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男女間賃金格差を是正するアクションプランとは? 生団連が「ジェンダー主流化企業分科会」開催

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国際社会において日本のジェンダーギャップは際立っており、解消の遅れが重要視されている。たびたび目にする数字かもしれないが、2023年における日本の「ジェンダーギャップ指数」は世界146カ国中125位で、過去最低を記録。2015年にSDGsが採択されて以降、世界各国が目標達成に努めている中で、日本がジェンダー問題において順位を下げている現状は、即座の対策が必要であることを示している。

そんな中、生団連(国民生活産業・消費者団体連合会)はジェンダー主流化の視点から、ジェンダー平等の実現を目指そうとしているという。生団連は600を超える企業と消費者団体が一丸となり、「生活者視点」で活動する、日本で初めての団体だ。生団連は今般「ジェンダー主流化企業分科会」を開催、この会には、生団連会員である流通・サービス産業の18企業の人事部担当、役員などが参加し、4回に渡って実施された。テーマは「企業における男女賃金格差の是正」。本記事では、最終回となる第4回分科会から、その内容をお届けする。

ジェンダー・ダイバーシティスペシャリスト、(特活)Gender Action Platform理事の大崎麻子さん、クレアン代表取締役会長、公益財団法人みらいRITA代表理事、NPO法人サステナビリティ日本フォーラム理事の薗田綾子さんを講師に迎え、企業における男女賃金格差の是正についてのレクチャーと改善のためのワークショップが行われた。

男女間賃金格差の解消、第一歩は「可視化」

そもそも「男女間賃金格差」はなぜ生まれるのか。OECDは、主な要因を3つ挙げている。

  • 垂直分離:(企業内)上位の職階には男性が多く、下位の職階に女性が多い。パート就労・非正規雇用に女性が多い。
  • 水平分離:(社会全体)高報酬の職種に男性が多く、低報酬の職種・セクターに女性が集中している。
  • 無償ケア労働の負担における不平等:家事、育児、介護などの「ケアワーク」を担う時間が女性に圧倒的に偏っている。

「これらの3つの要因における自社のジェンダーギャップの実態を把握し、是正していくことが賃金格差の解消につながります。どうすればいいかというと、基本的には2つ。性別役割分業意識やジェンダーステレオタイプが内面化された雇用制度・慣行、職場風土を変革すること。そして、家庭内での家事や育児を男性も担うことです」(大崎さん)

これらは世界共通のコンセンサスとなっており、上記のような、バイアスが作用しないような仕組みを作ることが重要だと指摘。そのためにはとにかく「データで実態を可視化し、要因を分析すること」だという。

例えば、自社の賃金データも20代と40代で見ることが大事だ。たとえば男性100に対し、20代女性は97、40代女性は64……。20代ではほぼ変わらないのに、40代で差がつくのはなぜか。このようなギャップが生まれた背景を「管理職育成や基幹業務に関連した研修参加者の男女比」「短時間勤務制度の利用者の男女割合」「男女の育休取得期間」「転勤者における男女割合」など、企業に潜むジェンダーステレオタイプを可視化するデータを把握することから始めてほしいと大崎さんは話す。

さらに、現行の取り組みを単に延長する形の施策では、ジェンダーギャップの解消は望めない。未来のシナリオを設定し、そこからバックキャスティング(逆算)を行うアプローチが必要だと語る。

ジェンダーギャップの解消、具体的なステップとは

次に、ジェンダーギャップの解消、具体的なステップについて話が進んだ。

まずは、現状把握。これは関連データの数字で把握する。次に、背景にある要因を分析し、包括的に整理。そして施策を検討し、最後がアクションプランの素案をつくる。

「施策のポイントは、中長期的な構造的な変革と、女性活躍のための資源の短期的集中投下。これを同時進行で行う必要があります。女性活躍推進というと、ただ女性が優遇されることだと捉える人もいますが、これは長い年月をかけて構築され、構造化されてきた問題なので、解決するためには時限的に資源を投入すべき。時間軸を長くとって考えないと、エクイティという概念は理解できません」

また、大崎さんは国連の女性のエンパワーメント原則(Women's Empowerment Principles、以下「WEPs(ウェップス)」)の枠組みが男女間賃金格差の解消に役に立つと指摘。WEPsは、以下の7つ。(引用元:女性のエンパワーメント原則

  1. 企業トップによるリーダーシップ
  2. 職場におけるジェンダー平等
  3. 従業員の健康、ウェルビーイング、安全
  4. 女性のキャリアアップを可能にする教育と研修
  5. サプライチェーン・マネジメントとマーケティング
  6. 社会貢献活動とアドボカシー(啓発)
  7. 成果のモニタリングと報告

トップのコミットメントが非常に重要である。

「ジェンダーギャップ対策が経営戦略に落とし込めているか、あるいは具体的な数値目標があるか、トップ直轄の組織があり、体制づくりができている企業は本気度が示されます」と、薗田さん。これは、投資家やこれから入社する若い世代も注目する点だという。

2035年までのKPIとビジョン

会の後半では、ジェンダーギャップを生み出す4つの領域「賃金制度」「雇用管理」「無償ケアワーク」「職場風土」を分析し、アクションプランを考えるワークショップを実施。

ワークショップでは各グループが架空の企業の経営者となってアクションプランを検討する。WEPs原則のどれを重視するかも各グループに委ねられ、最終的に各グループから次のようなアクションプランが発表された。

  • ビジョンは「男女問わず働きやすい元気な会社に」。KPIは、賃金格差を84%に(現状、40代で大きく差が広がっているため、引き上げた)。評価基準を明確化し公表する。2030年には、メンバーシップ型雇用と業務型雇用を組み合わせたハイブリッド型雇用に。
  • KPIは、賃金格差を85%に。研修比率は男女比50:50に。調査をスタートし、2025年と2030年にモニタリングを実施。また「無償労働」の意識改革、啓発を行っていく。
  • 賃金格差ゼロ(差異ナシ)、役員比率を40%に。賃金格差は委員会を立ち上げ、期限を設定してモニタリングを実施。給与体系をわかりやすく示し、各自が明確に人生設計できるようにする。無償ケアはテレワークの整備を拡大。
  • KPIは、男女間賃金格差100%差異ナシ。制度は整備されているのに生かされない理由を分析。コンフリクトを解消する、味方にしていくなどを行う。
  • KPIは、2035年離職率20%に。直近では調査、評価を始め、社員との対話を深め、意識改革を促進。2030年にはダイバーシティレポートを発行。

経営的視点で課題に取り組む実践的なワークショップで、参加者には多くの気づきがもたらされたようだ。最後に生団連から以下のようなコメントが寄せられ、分科会は終了となった。

「社会にも経済にも、潮目があります。ジェンダーギャップに関しても、『変わらなければ』と動くことで潮目が変わり、潮流になっていく。参加者の皆様が潮目の起点となり、そういう企業が増えていくことで日本の社会が変わる流れになるのでは」

世界に向けて、潮目が変わっていく日本を見せられることを期待したい。

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島田ゆかり
ライター。広告代理店を経て、出版業界へ。雑誌、書籍、WEB、企業PR誌などでヘルスケアを中心に、占いから社会問題までインタビュー、ライティングを手掛ける。基本スタンス、取材の視点は「よりよく生きる」こと。

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