回のプロジェクトメンバーはそれで終わりにしませんでした。何をどう変えればお互いの要望が実現できるのかを、両社が考えられたのが大きかったですね。技術の前では皆平等だからこそ、一緒になって進められたのは、プロジェクト成功の鍵のひとつだったと思います」(並木さん)

「本田宗一郎の言葉に『差ではなく違いを活かせ』とありますが、私も肩書きや“依頼する側とされる側“などで優劣や上下はないと思っています。フラットなコミュニケーションを意識して、世の中を良くしていきたいという想いは一緒だと思うので、NECの皆さんとも団結して進めていけたのが良かったですね」(横田さん)

年齢や役職にとらわれず平等に巻き込む。その力こそが、プロジェクトを動かす秘訣

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請求書の電子化プロジェクトを進めた3人。どうすれば互いの要望が実現できるのか、両社が真剣に考えたことが、成功の秘訣という。

画像提供:本田技研工業

横田さんとともに請求書の電子化プロジェクトを進めた並木さんと長田さんは、横田さんには人を惹きつける力があると口を揃える。

「技術の前では皆平等といっても、やはり若い方が年上の方を巻き込むのは難しいこともあります。しかし、横田さんは私や長田さんだけでなくIT本部の部長にも躊躇うことなく積極的に関わっていたので、人を取り込んでいく力があると思うんです。

私からすると声もかけづらいくらい緊張してしまう相手も仲間にしてしまう巻き込み力こそ、横田さんがプロジェクトをスムーズに動かす秘訣なんだろうと思いますね」(並木さん)

「一緒に頑張ってくれた方の役割が部長さんだったという感じで、本田宗一郎が『国籍・年齢・性別・肩書きに関係なく』と言うように、あくまでも“役割“であると思っているので、肩書きにかかわらず、誰もが平等だと思っていますね」(横田さん)

大企業とは思えないスピード感でプロジェクトを進め、有事に立ち向かってきた横田さん。志は、Hondaに入社する前から変わっていない。

「私は昔からずっと、世界を平和に、世界の人を幸せにする人になりたいと考えています。小学生の時から尊敬する人である、マザーテレサの言葉にもある、『まずは身の回りの人を幸せにすることが大切』と私も思っているので私がHondaに入ってから経験させてもらったことで、何かHondaの企業活動に貢献できる部分があれば、創業者の“世のため人のため、自分たちが何かできることはないか“という言葉につながると信じています。

Hondaは“第二の創業期“と掲げるように、私たちも知り得ないことがこれからたくさん起こると思います。予定していないことが出てきたとしても、これまでの経験を活かして周りをハッピーにしていきたいですね」(横田さん)

学生時代から一貫した想いを胸に、自分自身ができることを考え行動を続ける横田さん。

有事の際も周りを気遣いながら立ち向かうその姿勢に協力したくなるメンバーは、社内外に多くいる。これからも人を惹きつけ、巻き込み力を発揮しながら進んでいくだろう。

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