画像/MASHING UP
ウェルビーイング経営という言葉に対する注目が高まるにつれ、企業は従業員一人ひとりが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、心身の健康に投資すべしとの考えが広まってきている。
企業はいかに従業員のウェルビーイング向上にアプローチすればよいのだろう。このヒントを探るため、2022年11月11日に開催したMASHING UP CONFERENCE vol.6では、「『対話』からはじめるウェルビーイング」と題したトークセッションを実施。
アーティストであり、Cradleの代表取締役社長も務めるスプツニ子!さん、エール取締役 篠田真貴子さん、そしてモデレーターのロフトワーク MTRL事業責任者の小原和也さんが登壇した。
知識を得ることは、主観的なウェルビーイングにつながる
Cradle 代表取締役社長のスプツニ子! さん。
撮影/TAWARA(magNese)
Cradleは、働く女性の健康支援を軸とした企業のDEI推進サポートを目的として、2022年にスプツニ子!さんがローンチ。起業に至った背景について、世間に対して抱いた違和感を語った。
「昔から、生理や更年期など女性特有の健康課題がキャリアに支障をきたすことは問題としてありました。しかし、なぜかそれが個人の問題とされ、自分で解決しなくてはならない風潮があることに疑問を感じました。このことが、DEI推進の大きなハードルになっていると思っていたんです」(スプツニ子!さん)
現状を変えるべく、健康課題などの理解を進めるセミナーも展開するCradle。今では、対象者を女性に絞らず、男性、LGBTQ、障害者など幅広い層にアプローチしている。
知識を得ることは、主観的なウェルビーイングにつながると、篠田さんも自己理解の大切さを語る。篠田さんが取締役を務めるエールは、社外人材による「オンライン1on1」サービスを提供している。利害関係のない第三者に話を聴いてもらうことで、自分の仕事の目的を深く考えられるようになる事例が多いといい、良質な対話が、継続的に組織を改善していくカギだと語った。
ウェルビーイング推進のカギはデータ活用
エール 取締役の篠田真貴子さん。
撮影/TAWARA(magNese)
そもそもウェルビーイングとは何だろう。これに対し、「『美味しい』という感覚とすごく似ていると思う」と篠田さん。
「美味しいという感覚はみんながわかるものですが、「美味しい」を定義するとなったら、難しいですよね。辛いものを美味しいと思う方もいれば、甘いものを選ぶ方もいる。でも確実に美味しいってこういう感じって共通理解はあるじゃないですか。ウェルビーイングもそれに似ていると思います。一度経験すれば、自分にとってのウェルビーイングはこれだ、とみんながわかるようになる感覚ですね」(篠田さん)
スプツニ子!さんは、ウェルビーイングはデータとサイエンスから見つめられると話す。
「データを活用することで、客観的に自分の体のことを知ることができる。何が起きているか分かると、メンタル面におけるウェルビーイングを冷静に見つめることができます」(スプツニ子!さん)
続けて、ウェルビーイングの大切さを企業へ訴える際にもデータが欠かせないと話す。データの重要性について大きく肯く篠田さんは、「データを見た後が肝心ですよね」と同意。
「可能なら一対一で、そのデータを本当はどう感じているかじっくり対話をして咀嚼できるスペースを作っていくこと。これが肝要なのです」(篠田さん)
自身との「対話」、人との「対話」から考えるウェルビーイング
ロフトワーク MTRL事業責任者の小原和也さん。
撮影/TAWARA(magNese)
また、篠田さんは企業におけるウェルビーイング促進の難しさを、「ブロック塀」と「石垣」に喩えた。
「従来の組織の姿はブロック塀に近い。つまり、同じ大きさや形のブロックをビシッと積み上げて、組織にするところに向かっているのです。対して、これからの組織のあり様は、石垣という姿。大きさや形が色々ある中で、適切なところに配置することで、美しい堅牢な壁になるのですね」(篠田さん)
しかし、ブロック塀を石垣に組み上げようとしても、必要なスキルが違うという。石垣を積み上げていくように組織をつくるのは、企業にとってチャレンジだ。スプツニ子! さんは、「自己肯定感を高めて自信を持つこと」が大切だとし、具体的な手法も紹介した。
「自信とウェルビーイングは密接に関わっているんです。色々な論文データがあるのですが、女性の方が、男性に比べて自信を持ちづらい傾向にあります。自信をつけるアクティビティはたくさんあって、毎日その日あったよかったことや、褒めたいことを三つ程度エクセルで記録することがその一例。これをやるだけで自己肯定感が上がるっていう研究があるんです。簡単な方法なのでみなさんに取り入れてほしいですね」(スプツニ子!さん)
篠田さんが挙げたのは、ある企業で実施された社員一人ひとりのパーパスを自ら掘り下げるワークショップ。そのアクティビティの利点や、実施後に組織に起きた大きな変化について語った。
セッションの様子。
撮影/TAWARA(magNese)
「ウェルビーイングについて、まずは知ること。そして、データを使いながら、施策を実践していくことが大切なのですね。今日は実践のノウハウをたくさん議論しましたが、実際に組織に浸透させていくこれからが重要です。皆さんと一緒に考えていく『対話』が、今日この場で生まれたのではないでしょうか」(小原さん)
小原さんの言葉を持って、セッションは締め括られた。まずは、ウェルビーイングについて知ること、さらに対話を重ねることを続けたい。
撮影/TAWARA(magNese)
MASHING UP CONFERENCE vol.6
「対話」からはじめるウェルビーイング
スプツニ子!(Cradle 代表取締役社長)、篠田 真貴子(エール 取締役)、小原 和也(ロフトワーク MTRL事業責任者)
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