画像/MASHING UP
成長を続けるアジア市場に熱い視線が向けられている。アジアで新たにビジネスを展開するには、どのようなセオリーや視点が必要なのか、模索している企業も少なくないだろう。
そのヒントを探るため、2022年11月に開催された「MASHING UP CONFERENCE vol.6」では、「狙うはアジア市場の席巻。ESG視点とマーケティング戦略」と題したトークセッションを開催。
ベクトル海外事業部中華圏統括(現・ベクトルグローバル本部本部長)を務め、中華圏における日本ブランドのマーケティングをサポートする板屋美幸さんと、インフォブリッジCEOであり、日本企業のマーケティングニーズの拡大やインド中心にアジアのスタートアップ支援を行う繁田奈歩さんが登壇。
フィナンシャル・タイムズ在日代表コマーシャルディレクターの星野裕子さんがモデレーターを務め、アジア市場で求められるESG戦略やマーケティング視点についてディスカッションを行った。
環境問題やESGへの関心が高まるインド・中国
インフォブリッジCEOの繁田奈歩さん。
撮影/ 伊藤圭
まず、「インドは現在、世界最大の大気汚染国といわれるほど環境負荷が問題となっていますね」と星野さん。これに対し、「さまざまな課題を抱えつつも、やっと成長軌道に乗ってきたという状態です」と繁田さんは言う。
「コロナ禍ではマイナス成長になりましたが、2021年には6、7%の経済成長を遂げ、ユニコーン企業の数も3桁となりました。世界でもインドのイノベーションが存在感を持ち始め、今、非常にポジティブな状況だと言えます」(繁田さん)
ESGへの関心も富裕層を中心に高まりつつあるが、農村部ではまだ物質的な豊かさを求める傾向にある。「今後、どのように国をあげての脱炭素に向かえるかに注目が集まっています」と話す。
「政府はソーラーパネルの普及などわかりやすい施策を考えているが、インドにはそこに投資するほどの資金がないため、海外の企業に来てもらいたい、というのが今のインドの姿勢です」(繫田さん)
中国も、現状では成長と引き換えに多くのCO2を排出しているが、状況は変わり始めているという。
「CO2排出に関して、中国政府は2030年にはピークを迎え、2060年にはカーボンニュートラルを目指すということを世界的に宣言しています。クリーンエネルギー転換やEVに力を入れる一方、若者を中心にマーケットの意識も高まっています」(板屋さん)
中国ブランドといかに戦うか
ベクトル海外事業部中華圏統括の板屋美幸さん。
撮影/ 伊藤圭
そんな成長著しいインドと中国における日本企業のプレゼンスはどうなのか。
インドでは「まだ極めて自動車集約型で、ごく一部の大手企業を除いては日本企業が進出できていない状態」だと繫田さんは指摘する。
中国ではすでにかなりの日本企業が進出しているが、政府の政策によってマーケティング戦略の大幅な変更を余儀なくされることが壁となっている。
さらに、近年ではZ世代を中心に中国ブランドの評価が高まっているという。
「今までは日本から良いものを持っていけば売れるということが大前提としてありましたが、それも通用しなくなり、中国ブランドといかに戦うかが課題となっています」(板屋さん)
インドでも「日本ブランド」は通用しない。そのうえ、近年では中国製品への信頼度があがり、同じように中国ブランドとの競合となっている。
2020ESG元年から急成長を遂げる中国
セッションの様子。
撮影/ 伊藤圭
日本企業がアジア市場で成功する一つのカギとして見られているのが多様性だ。
インドはそもそも「多様性しかない国」という繁田さんは、「多様性を“あるもの”として、まず受け入れることで、ここがまず日本企業にとってのスタートになると思います」と指摘する。
中国では女性の社会進出が進んでいるが、その中でも家庭における育児などのケアワークは女性の仕事という古い価値観も残る。
「ただ、中国は2020年がESG元年といわれ、優秀な人材を確保するために各企業がESGに真剣に取り組むようになっています」と板屋さんは言う。
会場ではこのほか、中国やインドに進出した日系企業の成功事例も紹介。日本企業がアジアで成功するためには、各国の環境問題への課題や多様性を深く理解し、戦略を立てていくことが不可欠であることが、改めて示された。
撮影/ 伊藤圭
MASHING UP CONFERENCE vol.6
狙うはアジア市場の席巻。ESG視点とマーケティング戦略
星野裕子(フィナンシャル・タイムズ在日代表コマーシャルディレクター)、繁田奈歩(インフォブリッジCEO)、板屋美幸(ベクトル海外事業部中華圏統括[現・ベクトルグローバル本部本部長])
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