画像:MASHING UP
グローバルではESG投資はますます主流となっている一方で、日本においては、それをいかに経営に落とし込めばいいのか、未だ多くの企業が模索中であるのが現状だ。
2022年11月に開催されたMASHING UP CONFERENCE vol.6では、「ESGは世界を救うのか」と題したトークセッションを開催。
OECD(経済協力開発機構)東京センター元所⻑であり、日本初のESG重視型グローバル・ベンチャーキャピタルファンドMPower Partnersゼネラル・パートナーの村上由美子さんがモデレーターを務め、シティグループ証券ESG/サステナビリティ・リード(現:シティグループ証券ESG/サステナビリティ責任者)の青木広明さん、PDIEグローバルエコシステムの創業者として、世界中のイノベーターとのコミュニティーを構築するクリスチャン・シュミッツさんが登壇。
ESGのグローバルな動きに詳しい識者が、企業がいかにESGを捉え、実装していくべきかをディスカッションした。
“地球”というステークホルダーのために何ができるか
PDIEグローバルエコシステムの創業者で、世界中のイノベーターとのコミュニティーを構築するクリスチャン・シュミッツさん。地球の利益を考えると、ESG投資は必要だと語る。
撮影/中山実華
環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったESG投資が、そもそも今なぜ、世界で注目されているのだろうか。
その理由について、シュミッツさんはこう述べる。
「決して今始まった議論ではなく、72年にローマクラブが『The Limits to Growth(成長の限界)』という本を発表したときから、この地球には限界があるということが認識されていました。その後、京都議定書やSDGsなどを経て、気候変動やさまざまな社会課題が課題となり、これからの世界のためには投資の分野も非常に重要なポイントだと考えられるようになりました」(シュミッツさん)
つまり「企業活動におけるステークホルダーには地球も含まれていて、地球の利益を考えればESGが欠かせないのです」とシュミッツさん。
「ただ、『それが自分の会社の収益性にどのように結びつくのか?』という質問に対して、わかりやすく定量的に数字で示すのは難しいという意見があります」と村上さんが問うと、「EUでは2021年3月、SFDRというESG投資のガイドラインが出されました」と青木さんが解説。
このように、世界ではESGのわかりやすい「物差し」を作るための取り組みが急速に進められている。
ESGにまつわる情報開示要求。果たして、飴かムチか?
シティグループ証券ESG/サステナビリティ・リードの青木広明さん。ESGの取り組みは時間とコストがかかるものの、それ以上のビジネスチャンスにつながると言う。
撮影/中山実華
ウクライナ危機や化石燃料の高騰が人々の生活に影響を及ぼす中で、「ESGと言っている場合なのか」という声も聞こえてくる。しかし、「それは一時的な揺り戻しに過ぎず、ESGを重要視する潮流は変わらないと考えています」と青木さん。
実際、日本でも政府主導で企業に男女の賃金格差を情報開示させる動きが出ている、と村上さんは指摘する。これには批判も上がっているが「ご存知の通り、OECDに加盟するいわゆる先進国の中で、男女の賃金格差の一番大きい国が日本なのです。この情報を開示するというのは日本の企業にとってはとても大きなハードルだとは思いますが、これによって結果が出てくるのではないかと期待しています」と村上さん。
シュミッツさんは、痛みを伴う情報開示であっても「開示によって社内により公平な雰囲気が生まれ、社員のモチベーションが上がり、ダイバーシティも確保できれば、企業の生産性向上につながるでしょう。それは、大きなメリット」と指摘。
青木さんも「取り組みには時間とコストもかかりますが、それを進めることで新しいビジネスチャンスの獲得につながりますし、そのためにはイノベーティブな発想が必要。それに欠かせないのが多様性のある組織ですから、ポジティブに受けとめるべきでしょうね」と同意した。
高まるトランジション・ファイナンスへの注目。日本はチャンスに変えられるか?
日本初のESG重視型グローバル・ベンチャーキャピタルファンドMPower Partnersゼネラル・パートナーの村上由美子さん。日本での男女の賃金格差を情報開示させる動きに期待感を膨らませる。
撮影/中山実華
村上さんは、脱炭素社会の実現に向けたトランジション・ファイナンスへの注目が高まる中、日本企業だからこそ活躍できるチャンスがあるはずだと指摘。
大切なのは、世界の流れを見誤らず、痛みを伴ったとしても前進すること。そのために何ができるのか、参加者も交えて熱い議論が繰り広げられた。
撮影/中山実華
MASHING UP CONFERENCE vol.6
ESGは世界を救うのか
青木 広明(シティグループ証券 投資銀行・法人金融部門 ESG/サステナビリティ・リード、現:シティグループ証券ESG/サステナビリティ責任者)、 クリスチャン・シュミッツ(PDIE Group 創業者)、村上 由美子(MPower Partners ゼネラル・パートナー)
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