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- 「知らなかった」を歩いて発見。産官学民の共創を通し、皆で魅力を育む街へ
撮影/キム・アルム
2022年11月、渋谷区で、イベント「388 FARM β(ササハタハツファームベータ) vol.3」が開催された。「ササハタハツ」とは、京王線の笹塚駅・幡ヶ谷駅・初台駅の頭文字をとった略称。商店も多くコミュニティ活動も盛況なこのエリアには、渋谷区民の約半数が暮らす。イベントは、エリア内にある玉川上水旧水路緑道で進む再整備のコンセプト「FARM/育てる」にもとづき、住民の「やってみたい」というアイデアを具現化し、緑道再整備や活用の参考にしていく実験的な試みだ。
主宰は、渋谷区と京王電鉄、渋谷未来デザインが2020年に設立した「ササハタハツまちラボ」。産官学民の垣根を越え、暮らしの質や街の魅力の向上を目指している。 企画された数あるアクティビティのうち、小学校低学年から大人まで楽しめる体験・交流型まちあるきツアー「まちクエスト」に参加した。参加の様子を写真でレポートしたい。
地図を受け取って、クエストスタート
受付でマップを受け取ったら、いざクエストスタート。マップを頼りに会場内の看板を探し、街にまつわるクイズを解くなどして、ポイントをめぐっていく。
マップをもらって、クエストスタート。「よーし、がんばるぞ〜!」
撮影/キム・アルム
「まち遺産クイズ」で街に潜むストーリーを知る
道を進むと、「クイズ」を発見。「まち遺産クイズです。この装置は何を知るためのものでしょう?」「う〜ん、星の位置かな?」「残念! 正解は時間です。日時計といって、昔の人は、太陽と影の動きで時間を知ることができたんだよ」。スタッフとのそんな会話を通して、知らなかった歴史を少し学ぶ。
スタッフから日時計について教えてもらう。「昔の人は、腕時計をつけていなかったんだね」。
撮影/キム・アルム
赤いポストの前にも、郵便ポストの歴史を学ぶ「まち遺産クイズ」が。
「郵便ポストを初めて作った会社は?」「知らない会社ばかりで難しいなぁ」。
撮影/キム・アルム
道路の「もし」「かも」を考えて、危険を回避しよう
狭い道路や傾斜のある遊び場のそばには、道路に潜む「もし」や「かも」を考えてみるクイズが。「狭い道だから、歩いているときに近くを車が通るかも」「もしボールが道路に転がっちゃったら、慌てて道路に飛び出してしまうかも。危ないな」など、あらゆる危険に想像を巡らせてみる。
狭い道路の横のクイズ。道に潜む危険「もし」「かも」に頭をひねる。
撮影/キム・アルム
傾斜のある広場では「遊んでいてボールが転がってしまったら、うっかり道路に飛び出して車にひかれてしまうかもしれない」などの気づきが。身近な場所に潜む危険を考えるきっかけに。
撮影/キム・アルム
車椅子で街を走ってみたら?
さらに進むと、待ち受けていたのは車椅子を体験するコーナー。坂道での操縦の難しさに「これは、一人では大変。誰かに押してもらったほうがいいかな」。普段は考えたこともない車椅子ユーザーの視点に触れた。
渋谷区を中心に活動するプロジェクトチーム「インクルーシブ運動場」による車椅子体験。年齢や性別、身体機能などに関係なく、誰もが遊びや運動を楽しめる環境づくりを目指す。
撮影/キム・アルム
途中、渋谷区内で野外遊び場づくりの活動をする「せせらぎ冒険遊び場」の出展エリアでは、ロープワークで作られた遊具でひと遊び。
ロープワークで体を思い切り動かせる遊具は、子どもたちに野外遊びの楽しさを教える「せせらぎ冒険遊び場」によるもの。
画像提供/まちクエスト
迷ったらスタッフや町の人に道を聞き、クエストはどんどん終盤に。
とうとうゴール! おつかれさま
20の看板をすべて見つけ、ミッションをクリアしたら、約1時間半でクエストは終了。マップを受付に持っていくと、地域でこども食堂を運営する「渋谷区おばさん」から「おつかれさま!」の言葉と、参加賞として手作りのおからドーナツのプレゼントが。少し歩き疲れたけれど、街について知らなかったことをたくさん学んだひとときとなった。
とうとうゴール! おからドーナツのプレゼントに「やった〜!疲れたけど、楽しかったよ」。
撮影/キム・アルム
共創の力で、街の魅力を知る
「まちクエスト」は、地域のコミュニティや企業など、6つの団体の共創により制作された。渋谷未来デザインの熊谷多希子さんは、「渋谷区では、住民の意見を取り入れて、市民共創の事業をたくさん進めています」と話す。クエストに散りばめられた20のミッションは、各団体の持ち味を生かしつつ、参加者の好奇心を刺激し、体験や学びに繋がるように工夫された。
クエストの骨組みを作ったのは、子ども向けの探求学習教室ワオ!クエスト代表・矢澤修さん。
「もともと、“街を舞台にした宝探しをやりたい!”という思いから、公園を舞台に謎解きゲームを開催したのが『まちクエスト』のはじまりでした。今回は色々な強みを持ったチームメンバーが揃ったので、皆さんの知識や体験をまとめてゲームに組み込んでいきました。こうした活動を通して、子ども達をはじめ、たくさんの人達とみんなで地域の魅力を育んでいくんだな、と感じています」(矢澤さん)
「まち遺産クイズ」を提供したササハタハツまち遺産探検隊の代表・古川はる香さんは、「見方によって、何気ない場所や風景に意味が出てくることを知ってほしい」と語る。
「私たちは、その街らしさを表す人やもの、思い出を“まち遺産”と名付けています。ポストやマンホールなど何気ない“まち遺産”でも、なぜここにあるのかというストーリーを少しでも知ると、愛着がわいてくる。スクランブル交差点や高層ビルといった一般的な渋谷区のイメージとはかけ離れた、下町らしいこのエリアの魅力を、クエストを通じて感じてもらえたら」(古川さん)
初台に本社を構えるイーデザイン損保も、クエストのプロデュースに関わった。担当した茂谷逸平さんは、「安心安全な街づくり」というキーワードについて触れた。
「このエリアに籍を置く一企業として、子どもたちと一緒に交通安全について考える機会をつくれたら、と参加しました。クエストを通して一対一で彼らの素直な反応を見られて嬉しかったですね。これからも地域に根差し、草の根で子どもたちの安全を見守っていきたい」(茂谷さん)
イーデザイン損保は、通学路に潜む危険箇所をスマートフォンなどで登録してシェアできるサービス「もしかもマップ」を提供している。今回のクエストで見つけたような「もし」「かも」を日々の登下校などに活用することで、利用者が共創して交通事故のない世界を目指す取り組みだ。
街の新たな魅力とともに、身近な場所に潜む小さな危険を見つけ出す。「まちクエスト」は、見慣れた街をいつもと違った方向から見るいい機会になったようだ。
撮影/キム・アルム

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