画像提供/Udemy
DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)が、これからの企業の成長を可能にするカギとなることは、すでに多くの人が認識している通りだろう。
そのDE&I推進のドライブとなる、女性のエンパワーメントを支えるのが「学び」であると、オンライン学習・教育のリーディングプラットホームを提供するUdemyは言う。
多様性のある組織作りのために、なぜ女性の学びが必要なのか。また、実際に女性の学びを奨励する企業ではどのような結果がもたらされているのか。3月8日国際女性デーにUdemyは、学びを通じた女性のエンパワーメントを促進する目的で、e-book「女性のエンパワーメントと学びの機会拡充を目指して2023」を公開した。
世界に大きく差をつけられた日本の女性進出
未だ低迷する日本のジェンダーギャップ指数。2022年においても146カ国中116位という低い結果となった(世界経済フォーラム発表「ジェンダーギャップ指数」より)。この結果には、政治や企業における女性の管理職の割合が低さが、依然として影響している。
政府もこの状況を憂慮し、2003年から、社会のあらゆる分野の指導的地位における女性の割合を2020年までに30%まで押し上げることを目標に掲げてきたものの、2020年時点での日本企業の女性管理職の割合は14.8%に過ぎず、同時点でのアメリカの40.7%、スウェーデン40.2%、英国36.8%など欧米諸国に大きく差をつけられた。
企業価値を高めるためにも、日本企業はなんとかして女性管理職を増やす必要がある。しかし問題は、女性たちが管理職に就きたいと思える環境にないことだ。女性に能力があっても、目に見えない「ガラスの天井」によって、一定以上の昇進を阻まれてしまうことが多い。
「性別に関わりなく評価されている」と回答した男性は、女性の約3倍
Udemyの調査では、「性別に関わりなく、能力や成果で評価されていると思いますか」という質問に対し、「非常にそう思う」と回答した男性は女性の3.25倍。女性の30代では、50%、40代では71.4%が能力や成果で評価されていると「思わない」と回答している。
この結果から、男性が性別に関係なく評価される会社だと思っていても、女性目線からすればそうではないというケースも多いことがわかるだろう。
また、評価はされても、昇進・昇格に反映されないという場合もある。
評価と昇進・昇格に関する質問では、「評価は能力や成果でされているが、昇進・昇格に性差別を感じる」という意見が全体で35.8%(男性33.6%、女性26.2%)と最も多い結果に。
女性では「能力や成果で評価されていないが、昇進は男女平等」と答えた人が33.3%で最も多く、男女間における評価と昇進に対する考え方の違いが浮き彫りとなった。
「学び」を推奨することで性差別感が減少し、会社への愛着心が増す
一方、「女性管理職を増やそうとしても、当の女性たちが管理職に就きたがらない」という場合もあるだろう。この壁に突き当たり、「努力はしているけどどうにもならない」とDE&I推進を諦めかけている企業も少なくない。
Udemyの調査でも、管理職志向のある女性社員は入社1年目で19.9%、4年目で10.2%と、男性社員のそれぞれ67.1%、52.7%と比べるとかなり低いことがわかる。
ただし、この差を「女性はもともと管理職になりがたらないもの」と考えるのではなく、「経験と学びの機会の不足」と捉えるべきだというのが、現在の世界的な共通認識だ。
実際にUdemyの調査では、学びが推奨されている企業のほうが、一般企業よりも「性別に関わりなく、能力や成果で評価されている」と考える社員の割合が高い。
また、学びによってキャリアが形成できると思うかを調べた調査では、過半数の人が「そう思う」と答えており、学びへの期待値が高いことが伺える。
すでに学びが推奨されている企業では、「キャリア育成にあたり、学びの機会は必要だと思いますか」という質問に対して、「そう思う」が98.6%と、非常に高い結果に。
また、学びが推奨されている企業では、「学びを支援する制度によって、会社に対する愛着心や愛社精神は高まっていると感じますか」という質問に対し、「そう思う」が57.2%と過半数を占めており、学びを推奨することが会社への貢献度を高める、ということも見てとれる。
リスキリングの心理障壁を下げるために
日本では、「ガラスの天井」を待つまでもなく、結婚・出産によってキャリアが中断されてしまう女性も多い。この問題に対しても、企業が学びによるリスキリング(新しい分野のスキルの習得)やアップスキル(今持っている分野のスキルの向上)を推奨することで、将来的に仕事を継続していく上での自信につながると感じている女性が多いようだ。
女優で実業家のいとうまい子さんは、学び直しにより抗老化学とロボット工学を学び、現在は女優業と並行して研究開発に携わっている。いとうさんは、Udemyの行ったインタビューの中で、企業によるリスキリングの機会提供は良いこととしながらも、「同時に時短やフレックス勤務、託児設備の確保など、働く女性のキャリアに空白をつくらせないための受け皿を、制度として用意する企業側の努力も欠かせない」とコメント。
「さらに言えば、日常的に業務や能力面で『あなたのここは良い』と素直に言い合える風土や文化が社内に根付いていれば、リスキリングへの心理障壁が下がり、働く女性のキャリアパス構築、企業側から見れば女性の戦力化、女性の管理職登用ももっと進むでしょう」(いとうさん)
いとうまい子さん。2010年から早稲田大学 e-schoolに入学し、修士課程・博士課程へと進学。芸能活動と並行して抗老化学とロボット工学の研究開発に携わる。
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「学び」が成功するDE&I文化を築く
企業側はもちろん、女性側も能動的に学びを進め、「ガラスの天井」を取り払うことのメリットは、投資家に魅力的な投資先として評価されることと、多様性のある組織の優位点として人材の流出を防ぐことができる点だ。とくに、多様な組織で働いていると感じる従業員は、そうでない従業員よりも5年以上長期で勤続する予定と回答した、という調査結果もある(2018年 デロイト ミレニアル年次調査より)。
UdemyのCLO メリッサ・ダイムラーさんは、「管理職レベルにおける性別の多様性が、組織のビジネス成果を高めることに直結していることは、もはや世界的な共通認識」と指摘。
「しかし、女性のエンパワメントのための制度や学習機会は十分とは言えません。Udemyが日本で独自に行った調査によると、女性回答者の57.2%が、女性のエンパワメントのための経営戦略を『見たことがない・知らない』と答え、同じく46%は、学習による女性の昇進・昇格の機会が増えていないと見ているのです」(ダイムラーさん)
ダイムラーさんは、先行きを見通すことが容易ではない今、「女性も男性もプロフェッショナルとなる機会の確保が欠かせない」と言う。
「ダイバーシティは、活気ある企業文化を築くための秘策であり、社員が学ぶことで、企業の未来に役立つ新たなスキルを得ることができるのです。『学び』は成功するDE&I文化を築く出発点となるでしょう」(ダイムラーさん)
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