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CONFERENCE:MASHING UP vol.6

地方から生まれる未来型ビジネス~そこにしかない多様性に価値を見出す

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画像: MUSHING UP

高齢化や産業力低下、空洞化といった日本の課題に立ち向かうときに、カギとなるのが「地方」だ。しかし、どこから手をつければよいのか、攻めあぐねている人も多いだろう。

その糸口を探るため、2022年11月に開催された「MASHING UP CONFERENCE vol.6」では、「地域+企業+X=未来型ビジネス」と題したトークセッションを開催した。

当日は、サイバーエージェントを経て宮城県気仙沼で廃漁網を資源に変える活動を続けるamu代表取締役CEOの加藤広大さん、花王を経て「継承される地域」のデザインの創造を目指すQ0を設立した代表取締役社長の林千晶さん、数多くの都市開発プロジェクトに参画する日建設計代表取締役社長の大松敦さんが登壇。

早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さんがモデレーターを務め、地方発の未来型ビジネスに必要なファクターや目の付け所について、それぞれの経験を通して議論した。

どこで、どうやって生まれたものなのかを選ぶ時代へ

入山章栄さん

早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さん。地方は可能性が広がっていると話す。

撮影:中山実華

過疎化による人手不足や後継者の不在。地方には都市にはない課題も山積みだが、「一方で、すごく面白いスタートアップも起きだしています。地方は、本当に可能性だと思う」と切り出した入山さん。

林さんは地方にフォーカスしたビジネスを行う企業、Q0を立ち上げたばかり。森林再生とものづくりを通して地域産業創出を目指す「飛騨の森でクマは踊る」取締役会長としての経験も活かし、現在は秋田県にかほ市の畜産農家を支援する事業を進めている。

林千晶さん

Q0を設立した代表取締役社長の林千晶さん。地方にフォーカスしながら畜産農家の支援に注力している。

撮影:中山実華

「秋田には鳥海山を見渡す、すばらしい牧草地があります。そういうところで牛に草を食べさせ、しっかり運動させれば、健康的でおいしい赤身の牛肉ができるのです。今までは牛肉といえばスーパーに行って買うだけでしたが、これからはどうやって育てられた牛なのか、責任を持って選ぶ時代に移っていくはずです」(林さん)

その土地だけの「物語」を探す

加藤さん

amu代表取締役CEOの加藤広大さん。ないモノをつくるのではなく、そこにあるもので価値を見出したいという考えから、気仙沼で廃漁網を資源に変えるビジネスを立ち上げた。

撮影:中山実華

amuの加藤さんも、「物語は大切ですよね」とうなずく。「ないモノをつくるのではなく、そこにあるものを見つけて物語を編纂することで、価値を上げられることがあると思います」

「実は海洋プラスチックごみの44.5%が廃漁網なのです。これをリサイクルして製品にするために、気仙沼から全国の漁港を周って回収しています。この事業を立ち上げるにあたって考えたのは、『渋谷でできることは渋谷でやったほうがいい』ということです。気仙沼でしかできないことを探そうと思って、たどり着きました」(加藤さん)

地方には課題も多いが、「都市に従属していない地方には、そこにしかない物語と可能性があると思う」と林さん。

入山さんも「もっと地方に入り込むことで、地方でしかできないことが見つかってくるのではないでしょうか」と同意した。

地方の多様性を経験しないと取り残される

大松さん

大手建築設計事務所、日建設計代表取締役の大松敦さん。20年以上にわたり渋谷駅周辺開発に携わってきた。現在は地方のプロジェクトにも励んでいる。

撮影:中山実華

20年にわたり渋谷駅周辺開発に携わってきた日建設計の大松さんも、「今まで95%大都市の仕事でしたが、より多様な経験を磨いていかないと取り残されるのではないかと思い、地方の仕事に注目しはじめたところです」と話す。

2019年には、同社の設計で岐阜県瑞浪市に日本で初めてのゼロエネルギー建築(ZEB)の中学校が完成した

「設計の工夫や太陽光パネルの他、教室にエコモニターを付けて、生徒たちが自分たちでどう行動したら良いかを判断できる仕組みを取り入れたことでゼロエネルギーを達成しました。地域の方々も、自分たちが卒業した中学校が統合してなくなっても、かわりに『日本一の中学校を創るということなら協力しよう』と尽力してくださったのです」(大松さん)

セッションでは参加者同士の対話や登壇者への質疑応答も実施され、大いに盛り上がりを見せた。

何かを始めるときには、想いを一つにする仲間の存在も欠かせない。またここから、新しいビジネスが芽生えるかもしれない――。そんなことを期待させるセッションだった。

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MASHING UP CONFERENCE vol.6

地域+企業+X=未来型ビジネス

加藤広大(amu代表取締役CEO)、林千晶(Q0代表取締役社長)、大松敦(日建設計代表取締役社長)、入山章栄(早稲田大学ビジネススクール教授)

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中島理恵
ライター。神戸大学国際文化学部卒業。イギリス留学中にアフリカの貧困問題についての報道記事に感銘を受け、ライターの道を目指す。出版社勤務を経て独立し、ライフスタイル、ビジネス、環境、国際問題など幅広いジャンルで執筆、編集を手がける。

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