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バイアスへの気づきが、他者理解を深める。ダイドーに聞く、自律的な社員を生み出すOJT

DE&I推進の企業事例はたくさんあるが、大半の企業はまだまだ課題を抱え、手探りで進めているのが現状だ。歴史ある大きな企業ほど、長年かけて培ってきた組織風土がネックとなり、DE&I推進が一筋縄ではいかないという課題に直面することもあるだろう。

飲料事業を手がけるダイドードリンコでは、2023年1月、ようやくダイバーシティ推進グループが発足した。それに伴い、人材育成の中にもDE&I領域が組み込まれた。ユニークなのが、OJT( On the Job Training )のトレーナーを対象にしたフォローアップの取り組みだ。2023年2月までプロジェクトリーダーを務めた渡邉彩さんに話を聞いた。

他者を知り、自己を知ることから始めよう

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ダイドードリンコ海外事業部の渡邉彩さん。2017年12月から人事総務部人財開発グループで新卒採用や新入社員のOJT研修に携わった。2023年3月より現職。

画像提供/ダイドードリンコ

ダイドードリンコのOJTは、新入社員1人につき配属先部署のメンバー1人がトレーナーとして就く。入社3年目から40代のマネジメント層まで、トレーナーの年齢層は様々だ。

「弊社のOJTは特に『個の特徴や強みを活かす人財育成』に注力しています。もちろん、新入社員のための実務トレーニングではありますが、トレーナー自身の成長機会とも捉えています」

トレーニングでは、まずはストレングスファインダー®(才能診断) などのアセスメントを活用し、トレーナー自身が自己理解を行う。その結果を、トレーニー(新入社員)、トレーナーの上司の3者でお互いにシェア。他者を知り、自己を深く知ることをファーストステップとしている。

「相手のことを知るというのは、人間関係構築の入り口です。私たちが大切にしているのは、自分らしい能力を発揮することで自己が成長すること。そのために自分の強みを知り、それが受容される環境があることが重要だと考えています」

他者を知り、自己を知るこのステップでは、3者間での「共通言語」が生まれる。それにより、コミュニケーションが一気に円滑になるという。

「最近は、プライベートな質問などもハラスメントと捉えられるのではないかと懸念し、必要以上に雑談を介した個を知る機会が減っていたように思いますが、このシェアを行うことでプライベートな側面も自然に話せる環境ができました。それは、円滑なコミュニケーションに大きく寄与することがわかりました」

マネジメントには自身を客観的に見る「メタ認知力」が不可欠

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互いについて感じていることを言葉でシェアしあう。

画像提供/ダイドードリンコ

次のステップでは、メタ認知(自身の考え、感覚、判断などを客観的に認知する)の手法を取り入れた、内省を深めるフローに続く。

成長には『内省』が重要だと考えています。私たちはつい自身の価値観や世界観をベースに他人と接してしまうことがありますが、それではOJTは上手く進みませんし、成長にもつながりません。チームで仕事をする際には、適切なメタ認知により、リーダーシップを上手く発揮でき、組織をより良くマネジメントができるようになると考えています」

そして、メタ認知力を向上するために必要なのが、アンコンシャス・バイアスの理解だという。

「内省をするときに、罠となっているのが『アンコンシャス・バイアス』です。この段階では、自身のバイアスに気づく『問い』に答えてもらうことで、気づきを深めています

問いとは、たとえば「自分が入社1年目の時を思い出してください。今の自分から見て、当時の自分はどのような人物と思えますか?」「当時のあなたと今のトレーニーの共通項、あるいは違いについて、あなたはどう思いますかといったものだ。自身を客観的に見ることで持っていたアンコンシャス・バイアスに気づき、さらには“誰にでも”思い込みや偏見があることに気づくという。それは他者への理解につながる。

営業職は女性には難しい?

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「産休育休などを経ても女性が営業職を続けられるよう、組織風土を変えていきたい」と渡邉さん。

画像提供/ダイドードリンコ

かつて男性社員が大半を占めていたダイドードリンコは、現在も営業職については圧倒的に男性が多いというのが現状だ。女性が当たり前に営業として活躍している環境や実績がないため、「泥臭い営業職は女性には難しい」という価値観を変える難しさは、多くの企業や組織でも直面している課題だろう。

「採用人数は男女半々なのですが、配属部署に偏りがあるのが現状です。今後の女性活躍を考えると、営業職でも女性が活躍できる環境を整えたい。ダイバーシティ推進部グループは、人事部と自販機営業企画部の両方に立ち上げられました。2つのグループは連携して、課題の解決に取り組んでいきます」

さらに渡邉さんは、社内で有志を募って女性にフォーカスした活動を始めたという。

「たとえば、育児中の社員が社内向けにパネルディスカッションを行ったり、部署も立場も超え、ライフイベントをどう乗り越えてきたかシェアしあったりと、働いていく上での安心感を醸成できるイベントを行っています。また、女性が営業職で働き続けることに関する課題感などのアンケートをとり、ダイバーシティ推進グループと共有するなど、一緒に活動をしていく予定です」

本業とは別に、この有志の活動を始めた思いとは?

「OJT研修を受けた新入社員たちが、生き生きと働いているのを見て、部署や年代を超えて人とつながるコミュニケーションが、彼らのエネルギーの源のひとつなんだと感じました。彼らを見守りたいし、応援していきたい。それに、有志の活動に興味をもって参加してくれる仲間が増えたら嬉しいじゃないですか」

今後の抱負として、「 一人ひとりが自律し、自己実現していく組織をつくっていきたい 」と語る渡邉さん。自社のDNAと未来への課題にフォーカスし、着実に歩みを進めるダイドードリンコの取り組みは、DE&I推進に課題を持つ企業の大きなヒントになるだろう。

すきま時間にスマホで、組織のDE&Iを推進

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「MASHING UP LEARN」のwebサイトより。

画像/MASHING UP

今回、ダイドードリンコのOJTトレーナーフォローアップには、MASHING UPが提供するラーニングプログラム「MASHING UP LEARN」が試験的に導入された。「MASHING UP LEARN」はスマホのラーニングアプリを通し、1日約5分でDE&Iを基礎から学ぶことができるプログラム。ダイドーが重要視するアンコンシャス・バイアスや女性活躍といったテーマも広く取り扱う。

「今回、こちらを使ってみて社員には大好評でした。すきま時間に、DE&Iの知識を身につけられるというのは画期的だと思います。また、図なども多用されていて視覚的にも分かりやすく、理解が進んだという声が多かったです。課題があるとすれば、いつでもできる一方『やらない』こともできてしまい、 習慣化のコントロールが難しい点ですね。しかし、プログラムを経て、社員がDE&Iを『自分ごと化』できたという実感はあります」

ラーニングプログラムを活用し、社内に共通言語を作ってみるのも、DE&I推進に風穴を開けるひとつの策になるのではないだろうか。

ダイドードリンコ

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島田ゆかり
ライター。広告代理店を経て、出版業界へ。雑誌、書籍、WEB、企業PR誌などでヘルスケアを中心に、占いから社会問題までインタビュー、ライティングを手掛ける。基本スタンス、取材の視点は「よりよく生きる」こと。

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