画像/MASHING UP
企業におけるDE&I推進は、ビジネスを飛躍させ事業を存続させるために不可欠との認識が、徐々にではあるが広まっている。一方で、その状況は企業規模や業界により様々。実際に自社でDE&I推進を考える経営層や担当者は、いかに進めていくべきか頭を悩ませる局面も多いだろう。
2022年11月に開催したMASHING UP CONFERENCE vol.6では、「DE&Iで作る、強くしなやかな組織」と題して、日系大企業と外資系企業という、規模もカルチャーも異なる組織においてDE&Iを推進するトップがトークセッションを実施。
サステナビリティ経営・ESG投資アドバイザリーを手がけるニューラルCEOの夫馬賢治さんがモデレーターを務め、リクルートDEI推進室長の早川陽子さん、デル・テクノロジーズESGエンゲージメント ジャパンリードの松本笑美さんがそれぞれの経験と自社でのDE&I推進にかける想いを語り合った。
そもそも、DE&Iは何のため?
ニューラル CEO 夫馬賢治さん。
撮影/TAWARA(magNese)
自社でDE&Iを推進するにあたり、経営層や担当者がまず確立するべきことが「なぜ自社にDE&Iが必要なのか」という点における信念だ。これがなければ、さまざまな変革が求められる現場を説得することはできないだろう。
2006年から長時間労働の改善や女性活躍に取り組み、現在女性管理職30%という国内では比較的高い数値を達成してきたリクルートの早川さんは、改めてこう振り返る。
「リクルートは1960年の創業から性別不問、学歴不問、国籍不問、とにかくやる気がある人を求む、というスタンスで始まった会社です。
価値創造の源泉は、個の好奇心だと考えてきたのです。それでも、まだ女性管理職が半数に満たないなら、組織に男性優位のアンコンシャスバイアスがあるということです。これを取り払い、組織が変化することが、次の新しい価値を生み出すためには不可欠だと考えています」(早川さん)
一方、デル・テクノロジーズでは、マイケル・デルCEOの「ITでどんな人類の進化をも支えたい」という考え方があり、その中にDE&Iも含まれるという。
「昨今の環境問題や社会問題の解決には、DE&Iという軸が欠かせません。たとえば当社は、ハードウェア製品をこのまま作り続けていてはただゴミを増やしてしまうといち早く気づき、2000年にリサイクル推進を提唱しました。こういった気づきは価値観の多様性から生まれてくるので、そのためにDE&Iが必要なのです」(松本さん)
DE&Iは数合わせ? 文化を変えるために必要なアクションとは
リクルート DEI推進室長 早川陽子さんは、DE&Iを推進するうえでの数字の活用方法について言及した。
撮影/TAWARA(magNese)
DE&I推進におけるよくある壁の一つが、企業の文化を変えるのが困難であるということだ。夫馬さんは単刀直入にこう質問した。
「日本ではDE&Iの話をするたびに、男女比を揃えればいいなど、『数合わせ』なんじゃないかという話が出てきます。DE&I推進を数合わせで終わらせないために、どのような視点が必要なのでしょう」(夫馬さん)
多様性を実現するには、男女比の数値だけではなくその中身が重要だ。そのためにリクルートが行った「管理職要件の明文化」では、女性はもちろんこれまで候補に挙がらなかった男性が、リーダーとしての育成候補に挙がってきたという。
「技術面は男性に任せたほうが良い」というバイアス
デル・テクノロジーズ ESGエンゲージメント ジャパンリード 松本 笑美さんは、アンコンシャスバイアスを取り除くためのデル・テクノロジーズが取り組む具体事例を紹介した。
撮影/TAWARA(magNese)
過去の経験などから「この場合はこうだろう」と決めつけてしまうアンコンシャスバイアスは、DE&Iを推進する上でまず取り払わなければいけない障壁となる。「リーダーは男性のほうが良いだろう」といった共通のバイアスもあるが、業界や企業によって独自のバイアスも存在する。
女性を含め社員が発言しやすい環境があるというデル・テクノロジーズでも、「ITの技術に関しては男性が多く携わっているので“技術は男性”、というアンコンシャスバイアスがあることは否めません」と、松本さん。アンコンシャスバイアスを取り除くためのデル・テクノロジーズが取り組みの具体事例が語られた。
この後行われた質疑応答では、実際にDE&I推進に取り組む参加者たちからの質問に登壇者たちが回答。現場担当者ならではのリアルな課題に登壇者が答える様子に、多くのオーディエンスがメモをとるシーンが見受けられた。
最後に夫馬さんが、「お二人の話を伺って、DE&Iを、そのものの課題としてではなく、より大きな課題、つまり『社内の文化』を整え、企業が将来実現したいことを実現するための土台作りと捉えることで、理解が深まるのではないかと思いました」と締めくくった。
企業の文化を変え、DE&Iを推進していく過程には、いくつもの壁や課題がある。それを乗り越えるには、DE&Iを進める意義に何度も立ち返り、今回のように先行する他社と情報交換を行い、広く意見を求めていく必要がありそうだ。
撮影/TAWARA(magNese)
MASHING UP CONFERENCE vol.6
個からチームへ。ウェルビーイングのスタート地点はどこにある?
夫馬 賢治(ニューラル CEO)、早川 陽子(リクルート DEI推進室長)、松本 笑美(デル・テクノロジーズESGエンゲージメント ジャパンリード)
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