画像:MASHING UP
2022年11月11日に開催された「MASHING UP CONFERENCE vol.6」。「社長、『共創の力』が、不可能を可能にするってほんとうですか?」と題されたセッションには、イーデザイン損保 取締役社長の桑原茂雄さん、ima(あいま)CEOの三浦亜美さん、ギズモード・ジャパン、ルーミー編集長の尾田和実さんが登壇。MASHING UP編集長 遠藤祐子のファシリテーションのもと、さまざまなステークホルダーを巻き込み、理想の社会を実現する「共創」の可能性を探るディスカッションが行われた。
遠いところまで行くのなら、共感できる仲間と共に
イーデザイン損保 取締役社長の桑原茂雄さん 。「本当に事故はなくせるの?」「『共創の力』で社会貢献するというけれど、その具体策は?」など、登壇者のダイレクトな疑問に笑顔で答えてくれた。
撮影:TAWARA(magNese)
テクノロジーと共創の力で、交通事故のない世界をつくる—— そんな難題に本気で取り組み、「&e(アンディー)」という保険を世に送り出したイーデザイン損保 取締役社長の桑原さん。セッションの冒頭、MASHING UP編集長の遠藤は、カンファレンスのキーノートセッションで紹介されたアフリカのことわざを引用しながら、「&e」とMASHING UPの共通点をこのように語った。
「アフリカには『早く行きたいときは一人で行きなさい。遠くに行きたいときは誰か仲間と行きなさい』ということわざがあるそうです。MASHING UPのテーマは、いろいろな人との共創で社会をつくること。実はイーデザイン損保さんの自動車保険『&e』が描く社会の形が、私たちのコンセプトとぴったり合致していて、今回こういう形でご一緒させていただきました」(遠藤)
2021年11月にローンチされた「&e」は、インシュアテック(保険×テクノロジー)によって「事故のない世界」の実現を目指すという、保険業界の常識を覆す自動車保険だ。ユーザーが専用のIoTセンサーを車に取り付け、スマホのアプリとリンクさせることで、走行ルートや運転技術などのデータを取得し、ユーザーの運転傾向をスコア化してくれる。「安全運転」の評価が続くとコーヒーやスイーツと交換できるといったお楽しみもあって、自然と事故のない運転への意識が高まる設計になっている。
データ活用で見えてきた「事故が起きるとき」の共通点
メディアジーン ギズモード・ジャパン/ルーミーの尾田和実編集長。「&e」で運転のログを取ることで、自分の苦手意識や“技術の伸びしろ”にも気づけたと話す。
撮影:TAWARA(magNese)
MASHING UPの兄弟メディア「ルーミー」、「ギズモード・ジャパン」を率いる尾田編集長は、今年の秋から「&e」を使い始めたユーザーのひとり。ライフスタイル×テクノロジーの追求がライフワークで、ガジェットを使って自分のログを取るのが趣味とあって、「&e」と一緒のドライブを満喫しているという。
「妻も運転するので2人でお互いのスコアをチェックしたり、ゲーム感覚で楽しんでいます。設定の手間もほとんどなくて、メンテナンスフリー。アドバイスも押しつけがましくなく、運転する人に寄り添ってくれるところがいいですね」(尾田)
ima(あいま)CEOの三浦亜美さん。「事業では、今という瞬間にどういう意思決定を皆がしているのかにフォーカスする。そこが近い人は業種が遠くても分かり合える」と話す。
撮影:TAWARA(magNese)
2013年に「ima(あいま)」、2020年に「志本(しほん)」を創業し、日本の伝統産業にテクノロジーや金融を実装するサポートをしている起業家の三浦さんは、実は趣味でレーシングカートに乗るレーサーでもある。
「猛スピードで走るレーシングカートに乗っていると、車社会の危険さや、電子制御に助けられていることがよくわかる。車によっても、乗る人によっても危険性や安全運転のあり方は変わってくると思うのですが、『&e』はそこをどう判断しているのでしょうか?」(三浦さん)
三浦さんの鋭い視点に、「しょっぱなから難しい質問が飛んできた(笑)」と桑原さん。「&e」の蓄積データが教えてくれたこととして、ある指標を語ってくれた。
「やっぱり事故が起きるときって、何か普段と違うことをやったときが多いんです。いつもよりちょっとスピードが速かったとか、曲がり角を曲がるタイミングが遅かったとか。リズムの急激な変化は事故につながる。そういう意味では、『&e』のデータを見る際は、点数の善し悪しというよりは、スコアの安定を重視していただくと良いと思います。『&e』も将来的には、ユーザーがより安定したリズムで運転できるようなサポートや、データの測定をしていけたらと考えています」(桑原さん)
不可能を可能にするイノベーションを導く「共創の力」
桑原さんが「&e」のミッションにたどり着いたのは、「事故のときの安心だけではなく、事故のない世界を実現したい」という思いから。とはいえ、最初から社内の賛同が得られたわけではなかったと話す。
「以前は社内でも『事故があったときにがんばるのが保険会社でしょう』という人が多かったんです。流れが変わったのは、ドライブレコーダーが普及して、お客さまから送られる事故の映像を確認することが増えてから。やはり事故現場の映像というのは、かなり悲惨な状態で……。それを見ていたら、『こんな形で事故が起きるのを、このまま見ていたくない』という人が増えてきた。それで『我々が本来やるべきことは、事故のない世界をお客さまと一緒につくることではないだろうか』という話をして、みんなの気持ちがひとつになった」(桑原さん)
桑原さんの言葉を聞いて、「人間としてこうありたいというか、あるべき方向に動き始めたのですね」と遠藤。
「&e」のミッションのもと、チームの気持ちがひとつになった過程を桑原さんが振り返る。
撮影:TAWARA(magNese)
仕事において「“今、この瞬間”にどういう意思決定をそれぞれの人がしているのかにフォーカスしている」という三浦さんも、「&e」の運命が変わった瞬間に強い共感を示した。
「我々の会社も10年目になりますが、意思決定の頻度と深度が似ている人たちは、業界を越えてわかり合える。むしろ相関の遠いところを結びつけることで、新しい技術やまちづくりのイノベーションが起きると実感しています。
『&e』では、大きなデータを集められる保険会社が、それを地方公共団体に提供して道路計画に役立てたり、事故を防ぐ睡眠や食事のリズムを製薬会社と研究したりと、“事故が起きるから保険がある”という常識の枠を超えた活動をされている。こうした優しさとテクノロジーで、世の中は少しずつ良くなっていくんだと感じました」(三浦さん)
三浦さんが5年前からまちづくりアドバイザーとして活動していたつくば市は、昨年(2021年)、一般市のなかで「日本でもっとも移住者が多い市」になったとのこと。
その結果、渋滞などの問題も起きているという三浦さんに、「ぜひつくば市さんにも『&e』のノウハウをご提供したい」と桑原さんが提案。会場の参加者も、共創の芽が生まれる瞬間に立ち会うこととなった。
会場に設置したパネルでは、「共創の力で事故をなくすアイデア」を参加者からも募集。「学校が持つ通学路のデータと&eの運転データを組み合わせて、子どもの交通事故をなくす」「ゲーム会社と連携し、運転しない人でもドライバー体験ができるVRのゲームを開発する」などのアイデアが飛び出した。
撮影:TAWARA(magNese)
アンテナを高くして、仲間を見つけ、遠くを目指そう
トークセッションの最後に、遠藤が投げかけたテーマは「事故のない世界をつくるために、明日から私にできること」。桑原さんがフリップに記したのは、「アンテナを高くする」という言葉だった。
「世の中はどんどんバージョンアップし、社会のルールも変わっていく。だからこそ、自分の内にこもらずアンテナを高くして、さまざまな世界・業界の人の考えを知る『共創』の視点が大切だと思います。
そうすると、新たなヒントが絶対に出てくる。共感するところが見つかったら『一緒に何かやりませんか』と自分から話しかける。私の場合は“事故のない世界をつくりたい”というのが北極星ですが、仲間が多いほどそこに近づいていけるのかなと思っています」(桑原さん)
志とアンテナを高くして、仲間を見つけ、遠くを目指す——。「事故のない世界をつくる次の一手を、皆さんと一緒に考えていきたい」という遠藤の言葉で、セッションは締めくくられた。
撮影:TAWARA(magNese)
MASHING UP CONFERENCE vol.6
「社長、『共創の力』が、不可能を可能にするってほんとうですか?」
桑原 茂雄(イーデザイン損害保険 取締役社長)、三浦 亜美(ima[あいま]CEO)、尾田 和実(メディアジーン ギズモード・ジャパン編集長/ルーミー編集長)、遠藤 祐子(MASHING UP 代表理事 メディアジーン執行役員 編集部門長 MASHING UP編集長/ライフハッカー・ジャパン編集長)
[イーデザイン損保]
執筆/田邉愛理
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