画像:MASHING UP
若者を中心にアルコール離れが進み、飲み会文化も変わりゆく昨今、「スマートドリンキング」という新しいスタイルの飲み方が浸透しつつある。11月11日に開催されたMASHING UPカンファレンスvol.6では、この「スマートドリンキング」をテーマにしたトークセッション「飲める? 飲めない? 関係ない! 飲み会と多様性」が行われた。
登壇したのは、スマドリ取締役CMOの元田済さんと、実践女子大学人間社会学部教授の原田謙さん。渋谷未来デザイン理事・事務局長の長田新子さんをモデレーターに、誰もが無理をせず、無理をさせず、居心地のよい飲み会、そしてコミュニケーションのあり方を考えた。
飲み会にも「ウェルビーイング」や「ダイバーシティ」の概念を
スマドリ取締役CMOの元田済さん。ウェルビーイング、アンコンシャスバイアス、ダイバーシティを実現するためにも、「スマートドリンキング」を浸透させていきたいと語る。スマドリは、「スマートドリンキング」の推進を目的に、アサヒビールと電通デジタルが合弁会社として2022年に設立した。
撮影:中山実華
「スマートドリンキング(飲み方の多様性)」とは、アサヒビールが提唱する新たな概念で、お酒を飲む人も、飲めない(飲まない)人も、一人ひとりが体質や気分、シーンに合わせて、自由に飲み方を選択できる時代を目指すというもの。
活動をプロモートする元田さんは、「スマートドリンキング」には「ウェルビーイング(充実した幸福な世界)」「アンコンシャスバイアス(偏見のない世界)」「ダイバーシティ(多様性が実現した世界)」の3つのキーワードがあると話す。
「微アルコール飲料やノンアルコール飲料商品を拡充し、様々な選択肢を提供することで、お客様のライフスタイルを素敵なものにしていく。これが、1つ目のウェルビーイング。2つ目のアンコンシャスバイアスは、“男性はビール、女性はカクテル、飲めない人はウーロン茶”といった思い込みをなくしていくこと。そして、3つ目のダイバーシティが、体質やシーンに合わせて多様な飲み方が当たり前な世界にすること、です」(元田さん)
飲めない人のニーズに応えた「SUMADORI-BAR(スマドリバー)」
渋谷未来デザイン理事・事務局長で、SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA(SIW)のエグゼクティブプロデューサーも務める長田新子さん。2021年SIWでのアイデアセッションが「SUMADORI-BAR SHIBUYA」オープンにつながった。
撮影:中山実華
「スマートドリンキング」を実現する取り組みの一つが、「SUMADORI-BAR SHIBUYA」の運営。2022年6月、渋谷センター街にオープンした、お酒を飲まない・飲めない人も楽しめるバーだ。
ターゲットはZ世代。アルコール度数0~3%のドリンクが100種類以上揃い、お酒が飲めなくても仲間と楽しくシェアできるフードメニューが充実。大学生と共同で開発したオリジナルカクテルも提供する。当初の想定以上の利用があり、「ほとんどが20~30代で、そのうちの6割が女性。4割がお酒を飲めないというデータも出ている」と元田さんは言う。
実はマイノリティではない「飲めない人」
実践女子大学人間社会学部教授の原田謙さん。飲み会に対する大学生やZ世代の意識変化を語る。
撮影:中山実華
「SUMADORI-BAR SHIBUYA」オープンとともに、渋谷未来デザインとスマドリが主催する「渋谷スマートドリンキングプロジェクト」も発足した。渋谷区の後援を受け、賛同企業・団体とともに、大学や地域コミュニティで啓発活動を行う。
学生と触れる機会の多い原田さんは、一昔前までの「とりあえずビール」の習慣も大きく変化してきていると話す。
「今は飲めない人が参加する場合はドリンクの種類が豊富なお店を選んだり、飲める人が場の空気を読んであえて飲まなかったり、と若者の動向にも大きな変化が見られます。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大があって、飲み会文化が止まってしまっているのが実情ですね」(原田さん)
「飲み会とは本来、どのような場なのか?」議論はしだいに本質に迫っていく。
撮影:中山実華
また、元田さんは、飲めない人は決してマイノリティーではない、と指摘する。
「日本人は、(体質的に)飲めない人が4割ほどいるそうです。ドイツ人はほぼ全員が飲めるそうですから、実は日本人はそんなにアルコールに強い国民性ではないんです」(元田さん)
「4割が飲めないとすると、飲み会の定義が変わるのではないか。そもそも飲み会とは本来、どういう場なのでしょうか」と長田さんが問いかけると、元田さんはこう推察する。
「飲みに行くというのは、『ちょっと深く話さない?』というサインなのかなと思います。いつも話せないことを打ち明けたり、相談したり、いいコミュニケーションができるかどうかが、飲み会のゴールなんだと思います」(元田さん)
原田さんは、「今ある人間関係を深める場ということのほかに、学生の場合は、知り合いの知り合いとつながる、といった新しいつながり・友人関係を作り出していく場でもあるといえます」と、もうひとつの側面を示した。
誰もが楽しめる飲み会にするために。参加者から生まれたアイデアは?
登壇者もテーブルを周ってディスカッションに参加。
撮影:中山実華
後半は、「飲み会を再定義しよう」というテーマでワークショップを開催。
コロナの影響で『飲みに行こう』と誘いづらくなったため、飲み会に代わる言葉として「チル会」はどうか?とはZ世代の参加者からのアイデア。他に、『継いでほしい派』『マイペースで頼みたい派』『声を掛けてほしい派』など、「意思表示のサイン」として使えるコースターがほしい、という意見も。また、昼間の公園などで大人がお酒や音楽などを楽しみ、子どももそばで自由に遊べるような、家族皆で楽しめるイベントのアイデアなど、さまざまなアプローチからのアイデアが寄せられた。
「家庭でもない、職場でもないサードプレイスで、ゆったりと社交の時間を過ごすこと。コロナ禍が終息に向かえば、飲み会のあり方を見直す機会になる」(原田さん)という締めくくりの言葉にもあるように、 飲酒をめぐるコミュニケーションのかたちも、今後大きく転換していきそうだ。
撮影:中山実華
MASHING UP conference vol.6
飲める? 飲めない? 関係ない! 飲み会と多様性
元田済(スマドリ取締役CMO)、原田謙(実践女子大学人間社会学部)、長田新子(渋谷未来デザイン理事・事務局長)
[スマドリ]
執筆/上妻靖子
イベント
おすすめ
JOIN US
MASHING UP会員になると
Mail Magazine
新着記事をお届けするほか、
会員限定のイベント割引チケットのご案内も。
Well-being Forum
DE&I、ESGの動向をキャッチアップできるオリジナル動画コンテンツ、
オンラインサロン・セミナーなど、様々な学びの場を提供します。