1. Home
  2. Work
  3. シティグループDE&I推進トップが語る戦略。注力分野はペイエクイティやZ世代登用

シティグループDE&I推進トップが語る戦略。注力分野はペイエクイティやZ世代登用

エリカ・アイリッシュ・ブラウンさん

新型コロナウイルスによるパンデミックを経て社会は大きく進展。その変化は人々の心や企業のあり方にも現れてきている。シティグループでダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DE&I)の推進に取り組んでいるのが、チーフ・ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン・オフィサー兼タレント担当グローバル責任者のエリカ・アイリッシュ・ブラウンさんだ。多様性という言葉をよく耳にするようになった今、先進的なグローバル企業のトップが見据える未来とはどのようなものか。エリカさんに、DE&Iを推進する上での課題や目標、企業のあるべき姿について聞いた。

Erika Irish Brown(エリカ・アイリッシュ・ブラウン )
シティグループ チーフ・ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン・オフィサー兼タレント担当グローバル責任者。グローバルのDE&I戦略の策定と、タレント・プランニング、後継者育成、リーダーシップ開発に関するシティの取り組みを推進。 これまでにブラック・エンターテインメント・テレビジョンにて事業開発責任者、モルガン・スタンレーにてハイイールド・キャピタル・マーケッツのシニア・アソシエイト、米国財務省の国内金融担当シニア・ポリシー・アナリストなど、銀行および金融機関での豊富なキャリアを持つ。

DE&Iに“ワンサイズ・フィット”は存在しない

──シティで、現在の地位に就かれたのが2021年と伺いました。この1年半で社会がどのように変わったと感じますか?

コロナ禍でDE&Iに関する多くの問題が顕在化しました。そして人々は、浮き彫りになった問題や社会の変化を経験することで、多様性と公平性に、これまで以上にフォーカスするようになりました。

アメリカでは、コロナ禍でアジア系住民に対するヘイトクライムや人種差別が増加しました。これまでアメリカでは人種差別のコンテクストであまり語られることのなかった課題が、コロナによって表面化しました。また、黒人が置かれる状況については、私たちは「差別」を問題として定義し、課題解決に向けた目標を設定しました。人種間での構造的な経済格差の解消に向けたこのような取り組みが企業のコーポレート分野で表立って行われたのは初の試みであり、組織における人種差別という概念は、企業が取り扱うべき議題の一部となりました

エリカ・アイリッシュ・ブラウン

エリカ・アイリッシュ・ブラウン/シティグループ チーフ・ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン・オフィサー兼タレント担当グローバル責任者

──多様性は世界的にみても重要なテーマですが、島国である日本は人種の多様性に欠けているといえます。日本でDE&Iを推進するポイントは何だと考えますか?

DE&Iは世界的に見ても、“ワンサイズ・フィット”のものはなく、何が多様性を構成しているのか、誰がマイノリティなのかは、国によって異なります。 しかし、どの組織の中でもマジョリティ/マイノリティが存在するという点では、これらの概念は世界共通です。

日本のDE&Iにおいて、私が注力するのは四つです。 一つはジェンダー、二つ目は障がい者、もう一つはLGBTQ+のコミュニティです。そして最後が、世代の多様性です。少子高齢化が進むなかで、Z世代の声を尊重することが、DE&I推進のポイントだと考えています。

女性や有色人種の従業員の賃金格差を積極的に開示する

ーシティは賃金格差の改善に注力されているということですが、具体的にどのような取り組みを行っていますか?

私たちシティにとって、「ペイエクイティ(性別や国籍、宗教などに関わらず、同一価値の労働には同一の報酬を払う原則)」の概念は非常に重要なものです。私たちは、グローバルな賃金格差を開示する数少ないグローバル投資銀行の一つです。毎年、グローバルの女性、米国の黒人/ヒスパニック系/アジア系の従業員を対象に、賃金格差に関する調査を行い、未調整/調整後(raw/adjusted basis)の格差を算出します。調整後ベースの情報、つまり同じような職務、勤続年数、そして近しい業績を上げている人たちを対象にした場合の賃金格差は解消されているのですが、年功序列や役割などを考慮しない、未調整の男女間の平均賃金格差は、まだ格差が見られます。

私たちは、より多くの女性に上級職の席を確保し、それによって平均給与の格差をなくすことが重要だと考えています。これが、男女比の目標を設定するきっかけとなりました。2018年に設定し、2021年末にグローバルで達成したジェンダー比率の目標は、管理職のポジションにおける、ジェンダーの多様性を担保することでした。次のステップとして、グローバルで管理職の女性リーダーを増やすべく、新たな目標を設定する予定です。

もう一つ、私たちはシティ本社で、「The Female Quotient」という団体と提携しています。これは企業が賃金データを入力すると、格差を算出することができるツールです。より多くの企業が、賃金格差の解消を目指す際に役立つと考えています。

いかにDE&Iを戦略的に推進するか

_MG_0085

──企業がビジネスを通じて社会をより良くし、DE&Iを向上させるためには何ができるでしょうか?

あらゆる企業が手を取り合い協力する必要があると考えます。 企業間でベストプラクティスを共有し、業界、国、および幅広いセクター同士が協力することで、より広い範囲のエコシステムに影響を与えることができると考えています。

──これからどのような分野に注力していきたいと考えていますか?

短期的な目標は、シティをより多様性に富みインクルーシブな組織にするために、グローバル全体に向けて新たな目標を設定することです。また、より戦略的なフレームワークを構築し、従業員リソースグループ(組織の中で共通の特性や人生経験に基づいて、職場で一緒に働く従業員のグループ)が行っている業務を、グローバルのダイバーシティ戦略と連携させたいです。アンコンシャスバイアストレーニングを含む、リーダーシップ研修も展開する予定です。

長期的には、DE&Iの概念をいかに企業に根付かせるかが課題です。そのためには、人種や性別だけでなく、社会経済的な多様性、社会的流動性、さらにはメンタルヘルスなど、今後ますます重要になるテーマについても、積極的に取り組んでいきます

さらに多様性について、私たちはニューロダイバーシティの推進にも注力しています。今、試験的に行っている神経障害のある人たちのためのインターンシップ・プログラムをしっかりと確立し、継続的なものにしたいです。どの文脈でも「アンダーリプレゼント(少数で、過小評価されている)」の意味するところを、国ごとに、また文化的に熟知することが、重要なポイントだと思います

※ニューロダイバーシティ:脳の多様性。神経多様性。ASD、ADHD、LDなど発達障害を神経や脳の違いによる「個性」だとする概念のこと。

erika_citi

──理想のリーダーシップについて教えてください。

経営者やリーダーは、インクルーシブである必要があります。そして、様々な背景を持つ人々に公平に接しなければなりません。というのも、必ずしもその場で一番大きな声で話す人が最高のアイデアを持っているとは限らないからです。ですから、人々のフィードバックや異なる意見を積極的に求めることは、ハイパフォーマンスを出すチームをつくることにつながります。その点で、誰もが自由に意見を言える環境を整えることは、重要なことなのです。

またマネージャーは、人々が本来の自分らしさを発揮できるようにケアする必要があります。そうすればチームメンバーは自分らしさを強みにし、仕事で良いパフォーマンスを上げられるはずです。

そして、DE&Iを推進するのは管理職や人事部だけの仕事ではなく、私たち一人ひとりが果たすべき役割があることも忘れてはいけません。自分自身がインクルーシブな環境にいると感じられるのは、コミュニティ全体から受ける総合的な体験によって決まるからです。コロナ禍を経て、シティのチームメンバーはハイブリッドな環境で働いています。ハイブリッドモデルは柔軟でありながら、オフィスでの円滑なコミュニケーションも確保できる理想的な働き方です。生産的であるために、従業員一人ひとりが自身のライフスタイルに合わせて、フレキシブルに働けることが一番で、企業はそこにコミットすることが大切です。

_MG_0128

楽観的になること、そして声をあげること

──自分に自信を持てない女性は少なくないと思います。今後、より多くの女性リーダーが生まれるために、どのような声かけが有効だと思いますか?

自信は、能力によってもたらされます。私が女性にコーチングする際、その人の意見や、取り組んだことなどについて深ぼりして聞きます。それらの質問にきっちり答えることができれば、その人は自分に自信を持ち、誇りに思うはずですから、女性にとって自信を持つことは本当に大切なことだと思うのです。

あと、楽観的になることですね。物事は変わっていくものですから。「私にはできない、リスクが大きすぎる。失敗するかもしれない」と思うかもしれません。ですが、 失敗しても大丈夫です。 失敗を生かし、次はアプローチの仕方を変えてチャレンジするのです

最も大切なのは、声を上げること。たとえお互いに意見が違っても、私たちは声を上げなければいけません。沈黙は、支持することと同じです。 誰もが発言し、意見を共有する必要があります。イノベーションの重要性が高まっていますが、イノベーションを起こすためには、異なる意見と健全な議論が必要です。誰もが、イノベーションを起こせる可能性を秘めているのです。

  • facebook
  • twitter
MASHING UP編集部
MASHING UP=インクルーシブな未来を拓く、メディア&コミュニティ。イベントやメディアを通じ、性別、業種、世代、国籍を超え多彩な人々と対話を深め、これからの社会や組織のかたち、未来のビジネスを考えていきます。

    おすすめ

    powered byCXENSE

    メールマガジンにご登録いただくと

    MASHING UPの新着記事や最新のイベント情報

    招待制イベントへの会員限定コードなどをご案内いたします。

    MASHING UPの最新情報をご希望の方は、ぜひ会員にご登録ください(無料)。